陽だまりのような人
みつさんが亡くなった。
そのことでこんなに心が揺れてしまうなんて考えもしなかった。
私にとっては本当に大きな存在だったんだ。
若い頃や子どもの頃は大人の人はつよくて大きくてゆるぎないもののように考えていたけれど、実際に自分が大人になってみると、自分とはなんと心許ないものなのだろうと思うことばかりなのだった。
小さな子どもを持ってからその気持ちはどんどん膨らんでいくばかりで心配や不安な気持ちばかりが増えて泣きたくなることの方が多くなる一方なのだった。
そういう自分のつらさをわかって優しく守ってくれてた人が一人、永遠に消えてしまったということに大きなショックを受けている。
悲しみよりも喪失感、みつさんがいないことで泣きたくなってしまう。
みつさんは私の心の重たいものをそっと支えてくれていた。
それに甘えることで私は普通の顔で生活することができていたのだということを今はっきりと自覚できるようになって愕然としている。
みつさんはほんとに優れた人だった。
それを意識できたのは亡くなった後のことだったような気がする。
それまでは考えもしなかったことについて今やっと気がつくことができるようになった。
さりげなくそっと、でもしっかりと支えてくれたみつさんに心から感謝の気持ちが湧いてくる。
それだけではなくて、自分自身の不安とも直面している。
ほんとは心細くて泣きたい気持ちをいつも抱えていることに気がつかないで生きていられた。
それはみつさんの思いやりだった。
あたたかい心配りだった。
みつさんは陽だまりのような人だったなと思う。
彼女のいるところはなんとなくいつでも明るくてあたたかかったような気がする。
縁側にちょこんと座ってニコニコしてる。
晴れた日の縁側の温もりのような人。
擦りガラスの映す影。
ふかふかの座布団。
みつさんの印象はいつもやわらかな温もりにくるまれている。
ありがとうございました。
お線香をつける度にそう思う。
細く立ち上っていく煙のほのかな芳香。
この香りでなにかを伝え、なにかを捧げることができたら。
嬉しいと思います。