
白色の街
下りのエスカレーターがホームに辿り着いた時、丁度乗るはずの電車がゆっくりと停まる途中だった。
小雪が舞っている。
本降りにはまだ早い。
けれども雪の降る勢いは次第に力を増してゆき、辺りの景色が白色に染められてゆくのが電車の窓から見えたけどどうすることもできなかった。
冬の空気とグレーの空はなんだかさみしい今の気分を映して見せる鏡のようで少しだけ悲しかった。
前向きなことなんてなんにもないとしか思えない今日の自分にそっとエールを送りたい。
そう思うのだけれど、どうしたらいいのか具体的にはわからなかった。
濃いグレーの分厚いコートが重たくて呼吸が浅くなっているのをどうすることもできないまま、電車の窓の向こうに見える白い景色をただ見つめていた。
泣きたい気持ちにならないで済むようにろんなものを自分の横や周りに置いてみるのだけれど寒くって静かだからどうすることもできなくて。
深く考えないで生きようとすることも今はできない。
今までもこれからも多分きっと。
迷子では決してない。
けれどもゴールは見えなくて、自由でもなく確実なものも何一つ持てずに今を浮遊するようにとりとめのない気持ちのままで生きている。
雪は勢いを増してゆく。
白色が街を染め、光を放ちながら冬の空気を冷たくさせて悲しみを深くしている。
自分の力ではどうすることもできないことがこんなにたくさんあることを知るしかなくなってしまった今を持て余しながら、重たいコートに守られて電車の中で立っていた。
外はただ降る雪に白色に染められて光を放ち、明るいような錯覚を見せている。
粉砂糖をかぶったようないつもの街の普段とは違う景色は華やかで雄弁なもののように見えるけど本当はどうなんだろう?
白の放つ光の中に何か優しさのようなものを感じ取ってしまう自分に溜息をついている。
空気は冷えて頬を引き締め、遠くの空を見あげてしまう。
グレーの空はただ白い雪を降らせて止まらない。
街は白に染められて柔らかな光を放ち続けながら空気を冷やして冬を深めていくだけなのだ。
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今日、雪の降る中を歩いていた時のことを書いてみました。
寒かったです。
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