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第二回偽物川小説大賞一次ピックアップ

 読書の秋!つまり偽物川小説大賞の秋!(強引な理運び)というわけできょうじゅですよ。最近ではすっかり川系大賞の恒例行事となったピックアップ紹介というのを一つきょうじゅもやってみようと思うのです。前回はやんなかったけど。まあ、アレですね。開始から締め切りまで50日だかあるイベントですからね、中だるみもしますしね。

 というわけで、「第二回偽物川小説大賞」記念すべき第一次ピックアップ(何次までやるのかは現時点では決めていないよ)なわけですが、まず先にこちらのアンケートを見て頂きたいんですよ。

 死というテーマでの小説、書きやすいとお答えの方が半数を超えない38.5%、「難しい」「どちらとも言えない」が合わせて61.5%。きょうじゅは正直なところこのテーマを甘く見ていたということを知りました。というわけで今回のピックアップは、それぞれ大きく異なる焦点から死というテーマに挑んだ作品を3作品セレクトしております。

 なお、このピックアップはきょうじゅが一人で書いておりますので、大賞など各賞の選考とは必ずしも関係ありません。他に二人いますからね偽の評議会。まだお互い講評見せ合ってもいないから他の評議員メンバーの推し作品とか分からないし、これからまたどんどん凄い作品が参加してくることも期待されますし。って、前置きが長くなったな。ではピックアップ、作者名は敬称略でお送りいたします、まず一作目はこちらです。

人類の遺言 辰井圭斗

 えー、直近で行われた同じ川系、第一回神ひな川小説大賞で大賞を取っている辰井圭斗さんによる、本小説大賞の一番槍作品でもある(主催者はノーカン)作品です。タイトルから分かる通り、人類が滅びます。ですが滅ぶのは三年後だそうです。かなり余裕があります。まあそれでも当然地球は大変なことになってるらしいですが、まだ政治権力や統治機構も生きているし、全般的にノリが明るいです。なんか、死がテーマと言われると暗く重く解釈されがちな感じがなきにしもあらずですが、別にこういうのでも一向に構いはしないのです、はい。いやもちろん暗く重く捉えてくれてもいいんだけど。で、滅びゆく人類が何をやるかというと、月にモニュメント的なものを用意して、誰か異星人か何かがこれを受け取ってくれるかもしれないことを期待して人類史をつづった「遺言」を残す、そういうセレモニーをやる。それをして「いとおしさ」と表現する。そういった優しい雰囲気の作品です。

 さて、では二作目の紹介です。

ボウリング場に行かなくても死なない 千石京二

 こちらは打って変わって、死と言う実存と観念に対する深い思索を筆に乗せた、私小説です。これを読んだとき正直わたし、軽々しく死というテーマを広範にブン投げた自分を多少反省しました。物語としては、職場のスポーツ大会でボウリング場に行かされそうになったんだけど何故か主人公が全力でそれを断るところから始まって、ボウリング場に紐づけられたその過去が語られていく、という構成になっています。物語としての物語そのものは未来への希望とハッピーエンドを仄めかす感じで終わるんですが、それでもなおずっしりと読後感は重いです。そういう意味では、どんなに優しい物語のように見えてもその後に人類の滅亡という終わりが待っている前掲作とは対照的ですね。総合して何が言いたいかというと、全力で自我と向かい合った先にしか描き出すことのできないような作品を表出する場としてこの偽物川小説大賞を用いてくださっても当然構わない、というのが本稿の結論です。

 そして最後に、こちらの作品。一次ピックアップはこれで終わりです。

死にたがりのメアリー 灰崎千尋

 最後は幻想譚です。幻想譚つまりファンタジーですね。現代の、多分これは地球っぽい感じの世界なので現代ファンタジーとなっています。奇譚と言ってもいいかもしれない。主人公メアリーはタイトルの通り、自殺志願者です。ですが死ぬことができません。自殺に成功しないからではありません。成功しても、生き返ってしまうのです。何故なら不死身だから。ただし、そんなウルヴァリンみたいな超再生能力があるわけではないので、飛び降り自殺なんかした日には動けるようになるまでにものすごい長時間ものすごい苦しむことになるという、呪われているとしか思えないレベルの「不死者」です。この物語がどう「死」というテーマを最終的に消化するかはちょっとネタバレが過ぎるのでここには書きませんが、「なるほど!」というようなオチだったことは確かです。同時に、彼女の不死はやはり呪いだったんだなあという感じでありました。

 というわけで以上です。総合して何を言いたいかというと、要するにこの第二回偽物川小説大賞においては基本、「死」が何らかの形で絡むのならどんな作品でもオーケーなんですよ、ということをお伝えしていきたいわけなんですが、ガッテンしていただけましたでしょうか?(ガッテン)(ガッテン)(ガッテン)(ガッテン)

 

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