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真夏の青空


 

 新しいスニーカーを買った。
 大好きなだぶだぶのTシャツと少しだけくすんだ、紺色のコットンパンツ。水色のコンバースのマークが入ったソックス。洗った髪を乾かして、銀色の小さなビーズがたくさんついたヘアゴムで1つに結んで私は外に飛び出していく。

 日焼け止めを忘れた。
 慌てて日傘を取りに行く。
 暑いんだもの。
 それに日焼けはよろしくない。
 少しくらいこむぎいろもいいけれど、ガンになったら困っちゃう。

 バーバもそれに気をつけて82歳になっても、病気知らずで元気でいる。私よりも元気なくらい。

 真新しいスニーカーは、白に近いベージュで少しだけ艶がある。

 一度見てすぐに欲しくなって買った。お財布の中は空っぽになってしまったけれど全然問題ないと思えてしまうくらい魅力的だったのだ。

 私の足をしっかりと守ってくれるのに、軽くてどこも痛くない。本当に快適。

 さぁ、歩くぞ。
 いつもはバスで行く道を今日は全部歩こうと思った。このスニーカーだったら、どこまでも私を運んでくれる。歩かせてくれる。そう思った。
 この靴に出会わせてくれた神様に感謝したい。奇跡だったかもしれない。大げさだけどそう思う。

 頭の上には、真っ青な空がどこまでも広がっていて、私はその中に飛び込んでいく魚のような気分になった。真っ青な水の中に飛び込んでいくイキのいい小さな魚。銀色のその体が光を弾いて青の中に吸い込まれていく。私はその水の中をどこまでも自由な気持ちで泳いでいくのだ。

 とても気持ちが良い。
 軽やかな気分だ。


 暑いけど嫌じゃなかった、
 ちょうど良く風も吹いている。

 鋭い強い夏の日差しは日傘が弾き返してくれているから痛みを感じなくても済んだ。

 ジリジリと熱をはらんで溶けそうなアスファルトからはスニーカーが守ってくれている。だから大丈夫。どこまでも歩いていけるわ。

 私の華奢な両足を包んでくれて守ってくれて前に進んでいく私を応援してくれているの。お財布は空っぽになってしまったけれど、これは私に必要だった。だから大丈夫。多分だけど。


 本当はすごく不安。
 心細い。
 怖い。
 でも、やっぱりあきらめない。
 あきらめたくないの。

 私は前に進んでく。
 絶対に逃げたりしないわ。
 日傘なんかさしてるけど、だけど負けない。歩いて行くわ。

 真っ青な大きな空の形の海の中に込んでいくわ。

 逃げたりしない。
 きっと大丈夫。

ありがとうございます。 嬉しいです。 みなさまにもいいことがたくさんたくさんありますように。