絵本 『跡』 長谷部満莉愛
【これはnote記事の作品『跡』から想像して作品を作る企画です!】
『跡』のnote記事はこちらから⬇️
今回の作品は
長谷部満莉愛の絵本です!
『跡』からまずモノローグを作り、
それから絵本を作りました🎨
モノローグというより小説に近いでしょうか?
見えない跡に思いを馳せます🌜
モノローグだけではなく、
優しいタッチの絵画にもご注目ください🖼
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跡
原作 浦和真優子
絵・文 長谷部満莉愛
午後の日差しの中で、
私とお母さんは部屋の一番西側の和室に座って、
先月亡くなったおばあちゃんの遺品を整理していた。
お母さんは独り言みたいに私に話し始めた。
「この家に私たちとか、私たちのおばあちゃんよりも
ずーっと前に住んでいたおばあさんがいたらしいんだけど、
そのおばあさんはね、
小躍りしてたら足を挫いて倒れてそのまま
逝っちゃったんだって。
悲しいよねえそんな最期。
お孫さんがね、あとで気づいた時は
もうあったかい窓辺で、午後の日差しに溶かされて、
クランベリーみたいな色で、冷たくなっちゃってたんだって、
なんで小躍りしちゃったんだろうね。」
お母さんは私が小さい頃からよくこの話をする。
昔は面白い話みたいな感じで、
「小躍りおばあさん」とか言って私に話してくれていたけど。
今日は私もお母さんも、なんだかしんみりしてしまっている。
お母さんはおばあちゃんの遺品の中から
小さい真珠のピアスを見つけて私にくれると言った。
私はいらないと言った。
だってピアスはあけていないから。
お母さんは
「いいから。」
と私の胸ポケットの隙間にピアスを二つ、
コロンコロンと入れてくれた。
その夜、部屋でお母さんからもらった小さい真珠のピアスを、
鏡の前で耳に当てて見た。
ああ。
私の顔、よく見たらおばあちゃんに似てる。
私のよく知ってるおばちゃんは、
おしゃれで、奇抜で、ヒョウ柄とか着ていたから、
こんな可愛いピアスをもっていたなんて知らなかった。
でも、もしかしたらおばあちゃんは
こんな感じの人だったのかもしれない。
白くて、小さくて、優しい、みたいな。
私はおばあちゃんのこと、あんまり知らない。
おばあちゃんっ子ではなかったし、
部活とか仕事で忙しくて、あんまり顔合わせてなかったから。
私の知らないおばあちゃん、
小さくなって白くなってしまった。
そんなことを思いながら、
小躍りして死んでしまった小躍りおばあさんにも、
こういう風に懐かしんだり、しんみりしたり、
一緒に住んでいたのに知らないことだらけだったり、
そういう家族がいたのかもしれないとか。
少し思ったりした。
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いかがでしたか?
文章と絵を合わせてみてわかる発見
があったりしますよね👀
次回は中島早紀の作品です!
お楽しみに🐼🐾