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第四回偽物川主催者ピックアップその5

貴様のニトロに火を放て(最近自分で考えて自分で気に入って今後キャッチフレーズに使っていこうかと思っている文句)、どうも偽物川小説大賞主催の偽教授です。第四回偽物川小説大賞は無事ゆうべ募集期間を終了し、七十四作品ものご参加をいただき、もろもろ鋭意作業中なわけですが、とりあえずまずは最終の主催者ピックアップをやってまいりたいと思います。つまり第5回で最終で、並んでる順は純粋な投稿順で、作者名は例によって敬称略というわけです。

醜悪な恋人 ペンギン4号

顔に大きな傷痕があって自分は醜いのだと信じ込んでいる不幸な女性が、突然自分の人生に現れた美青年になぜか異常なまでに入れこまれて……というところから始まる悲劇の物語。このことは講評本文では言及しにくい問題なのであえてここで書いてしまおうと思うのですが、この作品はもともと同作者様の『春風町そよかと僕の顛末』という別作品の中で作中作として存在が語られていました。そこでは大学生の男子文芸部員が書いた作品で、しかもこれを読んだ文学少女が一面識もないその男に惚れてしまうほどの傑作だったという設定。わたくし偽教授はその設定と、前掲作に軽く言及されている物語の概略を先に知った上でこの作品が書き綴られていくのを見ていたわけですが、俺としてはなるほどその設定に恥じないだけの力のある作品だと思ったよ。そら春風町さん惚れてまうわ。

主我を愛す 矢田川怪狸

きょうじゅは無責任なことを言いたくないので、「この作品は泣ける」というようなことは言いません。貴様らがこの作品を読んで泣けるかどうかは貴様らの問題であり、それはきょうじゅの干渉し得る次元の問題ではないからだ。しかし「この作品で泣いた」ならば言ってもいい。それは単なる事実だからだ。つまり全俺が泣いた。えー、本作品はSFです。寿命を迎えた愛玩用ロボットとその主人である年配の女性の別れを描いた作品です。まだ講評は書いていなくて、もうちょっと深く読み込んでから書く予定なので内容について多くを語るつもりもないんですが、さっき書いたことはガチのマジであり、これも端的な事実なんですけど七十四作品中で本当に涙がこぼれたのはこれだけです。

母との(緩慢な)さよなら myz

母が死んだので葬式をしていたらゾンビになったその母がいきなり起き上がった。そこから始まる、人と人の別れを丁寧にえがいた物語です。ホラーになりそうで実はホラーではない、確かにドラマという言葉に相応しいドラマでしたね。S・フロイトがいみじくも「喪の仕事」という言葉を使って総括したように、愛の対象を喪失する物語というのは非常に普遍的な主題であるだけになかなか個性を出していくのが大変なんですが、この作品は「ゾンビ」というフックの使い方が非常に巧みで、そこに一つ抜きん出たものを感じた次第です。


というわけで、最終主催者ピックアップでした。講評発表前にまだいろいろと動くかとは思いますが、今回はこのへんで。あと、偽物川とは直接関係ないんですけど別個の企画として偽教授稟性杯というのも始めておりますので、よかったらそっちもチェックしていただけると幸いです。ではでは。

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