DIC川村記念美術館が素晴らしかった話
いやほんと、素晴らしかったんです。
インクの会社DIC株式会社が収集してきた美術品を公開する場所として1990年にオープン。コレクションについてや建築の話など詳しくはこちらの公式HPにて。
全部良かった。というか当たり前のように良いものしか並んでなかった。
中でも特別素晴らしいと思ったものを挙げると、この二つ。
堀内正和《四角と丸の組み合わせA》
ジュールズ・オリツキー《高み》
まず堀内正和《四角と丸の組み合わせA》。
こちらで見られます。
DIC川村記念美術館のコレクション展で見たものがなぜ茨城県近代美術館のデータベースで見られるのかはわかりませんが、いくつかあるのかな、分からん。
彫刻作品はその特性上360度ぐるっと回って見るのが楽しいんですが、こちらはまさにその見方で存分に楽しませてくれる作品。
単に四角い板から反円を切り出しただけかと思いきやよく見るとそんな単純じゃない。4本の縦軸の中で結構複雑に交差してる。四角と反円、単純な形だけど、軸を増やすことで複雑にしている。つまり頭が混乱する。楽しい。
一見シンプルに見えて実は複雑。かっこいいです。これ欲しいってなった。
次にジュールズ・オリツキー《高み》。
こちらの記事で作品画像見られます。
こちらの作品が「木漏れ日の部屋」という展示室で展示されていたんですが、外光を取り入れたとても素敵なお部屋で、大画面の作品をひとつだけ展示する贅沢な空間でした。
264.8×503.6cmという大画面を水色、黄色、オレンジや赤などの色彩を滲ませることで埋めています。
この作品は個人的に刺さりまくってしまったんです。
私、この景色知ってるってなってしまった。
昼の陽光に包まれて、全てがどうでも良くなる時、今死ねたら最高だなって思う瞬間。その時のイメージと重なって見えてしまった。
だからどうしようもなくこの作品世界に共感してしまって、もちろんジュールズ・オリツキーのことは初めて知って、この作品にどんな背景があるのかも知らないで見てるから、とても一方的な感情だけど、それでもこの作品を座って眺めている間、私は心から穏やかな気持ちになれた。
この作品と出会えたことが、今回一番の収穫だった。
続いて、
企画展示「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」
2024年3月9日(土) - 6月30日(日)
なんというか、二次元における連続性の検証、みたいな解釈で見ました。
その見方でいくと、木材や鉄を規則的に並べていくのも、タイプライターで紙に打ち込まれた文字や単語の羅列も、やろうとしてることは同じなんだなと思いました。
紙に脈略なく打ち込まれる単語たちは、なんだかシュルレアリスムを彷彿とさせて面白かった。でもカール・アンドレがやろうとしたのは、紙面上に生み出される連続性を見つけることで、言葉の意味の無さは意味が無く、視覚的なものに比重を置いているように見えた。
打ち込まれた言葉はあくまで道具に過ぎない。床に組み合わされた木材ひとつひとつと同じなのだ。
なんてことを思いました。※個人の見解です。
結果とても満足な一日になりました。
ジュールズ・オリツキー展とかやって欲しいな。
ロスコ・ルームについて触れるのを忘れてました。
マーク・ロスコの《シーグラム壁画》
それを展示するためだけの部屋。こちらもまた贅沢な空間でした。
明るさを極力抑えた室内の壁には、ロスコの作品がずらりと並びます。
不思議なことに、照度が抑えられているからこそ見えてくる色彩の変化やコントラストに気付かされます。部屋の暗さに目が慣れてくるに従って、色の見え方も変わってくる面白さ。
色面で構成されたロスコの作品は、ほのかな明かりのもとでこそ、その正体を現すようです。
同系色が隣り合っているのに全く違う色面に見える。絵の具の質感がわずかな光でこそはっきりと浮かび上がってくる。
四方を作品に囲まれた空間は、それ自体がひとつの美術体験でした。
ホワイトキューブと言われるように、展示室というのは白い壁というのが定番ですが、必ずしもそれが作品の魅力を最大限に引き出すとは限らない。
その好例が、このロスコ・ルームなのだと思います。
もう書き残したことはないはず。