第二回偽物川小説大賞二次ピックアップ
Remember that you shall die.(挨拶)どうも偽教授でございます。第二回偽物川小説大賞、期間でいえばまだ半分以上あるとはいえ日程もじわじわ残り短くなっていっておりますので、ここらでまたピックアップをやりたいと思います。二次ピックアップです。例によって、何次までやるのかは別に決めていませんが、一次があった以上はとりあえず二次がなくては恰好がつかないですし、はい。
ピックアップというからには、「死がテーマの小説賞っていうけど実際どういう感じなの?」という方に「こんな作品がエントリーしてますよ!とりあえずこれから読んでみて!」とピックアップ紹介する感じでセレクトしているわけですが、今回も一次同様、テーマの題解きがかなりばらける感じになっていていい感じです(自画自賛)。というわけで、著者名は敬称略、今回も三選でお送りしてまいります。
デッド柿 武州人也
隣の柿はよく客食う柿だ!というキャッチコピーがちからづよい、B級ないしZ級のホラー映画へのオマージュとして捧げられた作品です。タイトルの通り、何らかの理由で人間を襲うようになった「柿」が何らかの理由で人間を襲います。そして人類が迎撃。きょうじゅはどっちも見たことはないのですが、伝説のカルト映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』と、これは日本人の監督が撮った『デッド寿司』という作品をベースにしているとのこと。
主催者が「テーマは死です」とやった手前、「人間にとって死とは!」みたいな真摯さで執筆された作品をたくさん御応募いただいているわけですが(それはもちろんとても良いことなのですが)本作品はいちおう人(と柿)が死にますけども肩の力を抜いて楽しめる娯楽作品となっております。肩ひじ張らないプロットですけど書いてる方の基本的な小説ぢからは高いですので、ちゃんとエンタメとして読める良い作品ですよ。
コーム・レーメ ラーさん
こちらはうってかわって重厚な「歴史もの」です。ジャンルは異世界ファンタジーとなっておりますが、ファンタジーによくある魔法とか異種族とかは特に出てこない、「ある架空の、ヨーロッパ風の帝国」を舞台にする作品です。
さて、その帝国には美貌の寵姫がいました。皇太子の愛人です。コーム・レーメ、というのは「惜しみなき愛」という意味のニックネームで、本名は別にあるのですが、誰もが彼女のことをそう呼びます。多くの男たちが彼女の美貌に狂わされて財産を蕩尽し、コーム・レーメはただ愛のみをもってそれに応える、そういう生き方をしている女性でした。
そのコーム・レーメが、一人の女性に興味を示します。麗しき首斬りのコルレッタ。帝国に仕える死刑執行人です。コーム・レーメとコルレッタの短い邂逅と交流が描かれ、そして二人の運命は帝国に吹き荒れた革命の旋風の上に交錯していきます——。
とまあ、これ以上はネタバレになるので書きませんが、筆さばきがカッコいい、なかなかに荘重なお話ですよ。
十三回忌 佐倉島こみかん
こちらは現代の日本が舞台の作品。ジャンルは現代ドラマとなっていますね。この作品はいわゆる、死者が生者に残す「呪い」をテーマにした作品です。
主人公は現在高校生の少女で、12年前に、12歳年上の姉を亡くしています。姉は生まれつき重い病を患っており、そもそも成人するまで生きることが最初から期待できない体質の持ち主でした。そんな姉が、幼い日に願った「弟か妹が欲しい」という願いのもとに生まれた主人公は、生まれたときから姉の影として生きることを与儀なくされた存在だった自分にどうしようもないコンプレックスを感じていました。
とまあ主旋律は重めなのですが、何しろ十二年も経っていることもあり、タイトル通り姉の十三回忌を舞台にして、「呪い」が解かれるところが描かれています。主題としては重いものを読者に提示しつつも、主人公がその重さに立ち向かい乗り越えていく様は明るく、主人公が新たな心の境地に辿り着いたところで結末が迎えられるのでした。
というわけで第二次ピックアップは以上です。参加済みの方も執筆中の方も構想中の方も読み専の方も、よければぜひ読んでみてください。なお、川系の恒例として、全作品読破&感想公表(Twitterで書かれる方が多いですね)の方にはもれなく「光の評議員」の称号が与えられるお約束ですので、我はという方はぜひ狙ってみてくださいね。