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第四回偽物川主催者ピックアップその4

 前回のピックアップその3からまだ一週間も経ってないんですけど、なんかこの数日の間に野生の文豪みたいな人たちが次々に現れるので、記事を書かなければいけないという気持ちになりました。というわけで、第四回偽物川小説大賞、主催者によるピックアップ紹介その4であります。例によって作者名は敬称略でお届けしてまいります。

14へ行こう、二度とは来ないあの特別な季節を生きよう 和田島イサキ

こういう企画の中で周囲を圧するほどの力のある作品というのは往々にしてタイトルだけでもそれと分かるようなオーラを放っているものなんですが、これなんかもう、エントリーされてるのを見ただけで「ヤベぇのが来たっぽいぞ」という気にさせられましたね。構成としてはワンポイントのファンタジー要素をギミックに仕込んだ現代日本が舞台のボーイミーツガールものなんですが、恐ろしいほどの技巧と小説ぢからがこれでもかというくらい駆使されていて、なんかもう俺様では勝ち目がないと思った。まだ読んでない人、悪いことは言わないから先にハンカチを用意しておけ。そしてさらには同作者様による別の作品まで読み始めてギャップに悩むのだ。そこまでが様式美なので。

御上の花嫁 高村 芳

相撲の世界には「突き押し一本で横綱を目指す大関」というのがたまにいるんですが、文学の世界には「文章力だけで人を土俵から押し出す野生の文豪」が存在します(#なんでも相撲に喩えるクラスタ)。こちらは、具体的にいつのどこなのかはよく分からないけどとにかく前近代の日本っぽい感じの世界を舞台に、幼なじみの男女の切なく悲しい別れが展開される物語となっております。圧巻の筆力で構築される、世界ひとつ分の匂いや雰囲気。正直、読んでいて「ノスタル爺」(※藤子Fの名作)みたいな気分にさせられる作品なのですが、そういう他人の情緒をかき乱す魔力というのもまた、この作品の小説ぢからの賜物というものでしょう。

Long season 山口静花

なんというか「あらすじ」や「概略」を記述しにくく、また客観的な解説を加えることも難しいプロットなんですが、しかし確かな「スゴ味」を感じさせられる印象深い作品です。ホラーではないんだけど、なんというか物凄く「禍々しい」ものを感じさせられる。なるほどこれは「マニア(偏執の愛)」と言うのに相応しい。これは作品紹介記事なのでいちおう内容紹介に挑戦しますが、主人公は女性で、妊娠していて、そして本人の述懐するところによれば「三年間に渡ってずっと同じ胎児を妊娠したまま」です。そのような女性が、自分の人生とか愛とかについて独白する、随想的な雰囲気の作品。「愛」というテーマを考えて出題したのはこの私であるわけですが、こういう予想外の角度から切り込んでくる作品がたまにあるからこういう企画の主催はやめられない。ご参加ありがとうございました。


というわけで、今回も三選、ピックアップ紹介その4でした。まだ日数残ってますし、終盤に最終ピックアップを置くのが私の流儀なのでその5はやると思いますが、さすがにそれで最後だと思います。というわけで、また次をお待ちください。アディオスアミーゴ。

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