【テキスト版】前編:茨城の多彩で美味しい和紅茶「SASHIMA CRAFT TEA」とは(紅茶の淹れ方講座もあります)
インタビュー前編は、茶師の花水さんってどんな人?SASHIMA CRAFT TEAとは?について。長野園の舞台裏には、栽培、製造、パッケージデザイン、飲み方の提案、店舗運営など、花水さんの様々な奮闘がありました。
話し手:花水理夫(さしま茶 長野園 茶園管理責任者、茶師)
聴き手:佐野匠(編集・ライター・フォトグラファー)
さしま茶 長野園 https://www.naganoen.com/
通販サイト https://chabaco.com/
茶cafe&shop chabaco https://www.naganoen.com/shop
インタビュー音声は、こちらからお聞きいただけます。
文字起こし:吉成 美里/にっこりデザインラボ Graphic Designer & Photographer
茶師・花水理夫さん
――改めて、前提というか趣旨をご説明すると、今回は、ここは茨城県猿島郡境町ですよね。
花水さん:そうです。
――で、お茶の栽培と生産、そして「茶cafe&shop chabaco」の店舗運営もされている花水さんに、お茶作りのことと、和紅茶の魅力と「SASHIMA CRAFT TEA」のことを伺いたいです。
お茶のことはもちろんだし、これからどんなふうにSASHIMA CRAFT TEAを展開させていくかのビジョンのお話も。
花水さん:はい。
――で、そもそもこれは、自分の「たのしごとうれしごと」という企画の中でインタビューさせていただきます。
今ここにもちょっと書かせて頂いてるんですけど、やっぱいい仕事に、いい仕事をする人に出会うきっかけを作りたいっていうのがあって、そのために文章で伝えるのもそうなんですけど、声も含めて、人柄も含めて、思いを届けていきたいなぁというインタビューです。
花水さん:はい。よろしくお願いします。
――よろしくお願いします。本当になんか、3年ぶりぐらいのインタビューで。
花水さん:そうなんですよね。元々佐野さんとは「Re:BARAKI」っていうサイトの中でのインタビューを受けたっていうのがきっかけで。
で、Facebookで佐野さんの発信を見て、あ、これ今、ちょうど自分に必要だなと思ったので、声をかけさせていただいて。
――本当ありがとうございます。
花水さん:いえいえ。とんでもないです。
――なんか、いい感じのラジオ番組のような振り方をしていただいてありがとうございます(笑)。
花水さん:ははは(笑)。
――1回、花水さんのことは取材をしていて、記事にもなっているんですけど、改めて整理しながら声を伺って、あわよくばこういう、お茶作りを好きな人に聞いてもらいたいなぁと思っています。
花水さん:そうなんですよ。やっぱりね、3年間の間でだいぶいろいろと変化があったので、今、その辺を1回ちょっと、ブラッシュアップしたいなっていうのがあって。
――はい。じゃあちょっとそこも、話したり、質問したり。
あっ、ありがとうございます。今紅茶を出していただきました。
花水さん:はい、どうぞー。
――ありがとうございます。
花水さん:何から行く?自己紹介から行く?
――そうですね。まずは。
花水さん:そうですよね。最初に自己紹介しないと。
――そう。これやっぱ聞いている人は、全然知らないって人も多いはずなので。
花水さん:じゃあとりあえず、自己紹介させていただきます。
先程ご紹介頂きましたように、茨城県猿島郡境町というところで「長野園」というお茶農家をやっております、永野園の茶師、花水理夫です。
――茶師、っていうんですね。
花水さん:そうですね。お茶を作っている人の総称になるんですけれども、伝わりやすい言葉で、今は茶師と名乗っています。
僕自身は、1973年生まれで、大学を1997年に卒業して、元々普通のサラリーマン家庭で、転勤族で、日本全国いろんなところを飛び回っていて、最終的に横浜の大学に行って、1997年に卒業して、その後10年間、3社変わったんですけど会社員をやっていました。
その最後の会社にいた頃に今の妻と出会って、妻の実家が長野園だったんですね。
で、お茶に関して後継ぎがいないっていう話があって。特に先代から「やってくれ」なんて一言も言われなかったんですけど、自分の中でも、なんかちょっとサラリーマンも、リスキーな環境だなぁ、っていう思いがちょっと芽生えていた時期だったので。
――タイミング的に、リーマンショックとか、そういう。
花水さん:そうですね。僕の場合はちょっとまたそれと違うんですけど、最後に入った会社が、アメリカの肉の会社でお肉の輸入をしていて、牛肉が7割くらいを占めている会社だったんですね。
で、私が入ったタイミングで、狂牛病、BSEっていうのが起きてですね。
その当時の社員さんが、私より優秀な人いっぱいいたんですけど、ボコボコ首を切られていったんですよ。やっぱり外資系なんで、すごいシビアで。
――容赦ないんですね、そこは。
花水さん:そう。それを見た時に「これ、ちょっとやばいな」っていう思いがあって。で、実家でお茶農家をやっていて、後継ぎはいないっていう話を聞いていたので「ちょっとやってみようかな、やってみたいな」って本当に割と軽いノリではありましたね。
――そうだったんですね!?そもそも、お茶の農家の方って、元々ご実家がずっとやっててみたいな感じの印象はあるけど、花水さん違うんですよね。
花水さん:そうなんですよ。基本世の中の農家さんとか違う農家さんもそうなんですけど、実家を継いで継いでっていうのが多いと思うんですけども、私の場合ちょっと外から来て、マスオさんっていう状態でやっているんですね。
なので今そこからスタートして、静岡のお茶の問屋さんで1年間修行して。本当に0からスタートだったので、毎日をお茶を見るっていう意味でそういうことをやって。で、2009年から長野園で働き始めました。
で、今回のテーマである紅茶なんですけど、2010年から紅茶の製造をスタートしています。
緑茶のサブとしての紅茶?
――元々は、長野園さんは緑茶だけだったんですか?
花水さん:緑茶オンリーでやってましたね。はい。
――2010年から紅茶をスタートさせて、それはもうじゃあ花水さん主導で始めたってことなんですか?
花水さん:そうですね。最初は本当に小さいロットだし、全く作り方もわからなくて。
ただ、なんで作り始めたかっていうと、当時、お茶の青年部っていうのがあって。お茶業青年部の事業のひとつで、地元の小学生向けにお茶の淹れ方授業みたいなのをやったんですよ。
その時に、緑茶をこう淹れてる姿とか、緑茶の淹れ方をやってる時、すごく子どもたちがね、ノリが悪かったんですね。
――ノリが悪いんですね!?
花水さん:「なんだ緑茶かよ」みたいなね。
――あぁ~。
花水さん:そう。なんですけど、その後に、地元でもう先に紅茶を作ってる人がいたので「じゃあ紅茶入れますね」って言った後に「お!紅茶じゃん!」みたいな感じで、盛り上がったわけなんですよ。
――紅茶のほうが盛り上がるんですね!
花水さん:そうなんですよ。
――かっこいいんですかね?やっぱ紅茶のほうが。
花水さん:なんなんでしょうね?ちょっといいもの感があるのかなぁ、子どもの中では。スペシャル感があるのかなと思って。
それを見た時に「あ、これちょっとやってみたいな」っていう思いがあって、でスタートしたんですよ。
――はい。
花水さん:ただ、やっぱり緑茶に関しては歴史もあるし、周りの方もみなさん良いもの作ってるので、流れがあるんですけども、紅茶に関しては本当に作ってる人も少ないですし、情報が少なくて。
本当に、そこは全てがなかなか、いいものが本当にできてこなかったんですね。
――それこそ、紅茶を作ろうにも、美味しい紅茶を作るノウハウとか知識がまだなかったみたいな感じ?
花水さん:そうそうそう。ない中本当ア手探りでずっとやってたっていう感じで。それで、ずっとそれから何年か、7年8年ずっとそんな状態でやってたんですね。
で、とある時に、発酵茶にものすごく詳しい女性の方と出会って。その方が指導されている国内でもトップレベルの方と、一緒に研修とかを受けるタイミングが来て。
そこからもうガラッと変わったんですよ。多分おそらくね、それが2017年か2018年。それぐらいのタイミング。
――そのガラッと変わったっていうのは、出来が変わって来たんですか?
花水さん:そうです。それまでに作っていた紅茶はもう「あ、物が明確に変わったな」っていうタイミングで全部捨てました(笑)。
2019年国産紅茶コンテストで初入賞
――そんな雲泥の差!?
花水さん:そのぐらい、ああこれはもう一緒にできないな、っていうくらいになったので、そこでもう一気に切り替えた感じですね。
――出来が変わったっていうのは、そもそもの木に、お茶の木に生えている葉っぱの品質はもういいと。
花水さん:うーん。そこもいろいろあるんですよ。
――そうなんですね。
花水さん:はい。
なんて言ったらいいのかな、これってワインとかに例えると、すごく分かりやすいと思うんですけども、ちょっと一昔前に国産のワインっていうのは質が悪いものっていうイメージがすごくあったじゃないですか。
でもそれって、みなさん技術は本来あるんだけども、本気で作る人は少なかったっていう話だと思うんですよね。
――そうだったんですね。
花水さん:はい。で、そこをこの紅茶に当てはめてみると、本当に同じようなことが言えて。
なんとなく赤くなっていれば紅茶って言えて、そこそこ道の駅とかで売れるからいいでしょう?みたいな人が、結構未だに多いんですよ。
――そっか。ちょっと流行りで作ってるみたいな。
花水さん:そうそう。とりあえず売れればいいから作ってるっていう本気じゃない人が結構多くて。
ただ本来であれば、茶葉、同じ茶葉を発酵させていくっていうプロセスの中に、何が必要で何が必要じゃないか、どういうことをしなければいけないか、何をしてはいけないかっていうのを、ちゃんと系統立てて論理的に考えた上で作っていかないと、いいものって絶対できないんですね。
そこに気付かされたのがそのタイミングで。
――なるほどなぁ。
じゃあもう、お茶の木のところから、どうやって収穫して、どうやって製造していこう?っていうところまでも見直し。
花水さん:そうそうそう。そう。
――じゃあ、本当にいい出会いだったんですね。
花水さん:そうなんですよね。だからそれがなかったら、本当に今僕はいない、ここでこういうお話はできてないかなと思うんですけど。
そこから2年後、2019年に、国産紅茶のコンテストで、初めて入賞したわけなんですよ。
2年間の間にガラッと作りを変えて、作りもそうですけど、茶園の管理から全て変えてっていう感じでやってます。
――へぇー。多分、僕が取材させていただいたのも、実はそのちょっと後ぐらいだなって今思い出しました。
花水さん:そうそう。ちょうど入賞しましたよ、みたいなタイミングですよね。
――入賞した時って、そもそもコンクールっていうのは、国内の和紅茶のコンクールってことですよね?
花水さん:そう。「プレミアムティコンテスト」っていうのがあって、それは輸入紅茶の専門店さんが頭になってやっている「ジャパン・ティーフェスティバル」っていうお茶の販売イベントの中で、和紅茶をこれから盛り上げていきましょうっていうような形で、国産紅茶のコンテストを主催してくれて。で、そのコンテストを見る方自体が、ずーっと紅茶をテイスティングして買い付けをしてる方なので、すごく見る目がある方の集まりなんですよ。
――ちなみにその時の受賞の決め手ってなんでしたか?
花水さん:いや、それはなんともわかんないですけど、完全に物が良くなったからっていうところだと思います。
――本当にそうなんですね。そういう審査員の舌に叶ったってことですもんね。
花水さん:そうですね。はい。
「和紅茶なんか美味しくないでしょ?」という声
――それが2019年にあり、その後の展開ですけど、2019年前後のことは自分もちょっと追ってたりしていて、その後、今に至るまでの3年間ぐらいの展開ってどんなことがあったのかな?と思いまして。
花水さん:3年間ぐらいの間に、ずーっと物のクオリティを上げていくっていうのは当然続けてやっていたわけなんですよ。
ただ、その中で、国産紅茶ってそもそもマーケットがそんなになくて、認知度もなくて、例えば大口で全量どこかに納めますみたいな商売は、すごく安い値段でないとなかったんですね。
なので、自分で販売先をちゃんと作っていくっていうことをやりながら動いてましたね。
――例えば、従来だと、日本の和紅茶ってどういうところに届けられていたんですか?
花水さん:従来だと、いや従来がなかったわけですよ。そもそもマーケットが小さくて。
――さっきの、道の駅にちょっと売られてたみたいなそういうノリ。
花水さん:そうそうそう。そんなノリですよ。
――はいはいはい。
花水さん:で、やっぱり、紅茶に携わる方とか、今でも一部の方はそうだと思うんですけども、ワインの例しかり、国産紅茶なんか美味しくないでしょ?って言う。
――あー。偏見とかね。
花水さん:っていう頭が結構あって。なかなかそのマーケットが大きくなっていかなかったっていうのは結構あるんですよね。
実際そんなに、素晴らしいものがどこでも手に入る状況では今でもないですけど。
――でもそもそも、美味しくないとみんな飲まないっていう前提がありますもんね。
花水さん:そう。おっしゃる通りなんですよ。
――なるほど。そこからじゃあ広げていったっていうところなんですけど、どういうところに届けていった、広げていったんですか?
花水さん:まずは、輸入紅茶の専門店さんで販売をしていただくっていうところがスタートですね。
――すごい、なんか、結構ハードル高そうですね。
花水さん:そうですね。
――どうやってその契約取り付けたんですか?
花水さん:そこは、やっぱり、賞を取ったことで、そういったところでサンプル提供させていただいたりとか、そういう中で気に入っていただいてスタートしていくっていう、ごくごく自然な流れ。
――やっぱり、味で勝負っていう感じなんですね。
花水さん:そこはそうですね。はい。当時はそうでした。
「良い時間だったね」「美味しかったね」が紅茶を身近にする
――なるほどなぁ。ちなみに、今、収録中のこちらの「chabaco」って、ここってオープンっていつでしたっけ?
花水さん:2019年の9月なんですよ。コロナが起きた直後。
――あぁ、すごいタイミングですね。
花水さん:そうなんですねー。
――ここは、モンテネグロ館?
花水さん:モンテネグロ会館。
――僕、この間、買いに来た時が初めてで、最初、この建物の一角に長野園さんのスペースがあるのかなって考えてたんですよ。
花水さん:うんうん。
――あっ、まるごと長野園さんのお店なんだなっていう。
花水さん:そうです、そうです。
――ここ、なんかすごい、お茶も買えるし、ご飯も食べられるし。
しかも、茶器っていうんですか、お茶用のね、いろんな用具が売ってたりとかして。ちょっと本も置いてあって。
あとなんか静かにすごせて。
花水さん:そうなんですよね!静かに過ごしてもらいたいなっていうお店なんですよ。
元々はこれ、境町の施設で、隈研吾さんが設計して建てられた建物なんですね。
で、そこをお借りしてうちが運営してるっていう感じなんですけど、やっぱりお茶を飲むっていうシーンが、なかなか減って行ってるなってこう肌で感じていた中で、「いい時間だったなぁ」の後に「美味しかったよね」っていう、そういう成功体験の積み重ねが、これからお茶を続けていくにあたって必要だなって思っていた時期に、町からそういう施設ができるからやってみないですか?って話があったんで、でコロナの中っていうなかなか厳しい時代だけど、じゃあやるか、って、スタートをしたところで。
――そうですよね。はいはいはい。
花水さん:それまでは、僕キャンプが趣味で、キャンプ場でイベントでドリンク販売っていうのを、それまでの何年間かやってたんですよ。
で、ある程度ドリンクっていうところは、メニューもいろいろバリエーション作ってたし、やれるなぁと思ってたんですけど、今回結構本腰入れたカフェをやっていて。
茶cafe&shop chabacoは「自宅で淹れる紅茶を超える味」を提供
――この今回のカフェ作り、chabaco作りの時に、一番なんかここは軸としてぶらさないように持って行こうって思ったものって何かありますか?
花水さん:自宅でも入れるお茶の味を越えるお茶の味を淹れなきゃいけない。
――ああー。本当そうだと思います。
花水さん:はい。そう。
――確かに、だってここで紅茶に出会うわけじゃないですか。和紅茶に出会うわけじゃないですか。
花水さん:そうですそうです。はい。
――そこの第一印象が「こんなもんか」だったら、だめですよね。
花水さん:そうです。なので、淹れ方とか茶器とか、そのセレクトは無茶苦茶こだわっていて。
――今、出していただいているこのお茶、カップから、味ももちろんなんですけど、これ自分の家じゃこれ揃えられないなっていう雰囲気すごいあります。で、すごいそれが嬉しいですね。実際どうですか?来てくださるお客様の反応とか、感想とか聞いている感じですと。
花水さん:んー、すごくいいです。まだまだやっぱり形にはできていないなっていうところはあるんですけれども、やっぱり知っていただくこととか、体験していただくことっていうのがすごく大事で。
で、意外とこのお店、広域のお客様が多いんですよ。本当に車で1時間2時間かけて来られる方が結構いらっしゃって。
わざわざそういう時間を過ごしに来ていただけるっていう中で、やっぱり忙しいこの日常で、ぽっかり小1時間2時間みたいな時間を、ゆったり気持ちよく過ごしてもらうっていうのは、すごく大事なことかなぁと思っていて。
――確かに。今、結構意識しないと、ゆっくりできないような気がしています。
花水さん:そうですね。
――ちなみに遠方だと、どういうところからお客様がいらっしゃいますか?
花水さん:普通に都内、神奈川とか、もっとぶっ飛んで四国だったりとかっていう方もいらっしゃるし。
――すごい。やっぱりそれは紅茶好きな方?
花水さん:そうですね。さすがにそう遠くになると、紅茶が目当てでっていう方になりますよね。
――僕はつくばですけど、圏央道乗ると、50分弱で着くのかな。
花水さん:乗んなくてもそんなもんよ?つくばだったら意外と。ピュッと来ちゃうから。
――で、自分運転好きなんで、ドライブの立ち寄りで、ここでゆったりして、さぁどこ行こうかな?みたいなの、ありじゃん!って思いました。
花水さん:うん。本当はね、こういうお店って、メインの通りから離れてるから、目的地にならなきゃいけないんですよね。
――そうですね。確かに。
花水さん:こういうお店はね。「ここに行こう!」って心を決めて行ってくれるようなお店にならなくちゃいけなくて。そういうお店にしていきたいって、今やってますね。
――なるほどなぁ。確かに自分の印象だと、ここに来たらまず何か美味しい猿島の和紅茶に出会えるお店、出会える場所。なんなら、どうしたら美味しい淹れ方できますか?って聞いたら教えてくれそうな雰囲気が。
花水さん:あ、全然時間あったら教えるし、それもちょっとワークショップ形式で作ろうっていう話を、この間妻としてたんですよね。
――いいですね、そういうの。うんうん。
花水さん:やっぱり、そういうとこまでやれて、このお店の価値が出るので。
そもそも「茨城のお茶」の認知度が無い
――確かに。そうですよね。なんかもう、自己紹介で既にいろいろ聞けて楽しいなって思ってるんですけど(笑)。
花水さん:いやいや(笑)、自己紹介しかしていないよ。
――そうなんですよ。じゃ、ちょっと進めて、今ちょっとまとめると、茶師であり、経営者でもあるし、chabacoというカフェも運営していてっていうところで。猿島のお茶で作った和紅茶を、みなさんに届けているというのが、大きな役割ですよね。
花水さん:そうです。はい。
――それがありつつも、そもそものところになっちゃうんですけど、このエリアで取れる、長野園さんでも作っている「さしま茶」。さしま茶ってそもそもどういう特徴があるの?っていうところを伺いたいです。
花水さん:さしま茶って呼ばれるものは、ここ茨城の境町、坂東市、古河市、常総市、八千代町、この5市町で作られるお茶を、さしま茶と総称されていて。
江戸時代、まだ運送手段がそんなに発達してなかった時に、利根川の水運を利用してすごい栄えたお茶なんですね。その時代が一番隆盛期で。
ただ、今になってみると、そんなに茨城の方でも「え、茨城でお茶作ってるの?」みたいな方も結構いらっしゃる、実感としては。
――ああ、わかります、それは。
花水さん:そう。やっぱイメージとして静岡とか、今だと鹿児島,あと京都ってイメージがあるので、あんまりメジャーな産地では当然ない。
――そうですよね。
花水さん:はい。で、お茶そのものでいうと、お茶はもともと亜熱帯の植物なので、寒さっていうのは本来強くないんですね。
で、茨城の大子町、奥久慈とかその辺で作られるものが、経済的な栽培の北限だよって呼ばれてるぐらいな所なので、割としっかり産地としてある中では、もう本当に北限の地域になります。
――経済的な産地っていうのは、ある程度まとまった量取れて、産業として成り立つっていうこと?
花水さん:そうそう、そういうこと。
――北限に近いんですね。ここって本当に。
花水さん:そうです。意外とつくばとか住まわれてると、イメージないと思うんですけど、猿島ってつくばより南じゃないですか。
――そうですね。
花水さん:なんだけど、冬の間、ものすごい寒いんですよ。
――ええ!?想像つかないですね、あんまり。
花水さん:赤城おろしっていう、群馬の方から吹く西風が、どんどん地熱を奪っていって、天気予報だとマイナス3℃4℃ぐらいなんですけど、おそらく茶園では、明け方のピーク時は、マイナス10℃くらいまでピュっと気温が下がるみたいな。
――すごい、茨城の中でも割と南のほうじゃないですか、ここ。そんなに寒くなるんですね。
花水さん:うん。思いっきりね、平野部なんですけどね、寒いんです。
で、夏はもう39℃とかカンカンで、雨も本当に抜けてくようなとこなんで、暑い。
――暑い。うん。
花水さん:だからかなり、お茶の木にとってはストレスがかかる地域ですね。
――それでも、ストレスがかかるけど、でもお茶がちゃんと育つんですね。
花水さん:そう。緑茶に関してはやっぱストレスって、多少、葉肉っていうんですけど、葉の厚みがこう出るとか、そこからコクが出るっていうのはあるんですけども、緑茶は基本細くよれてるのがいいお茶、みたいなのがあって、ちょっと猿島だと、そこは他の地域に比べると、厳しい部分ではありますよね。果肉が厚くなる分。
――その葉肉が厚くなっちゃうのって、味にも影響するんですか?
花水さん:緑茶に関していうと、渋みとは言わないですけど、コクが深くなるかな。
――ああー。
花水さん:結局葉肉が厚いってことは、熱が通りにくくて、最初に緑茶の場合は、蒸すことで中に熱を入れていくんですけども、そこの技術がすごく難しい。みんな上手にやってますけど、その中で。
――じゃあ、ちょっとコクがあるっていうのが、さしま茶の、この地域の味の特徴なんですかね?
花水さん:だと思いますが。はい。割としっかりとした。楽しめる。
――緑茶の飲み比べもしたことないかもって今思いました。言われてみると。
花水さん:ただねー、これね、この先の話につながるんだけど、緑茶の飲み比べって、すっごいマニアック。マニアックだと思う。
地域によってとか、品種によってとか、そういうのってものすごく見えづらいです。
――それはじゃあ、何に依存するんですか?最終的な味とか。
花水さん:やっぱりその品種の特性が出にくい製造方法だと僕は思っていて。緑茶に関しては。地域特色が出にくい。
――言われてみると、これ静岡ね、これ鹿児島ね、みたいな言われても、昔実家で鹿児島のお茶がよく出てたような気がするんですけど、全然わかんなかったです、そういう話は。
花水さん:そう思います、多分。
――じゃあ逆にいうと、紅茶の方が、地域特性とか、作り手の考え方とか、出しやすいってことなんですか?
花水さん:出しやすいですね。
――この流れちょっと、次の質問に行くんですけど、なぜ緑茶から紅茶にしていったか?のお話。さっきの、子どもたちがすごくキラキラしていたっていうのも、きっかけはそこだと思うんですけれども。
花水さん:うん。きっかけはそこですよ。ただ、今紅茶はめちゃくちゃ力入っていて、どんどん生産量も増やしているんですけども。
先ほどちょっとお伝えした話の中でも被る部分はあるんですが、例えば茨城県の中で「お茶、緑茶はどこで作られていますか?」っていう話を、例えば佐野さんが誰かにしたとして、で、帰ってくる答えってなんだと思います?
――え、茨城県内でお茶作ってるところ?
花水さん:いや、そういうんじゃなくて、何の前提もなく「お茶どころといえば?」って言ったら、どういう答えが返ってくる?
――ほぼ9割、静岡ですよね。きっとね。
花水さん:ですよね。だと思うんですよ。
僕も、ここの商売に入ってすぐに、都内でスーパーマーケットトレードショーっていうイベントに出たんですけど、まぁ他のお茶産地もすごいいっぱい出てるんですよね。
やっぱ緑茶を探している方は、茨城県ブースにそもそも寄らないんですよ。寄ってくれない。
――そっか。
花水さん:だから静岡行って、鹿児島行って、京都行ったらまぁOKかみたいなのが、多分一般的なところ。
――確かに、そういう印象っていうか、そういう頭でね。
花水さん:そう。ブランディングとかイメージとかって、今まで培われてきたものが、茨城はすごく弱くて。
なかなかやっぱり、当然地元のお客さんっていっぱいいらっしゃるんですけども、その先の、次のお客さんを見つけて行こうと思った時に、なかなかここの緑茶っていうものでは、そもそも入口にたどり着けないなっていうふうに感じてるんですよ。
――そうかぁ。
花水さん:ただ、じゃあその同じような質問で「国産紅茶ってどこで作ってると思う?」っていう質問した時に、そもそも「国産紅茶なんてあるの?」っていう人も結構いると思うんですね。
で、産地ってどこだろう?ってなった時に、ポンポン思い浮かぶところないと思うんですよ。
――そうですね。なんか自分がたまたまご縁があって、花水さんのとこで作ってるっていうのを知っているぐらいで、本当にわからないですね。
花水さん:そうでしょう。ということは、そこに、小さい産地の小さい茶園のものであっても、十分商機があるというふうに思っていて。
――確かに。
花水さん:実際に、そこが今、しっかりといろんな形で結びついているっていうのはあるんですね。
ミシュランの星付きレストランと和紅茶の打ち合わせ中
――実際、紅茶を作るっていうところで、目立てたというか、紅茶作ってるからこそ、いろんな引き合いが増えたり、人の出会いがあったりとか、そういう展開がやっぱあるんですか?
花水さん:今ね、本当に、新規でお取り引きスタートは、ほぼほぼ紅茶。あとはほうじ茶。
――ほうじ茶ってやっぱ人気なんですか?
花水さん:ほうじ茶は、ベースとして結構人気になっていると思います。実感としてね。
ほうじにする時に、うちで今人気なほうじ茶は、一番茶って春に摘んだ緑茶の茎の部分を綺麗にして、それを浅煎りで浅く煎ったほうじ茶なんですけど、やっぱり地域特性で茎も多少太く固くなっていくっていうのがあって。
そこが焙じるっていう焙煎のところと相性がいいんですよ。
――へぇー。同じほうじ茶でも、猿島の長野園さんのほうじ茶と、静岡のほうじ茶とって比べた時に、そこは特徴が出やすいっていうことなんですか?
花水さん:出やすいと思いますね。
――ああー。そう言われてみると、ちょっと飲んでみたいなって思いました。
で、紅茶のほうで行くと、どうですか?
最初、ちょっと道の駅で売られているような、ちょっと流行りに乗って作ったようなものが出回っている最中、美味しい紅茶を作っているっていうことで、目立つと思うんですよ。
なにか目立つことで生まれた展開だったりとか、あ、こんなことできるんだみたいな、緑茶じゃなくて紅茶にすると、こういう機会を作れるんだな、こういうことが生まれるんだなっていう、そういうご自身なりに感じてきたことってありますか?
花水さん:本当に、今もお話ありますけども、ミシュランで星ついているレストランさんと、ちょっと打ち合わせさせてもらってたりとか、五つ星のホテルさんにうちの紅茶が納品されていたりとか、そういうのは実際にあるので。
――すごい展開ですね。
花水さん:はい。本当にもう、地域、茨城っていう感じではなくて、全国いろんなところにお茶、紅茶を納品させて頂いてるので、そこは本当にもう全然、商圏が広がったというか。それはありますね。
――そうですね。確かに。緑茶だけでは決して実現しなかった展開ですよね。
花水さん:厳しかったでしょうねー。多分厳しかったと思います。
――緑茶とミシュランって、ちょっとなかなか結びつかないなって。
花水さん:あ、でもね、今結構あるんですよ。そういった、洋食をメインとされている飲食店さんでも、緑茶を食事に合わせてペアリングをしていくっていうのはあって、可能性はなくはないと思うんですけど。
――そっか、すごい今ハッとしたのが、緑茶って埋もれちゃうんだなって。茨城で緑茶っていうふうにすると。
花水さん:ここあんまり、突っ込むと、他の緑茶生産者さんから……(笑)。
――ね。そうかなーと思うんですけど、でもそこがなんかハッとしました。
後から出てきたからこそ、競争していく上で大変だし、地域資源じゃないですか、お茶の木としてみたら。
それを使って、じゃあ何ができるんだろう?ってなった時に、なるほど、紅茶がそんなふうに確かになっていくんだなって、今お話伺いながら、なるほどなぁって思ってしまいました。
花水さん:端的にこれわかりやすく言うと、茨城だけじゃなくて、全国的に緑茶の生産者って、ものすごく厳しいんですよ。
――あ、今そうなんですね。
こういう味だ、と言い切れない多彩な味わいが和紅茶の魅力
花水さん:はい。多分ね、米農家さんと似たような世界があって、数字を、ちょっと今ごめんなさいね、俺、数字持ってたかな。すごい資料があるんですよ。いやこれ、普通にすごい資料って、大した資料じゃないんだけど。
――見ていいのかなって思っちゃいました(笑)。
花水さん:いや全然全然!そういうのじゃなくて。あれ、あったかな。ないかー。持ってくればよかったな。
端的に言います。ここ17年間の緑茶の生産量と、販売金額の平均値を、国が統計を取ってるやつがあるんだけど、販売数量×販売金額の推移の減少率をやると、緑茶のマーケットが、単純計算でここ17年間で約50%近くまで下がってるっていう現状があって。非常に厳しい。
――ええーっ。それは原因はなんですか?
花水さん:やっぱり、飲む方が少なくなってきている。
――単純に。
花水さん:うん。そう。いろんな要素はあると思うんですけども、単純にマーケットがシュリンクして行ってるっていう中での、その商売っていうのが、現状なんですよ。
――確かに若い世代とか、僕の世代でもそうですけど、緑茶って飲まなくなったなーって思いますし、なんか一杯軽く喫茶店で飲むんだったら、某シアトル系のコーヒーチェーンの某所じゃないですか。
花水さん:そうだね。そうだと思いますよ。そうなっちゃいますよね。
――確かにな~って思いました。旅館に行った時に出してもらえるお茶とか、おばあちゃんが昔入れてくれた緑茶とか、そういうのしかもう思い出せないです。
花水さん:やっぱり家庭でそうやって減っていって、しかも飲食店で基本無料で出てくるっていう緑茶があるわけじゃないですか。
――はい。お水の代わりでお茶出てくるって感じでありますよね。
花水さん:そう。で無料で出せるってことは、相当品質的には低いものを出しているところが大半なわけですね。
――そうですよね。
花水さん:となると、それは販売金額伸びないですよね。
――そうですよね。なんか薄利多売で苦しくなってしまうのではっていう。
そんな現状もある中の、美味しい紅茶を作り続けている話も、ちょっと中編くらいで伺いたいんですけれども、ちょっとその前に、あの散々和紅茶言ってるんですけど、和紅茶の定義って。
花水さん:難しいねぇ。俺に聞く?(笑)
――もうなんでも答えてくれるかなって(笑)。
花水さん:まぁまぁまぁ。定義って言っていいのかな。日本国内で栽培された茶樹から製茶された紅茶を総称して、和紅茶とか国産紅茶って呼ぶと思うんですね。
――日本で育てられたぶどうで、日本の醸造所で作ったやつが日本ワインとかって言われたりもしますよね。
花水さん:あぁでも日本ワイン怪しいですよね。
――あ、そうなんですか!?
花水さん:なんか、そう。要は混ぜてても日本ワインになるっていうのがあるから。
――何%までだったらいいよみたいな。
花水さん:そうそうそう。微妙な世界があるからなんとも言えないけど。
――なるほど。
和紅茶に関していえば、日本国内で育ったお茶の木から収穫し、日本国内で製造した紅茶?
花水さん:そうですね。はい。
――逆に言うと、一応そこがクリアされていれば、和紅茶ですよって名乗れるんですね。
花水さん:全然その名乗るっていうか、そう言えますよ。はい。
――味の話も伺いたいなと思ったんですけど、さっきのお話伺ってると、これが和紅茶の味です!っていうよりかは、和紅茶の産地ごととか作り手ごとに、味の特徴が結構変わってくるのかなって思ったんですけども。
花水さん:そうですね。変わりますね。だから本当に茶園ごとにすごいバラエティは豊かなんですけど、一般的に表現として使われてるのが「渋みが少なくて飲みやすい紅茶です」っていうような売り方をしてるところが多いんですけど、僕、個人的にはそういう売り方しているとこの紅茶はやめた方がいいよって思います。
――えっ、どういうことですか?
花水さん:どういうことかっていうと、やっぱり特徴が出せてないから。
そういうぼんやりとした伝え方の中で、飲みやすいから乗んでみたらーみたいな感じなんですけども、100%とは言えないけど、やっぱりそういうところの紅茶って、得てして美味しくない。ちゃんと本気で作っていない紅茶が多い、と僕は感じています。
――自分も、今回のインタビューに先立って、4種類を買わせていただいて味わったんですけど、全部味も香りも個性があって「これが和紅茶の味です」って言えないんですよ。
花水さん:そうですよね。軸作れないですよね。
――そうなんですよ。「長野園さんが作った和紅茶の中でこれが一番好きです」みたいな言い方はできるんですけど。
それがでも、和紅茶の奥深さであり楽しさだなぁって思いました。
花水さん:それって結局、輸入の紅茶に当てはめてみてもそうで、例えばこれがインドの紅茶ですって言っても、インドも産地がいろいろあって。当然品種もいろいろあって。標高差があって。作りが違うものがあって。シーズンがあって。っていう形で、全部バラエティが違うんですよね。
――そうですよね。うんうん。
花水さん:だから本当に好きな方っていうのは、インドだったらダージリンの、何々茶園の、何品種、品種まではあんまり言わないかな、の、こういうネームがついたやつが好きですとか、そういう世界になってくるくらいなんですよ。
――なるほど。じゃあ茶園とか、作り手にファンが付くみたいなイメージですかね。
花水さん:そうそう。基本その、何々紅茶、エリア名で紅茶が美味しいよとかっていうぼんやりとした伝え方って、割と今あてにならなくて、それぞれの茶園の個性が出て来るので、何々園のこういうのが好きとか、そういうのが本当にマニアな方はね、どんどん広がっているかなーと思います。
長野園の和紅茶は15種類以上!
――なんか、ちょっといいなぁって思ったのが、旅に行くような感じで、例えば国内だったらあそこの茶園さんに行って、買ったり飲んだりできそうだなって、想像できるのがいいなぁって思ったんですよ。
こう、ぐるっとこの大雑把な、じゃあ静岡県産とかって言うと、ちょっとぼんやりしちゃうんですけど、さしま茶の猿島の長野園さんのお茶っていうと、あそこに行こう!ってちょっと出かけたくなる感じがあるし。
あと、作り手の存在が結構見えてくるじゃないですか、今のやっぱお話伺ってる感じだと。
そうすると、本当に、話の中で「長野園の花水さんって方が作っててさ」みたいな、友達とかに話せる感じ。そういうのもすごいいいなと思うんですよね。
花水さん:いいっすよね。確かに。
――「さしま茶です」って出すのか「これ花水さんのZ1っていうのがあるんだよ」ってやるのとで、絶対そこでの話題の内容も違うし、そこからその人も「あぁじゃあ今度行ってみようかな」みたいになって、そこからどんなお茶に出会えるかはわからないですけど、なんかそういう、ただ消費するだけじゃない、楽しさが生まれそうでいいなって思いました。
花水さん:そうですね。だから本当にね、小さい茶産地で、小さい茶園なんですけど、やっぱりそれって、ワインの世界だったりとかビールも地ビールがどんどん流行っていて、マイクロブルワリーがいて、それぞれに作り手が、その土地の気候とかに合わせたものを作って行ったりとか、いろいろ工夫されてると思うんですね。
やっぱり嗜好品なので、そういった一つ一つの個性を立てていくっていうのは、僕は常に意識してお茶作りをしているし。
言うたらなんか、職人肌では決してないんですよ、僕は。
――そうなんですね。
花水さん:実は。はい。どっちかっていうと、マーケットインの感じの考え方を持っていて。
――きちんと売って、きちんと届けて行こうっていう。
花水さん:そう。だから、今うちの「SASHIMA CRAFT TEA」シリーズっていうのが、15、16種類くらいあるんですね。
品種だったりとか、シーズンの違いだったりとか。シーズン同じでもちょっとした違いがあったりとか。それを別商品にしてたりとかするんですけど。その全てがやっぱり、味とか香りがこういうふうに違うんですよっていうのを、しっかりと伝えられるものだけを商品にしているんですよ。
――なるほど。お店の中でも、パッケージ並んでるじゃないですか。いや、これめっちゃ迷うなって思いました。
花水さん:迷うんですよ~。多すぎんねん(笑)。
――そう(笑)。でもそれだけ、ひとくくりにできないってことなんですよね。
花水さん:そうですね。
――15、16種類ぐらい、猿島っていうこの地域の、長野園さんっていう茶園で取れるお茶であっても、それだけ分けられるっていうことですよね。
花水さん:まだまだ増えますからね。これからね。
――増えるんですね!?
花水さん:今、品種植わってて、これから取れるようになってくるのもあるので。そう、まだ増えるんですよ。
――これ、次の5番のところにもかかってくるんですけど、ちょっといきなり伺いたいなと思ったのが、そもそもどういうふうに、15種類、16種類っていうふうにパッケージを分けてるんですか?
例えば時期なのか、同じ時期でもちょっと製法を微妙に分けて、最終的に味わってみて、これとこれ違うなとかって分けていくのか、とか。
花水さん:分け方は、大まかにはまず品種。品種が違うとかなり変わってくるので、紅茶にした場合に。
次がシーズン。春摘みなのか、夏摘みなのか。
そこの細分化した中で、製法を変えて、同じシーズンだったり同じ茶樹なんだけど、違う香りを出していくものとか。
あとは、作り手として意識的にやったわけではなくて、気候の中で同じシーズンだけど、2週間違ったらちょっと違う香りが出るものとか。
そういうものがあるので、その辺をロット分けをして出していく。
中には、例えば同じ品種で多少違うんだけど、このブレンドをかけることで美味しくなるので、1本のロッドとして売ってる物とかっていうのもあるんですけども、それは1個1個を見ながらやって行くので。
――もしかしたら、その季節で一回出したら、向こう何年かもしかしたら出てこないかもしれないっていうパッケージもあるわけですよね?
花水さん:あるあるある。普通にあります。
――あぁ、一期一会。
花水さん:普通にあります。そう。
――なるほどなぁ。
花水さん:毎年だって違うんですもん。作ってて。
――そっか。だって年ごとに気候とか、湿気とか、日照時間とか、全部違うわけですもんね。
花水さん:そう。あとは虫の影響っていうのもあるんですけどね。
――この間、買って行った、あの面白いお茶、虫の影響があることでできあがるお茶もあるっていう。
花水さん:そうそう。ウンカっていう小さい虫が、お茶の芽の先端を吸うことで、すごいお茶が防衛反応で甘い香りを出すんですよね。それがマスカテルって呼ばれてて、それが本当に顕著に出てるものとか、出てないものとか。
今年生産したのは、ほとんどその虫でなかったので、そういった系統のものなかったんですけど、去年は結構いたので、そういうその甘系の。あれどうでした?
――あれね、美味しかったですよ。飲むときの感じが、紅茶なんだけどハーブ感っていうのかな。あの香り、風味が新鮮で、すっきりしたというか。あの感じがね、結構飲みたくなっちゃう味わいですごくよかったです。
花水さん:あれは去年のロッドなんですけど、やっぱ1年間経った後に、またより飲みやすくなってるみたいなところがあって。その香りがしっかり際立ってる。
――うんうん。しかもそういう、ウンカっていう虫がいてね、っていう話題込みで楽しく飲めてるんですよね、みんなで。
自分が前からさも知っているかのように、みんなに説明するっていう。
花水さん:うんうん。でも大事っすよやっぱり、その楽しい、伝えたいっていうポイントを作るっていうの、すごく大事だと思う。
――確かに。ただ飲んで終わりだったら、多分お茶何でもいいんですけど、ちゃんと話したくなるとか、なんならchabacoに連れて行きたくなるとかね、美味しいだけではない、紅茶の価値かなとかと思いましたね。
花水さん:うん。
パッケージの色は、日本の「古代色」
――で、そうそう、長野園さんで作る和紅茶の紹介なんですけど、さっき紅茶ってどうやっていろんなパッケージを分けてるのっていう話もありましたが、そのパッケージそのもののことなんですけど、かっこいいんですよね。
花水さん:あぁ、これねぇ。
――かっこいいですよね。お茶ってみんなやっぱりすごい、渋い和風の柄のイメージとか、あとちょっとくすんだ系の緑色とかの印象が強いと思うんですけど、今自分が手に持ってるのって「Z1 Silky Queen」っていうお茶のパッケージ。
白い、専用の密封できる袋に、これはクリーム色っていうのかな、ラベルが貼ってあって。
上から言うと、まずお猿さんが急須を持っているっていう。
花水さん:ティーポットね。
――ティーポット。しかもちょっと鳥獣戯画っぽいテイストですよね。
花水さん:そうです。はい。
――これはやっぱ猿島だから?
花水さん:猿島だから猿ってつくんで、やっぱ猿かなぁみたいなところですね。
――これ、イラストチックなキャッチーなお猿さんじゃなくて、ちょっと筆の質感が残る猿にしたのって、やっぱ意図があるんですか?
花水さん:いや、これは、鳥獣戯画っぽいっていうのがいいなと思ったんですね。日本の伝統っていうところを、一番、最古の漫画と呼ばれてるんでしょ?鳥獣戯画って。
――ああ!らしいですね。
花水さん:うん。だからすごくそれはいいなと思っていて。それであと、このパッケージのクリーム色っぽい色とか、物によって今4色5色ぐらい使い分けているんですけど、全部パッケージに使ってるメインの色って、日本の古代色、和色って言われてるものからピックアップしてるんですよ。
――クリーム色とかじゃなくて、ちゃんと名前がついているやつですよね。
花水さん:そうそう。そうです。ちょっとこれ、何色か忘れちゃいましたけど、ただこれってやっぱり、国産の日本で作られている紅茶だよっていう思いから、古代色を引っ張ってきて使っているのと、やっぱそのシーズンの発酵度とか、味、香りのイメージに合わせて、色をそれぞれ何色か使い分けていて。
でこのZ1 Silky Queenに関しては、抽出した時に明るい感じの、黄色とオレンジの手前くらいな、綺麗な色が出るので、その色味をちょっと表現をしているんですけど。
――そう。この「Z1 Silky Queenって、確かに色こんな感じ、これを彷彿とさせる色でしたし、あと味わいも結構優しくて。
花水さん:そうですね。
SASHIMA CRAFT TEAへの想い
――便宜上クリーム色って言っちゃうんですけど、この色の優しさも確かに、味わい近いなって思いました。
しかもこの、パッケージが、SASHIMA CRAFT TEAって書いてあるじゃないですか。
花水さん:はい。
――和紅茶、じゃなくて、SASHIMA CRAFT TEAっていう。
このネーミングの仕方も、やっぱ意図があってこういうふうに名乗ってるんですか?
花水さん:そう。やっぱりそこまでは、さしま紅茶だったりとか、そういう感じで、このパッケージ変える前はやってたんですけど、例えばその地域名+紅茶って、そこの中には、そこの地域で作った紅茶ですよっていうことだけを表現していて、どんな作りをしていても同じじゃないですか、表現としては。
――まぁ地域のことを伝えているだけですからね。
花水さん:そうそう。そこの中にCRAFTっていうのを入れたのは、そこの作りがしっかりできていますよ、ということを表現するために入れたんですけど、元々の発想はクラフトビールっていうのが、これだけ一般的になっていって、そこのクラフトっていう言葉に対するみなさんのイメージがいいんじゃないかなと。わかりやすいんじゃないかな、伝わりやすいんじゃないかなっていうのがあって、CRAFT TEAっていうのを作ったんですけど。
――確かにCRAFTってつくと、職人というか、クラフトマンシップ。作ることに対しての誇りを感じますよね。
パッケージをリデザインできる人求む!
花水さん:ただこれね、僕、パッケージ気に入ってないんですよ。
――あれ、そうなんですか!?
花水さん:自分でやったんですけど、自分でやったんですけど(笑)。
――え!え?(笑)。
花水さん:いや、これね、難点が1つあって、うちのこのchabacoで、ビャーって紅茶コーナーに並んでる時は全然違和感ないんですけど。
――確かに。むしろ壮観ですよね。
花水さん:例えばこれが、とあるショップさんに行って、緑茶とか紅茶とか、そういったものが並んでる中に、ピョンってこのパッケージがあった時に、紅茶だって気づく人が何%いるだろうっていうのがあって。
――そうか。
花水さん:そう。で、本来だったら、やっぱり日本で売ってるので、英字で「SASHIMA CRAFT TEA」って全部アルファベットで表記してるんですけど、これを「さしまクラフト紅茶」みたいな感じに起こしてあげないと、本当はだめだと思うんですよね。
――あぁ。なるほど。
花水さん:なので、誰かこういうのやってくんないかなって。
――これもう、デザイナー募集案件じゃないですか!?
花水さん:そうそう。思ってるんですよ。
――ちょっとこの、アートディレクションから入れそうな方にね。
花水さん:そうそうそう。うん。結局ね、自分で大体今やっちゃっているので。
――えっ、デザインも?
花水さん:そう。ちょっと甘いところが多々あって。なんかその辺も、なんかね、この話を聞いてる方で、俺やってみてぇなって人いないかなみたいな。
――ね。来て欲しい(笑)。
花水さん:そう。そういうのがあるんですよ。
カッコいいものと売れる物とは違う
――確かに、自分も、これは花水さんの所の紅茶だって、分かって手に取っちゃってますけど、確かに初見で見たら。
花水さん:そう。そうなんです。
――うんうん。かっこいいとは思うんですけど、確かにね。
花水さん:そう。かっこいいものと売れる物って違うんですよね。
――そうですよね。ちゃんと届けないといけないわけですからね。
花水さん:なので、ものすごい今うちのパッケージはマニアックなものになっちゃっていて、大丈夫かな?ってちょっと思ってます。
――そういう話伺うと、結構、実験的に、トライしてるぜみたいな感じも結構、雰囲気伝わってきます。
ちなみに、英語表記が多いと思うんですけども、これって海外の方とかも意識してるんですか?
花水さん:いや全然してないんですよ、これ。全然してないんですよ。
そうしてないんで、あんまり意味ないんですよね(笑)。
――もう、かっこいいの一点突破なのみたいな(笑)。
花水さん:そうそうそう。そこ。だからだめなの。なんとかしないとっていうところ、そこは。
――今のところ、飲んでほしい人を考えた時に、世代とか性別とかでいうと、どういう人を狙っているっていうのはあるんですか?
花水さん:基本的に、一番飲まれる層って、30代40代の女性がメインになってくるのかなと思っていて。
そこの方が日常で、うちのパッケージ全部そうなんですけど、キッチンに置いといて恥ずかしくないようなパッケージングっていう。
――ああー。それ嬉しいですね。
花水さん:はい。そういうところですね。
――ちょっと、食べ物の話じゃなくなっちゃうんであれなんですけど、殺虫スプレーとか、そういうもの。
すぐ使う時にパッと出したいんだけど、パッケージダサいから外に出しておきたくないっていうのがあって。
殺虫剤だけど、見た目かっこいいみたいなのをやっている会社さんが、前あったなぁと思って。
花水さん:へぇー。おお。
――虫対策のものを外にドンって出しておくのもどうかと思うんですけど、でもちゃんと日常の中に置いておきたくなるって、すごくいいなって思いました。
花水さん:そうですね。なんか棚のなかにピュってしまわれちゃうのは嫌で。
――僕も、家に置いてる時出してます。普通に外に。
花水さん:ありがとうございます。
――こうやって、ラベル見えるところをこうやって。並べて。
確かにいいですね。飾っておきたくなるのもあるし、あとライフスタイル誌とかに普通に出てきても全然おかしくないなって思いました。
花水さん:これと違うやつ、この間11月hanakoに掲載していただいたんですよ。
――あ、マジですか!
花水さん:H1。べにひかりのファーストなんですけど。
――へぇ。hanakoはちょっとチェックしようかな。美味しいのはもちろんだけど、ちゃんと映える、日常でこれいいでしょ、って置いておけるのすごくいいなと思います。
花水さん:いやもう絶対大事だと思います。
茶器とかもそうなんですよ。うちで扱ってる茶器って、どっちかっていうとかなりマニアックに寄ってるものが多いんですけど。
でも違うか、茶器は違うな。茶器はやっぱり美味しく淹れられるっていうのは前提で、結構、色で選んじゃう方が多いんですけど、色柄で。
――そうですね、確かに。僕もそれで1回失敗したパターンです。
花水さん:本質的にはやっぱりお茶美味しく淹れる道具だから、ちゃんとしたものを使ってほしいと思って、あまり色柄は関係なく、これはいいよっていうものを置いてる感じなんですよね。
――多分、茶器に迷ったら、chabacoに来て「どれがいいですか?」「お手頃なのありますか?」って聞けば。
花水さん:全然教えます!はい。
――その流れで次行っちゃうんですけど、さっき花水さんもいいフリをしてくれたなって思ったんですけど、美味しい紅茶の淹れ方を、前編の最後に伺おうと思いまして、もう全編だけで1時間経とうとしているんですけど……(笑)。
花水さん:ははは(笑)。長げぇなぁ。
――いい話いっぱいしてくれてますからね。
花水さん:大丈夫ですかね。
――で、お茶の淹れ方、美味しい紅茶の淹れ方なんですけど。
花水さん:これ実際に茶器使ってやります?
――お願いできますか?
花水さん:やる?じゃあ1回ちょっと止めて、茶器とお茶と用意して、リアルにやりますよ。
――じゃあお願いします!やったぁ。
花水さん:はい。
茶師・花水さん直伝、美味しい紅茶の淹れ方
――じゃあ、少々お待ちください、のやつですね。美味しいお茶の淹れ方。
花水さん:紅茶ね。
――そうです。ここ間違えちゃだめでした。
美味しい紅茶の淹れ方。しかも和紅茶です。をレクチャーいただこうと思います。
花水さん:音声なんでね、すごく伝わりにくいとは思うんですけども、今ここにあるもの、ティーポット、ガラス製のティーポットが2つと、茶葉を計量するためのスケールがあって。
――はい。
花水さん:で、さっきちょっとHanakoに出ましたよっていうH1。べにひかりの春摘みの紅茶を持ってます。
基本は、ここの中に、茶葉の量と、お湯の量と、抽出時間っていうのが、大体どの紅茶にも書いてあると思うので、それを見ながらなんですけども、今回2人前淹れるということで、通常2.5gで、170cc、熱湯5分間っていう抽出なんですけれども、これを5gで、360ccで5分間という抽出でやっていきます。
――はい。
花水さん:あれ、タイマーがない、あ、あったあった。
これポイントなんですけど、ちゃんと最初に茶葉を量りましょうってところがあって。
――重要ですね。
花水さん:はい。この茶葉の大きさって、ものによってまちまちなんですね。
よく、ティースプーン1杯分が紅茶です、みたいな表現あるんですけど、それだと本当にうちみたいな、ホールリーフって言って、完全にリーフが大きいタイプのものだと、すごくかさばるので、1杯が少ない。
だけど、粉々になってるやつだと、1杯もっと量が出ちゃうっていうのがあって、それをちゃんと量りましょうっていうのが、まず第一歩です。
――確かに、買って袋開けて初めて見た時に、葉っぱデカ!って思いました。
花水さん:ですよね。だと思います。そのまま戻るようにしている。これも意味があるんですけど。
今、5g計量したものを、丸いティーポットに淹れました。こちらにお湯を注いでいきます。
これもう、大体うちのいつもの、紅茶を出すやり方なんですけど、大体360cc注いで、蓋をして5分間。
――カバーをかぶせるんですね。
花水さん:そう。これ、紅茶を一回で抽出する時には、あったかい、本当に熱湯の状態でしっかりと抽出をしていきたいので、温度が下がらないように、ティーコゼーっていう保温カバーをつけてます。
――ニット帽みたいな感じの形ですよね。
花水さん:そうそうそう。もうあとは5分間待つだけなんですよ。基本的には。
で、ティーポットを2つ用意しているっていうのは、例えばこの抽出したお茶を、1回で注ぎ分けてしまうんだったら、ティーポット1個でもいいんですけど、何回かに分けて飲みますよとか、1人で2、3杯飲みたいですよっていう時には、茶葉をずっとお湯に浸していたままだと、やっぱり濃くなっていってしまうので、濃度が変わるっていうのと、あとは1回移すことによって、このティーポットにいる紅茶の濃度の違いってやっぱあるんですよね、場所によって。それが1回均質化されてちゃんとしたものになるっていうのがあるんですね。
――なるほど!要するに、お茶の葉っぱと、お湯の浸かり具合で、ちょっとここは濃いけど、ここはちょっと薄いみたいな、微妙な差異が。
花水さん:そうですそうです。
――なるほど。そうするとお茶の抽出用と、もう1個のほうもなんか欲しいなって今思ってきました。
花水さん:だから、淹れたことがない方だと、すごく大変なことをしてるように思われるんですけど、実際今パパパッと抽出かけるところまでは終わっちゃったじゃないですか。
――そうですね。
花水さん:で、今iPhoneで、時間5分間見てるんですけども、別に5分間待ってなくてもいいので、ピピッてなったら、そこに行って注ぎ出しをしてあげるだけなので。
ぶっちゃけ僕、コーヒーが美味しく淹れられる方っていうのは、紅茶は100%美味しく淹れられるって思ってるんですね。
――あぁ。そっか、コーヒーもコーヒーで、温度とかね、ちょっと何分。
花水さん:そう。温度、グラムで、1回ちょっと蒸らして、その後ずっと付きっきりでちょっちょっちょっと注ぐわけじゃないですか。それに比べると、紅茶はもっと簡単だよ、シンプルだよって僕は思ってます。
――今そのお湯を注いでいった時も、すごい丁寧な注ぎ方とかってよりかは、もうとりあえず注ぐっていう。
花水さん:そう。ジャボンー。
――ジャボンー、みたいな。あと今、このお盆の上に載っているのは、量りと、抽出用のティーポットと、抽出したものを1回分ける、ガラスのティーポットがあって。このセットがあれば、とりあえずいいんだって思いました。
花水さん:そうです。あとお湯は沸かしたてね。水道水で構わないので、しっかりと沸かしたものを熱湯で使います。
――この沸かしたてっていうのも、沸騰したら、もう時間を置かずそれをすぐ使う?
花水さん:沸騰して2、3分は、お店では置くんですけど、ただそこは通常のケトルで沸かす家庭が増えていると思うので、ケトルで沸かす場合は、そのまま行っちゃって大丈夫だと僕は思ってます。
――なるほど。って考えるとますます手軽な感じがありますよね。……今、何分だろう。
花水さん:あと1分半くらい。
――何気に、自分元々コーヒーばっか飲んでましたけど、花水さんのところでお茶買って以来、朝に紅茶飲むようになって。
さすがに僕、今使ったような量り、茶葉の量りは持っていないんで、ちょっと分量が微妙なんですけど、とはいえ、この入れる工程、1回やると「あ、こんなんでいいんだ」みたいな。
花水さん:そうでしょう?
――すっごいハードル下がりました。
花水さん:そう。意外と簡単なんですよ。で、量りも別に特別な量りを使ってるわけじゃなくて、0.1gまで量れる、通常のタニタのスケールで十分なんですよね。
――ホームセンターとかで売ってるようなやつですよね、これね。
花水さん:そうそうそう。あれで十分なんです。
あとはね、言ってなかったごめん。抽出用のティーポットと、飲む用のティーポット、両方とも1回、お湯を先に入れておいてあげて、あっためておいてあげる。これ結構重要。
――温度管理が重要なんですね。
花水さん:そうですね。はい。
――自分、入れ方は雑だけど、温めるのはやってます、いつも。
花水さん:ははは(笑)。
――へぇー。おっ、まもなく。
花水さん:そうですね。ピピッて来ますね。ピピッて音声で拾ってもらいましょうか。
(アラームの音)
花水さん:はい来ました。
――あっ、ピピッじゃなかった(笑)。
花水さん:はい。鳴ったので、抽出終わったものをドーンと落としていきまーす。
(紅茶を注ぐ音)
――あぁ、いいなぁ。色もすごい綺麗です。
花水さん:ここは本当にサーッと落としただけです。
ネットでとかで見るとね、1回ティースプーンでかき混ぜましょうとか、そういうのがあったりするんですけど、うちは基本このスタイル。もうティースプーンでかき混ぜない。より楽な方法。
なんでかって言うと、ひとかきするっていうのは濃度感を一緒にするためっていう感じだと思うんですね、目的は。ただ、それをやることによって茶葉から余分な雑味、えぐみとかを出してしまう恐れがあるので、特にそういうことはせずに、ストーンとこうそのまま、落としていきました。はい。で、以上、終了です。
――むしろ本当に、それでいいんだっていう感じがします。ありがとうございます!
じゃあ、早速。
花水さん:どうぞ。
――いただきます。さすが、香りの時点ですごくいいです。
花水さん:これね、結構僕が気に入ってるやつなんです。
――せっかくなので、今回淹れてくださったお茶の紹介を改めてお願いしたいです。
花水さん:はい。SASHIMA CRAFT TEAの、H1っていう銘柄なんですけど、今年もプレミアムティコンテストで四つ星を獲ってるロットで、べにひかりっていうすごいマニアックな品種なんですね。
これ「べに」って付いてるのが、紅茶用に日本で作られた品種なんですよ。べにふうきとか、べにひかりとか、べになんとかって、何種類もあるんですけど、その中のべにひかりっていうもので。
インド系の品種と、中国から来た品種と、あと日本で育種された品種の3品種を掛け合わせたハイブリッドな品種になっていて、飲んでいただくと、すごくその味わい、香りが、バラエティに富んでるんですね。
――うんうんうん。
花水さん:今年のロッドは、クチナシみたいな花の香りがこう入っていて、その後に、後口、アフターノートって言うんですけど、メンソールみたいなスッとした感じが、そこを引き締めて行くみたいなタイプのものになりますね。
で、おすすめしているのは、バームクーヘンみたいな、そういったものと合わせていくのをおすすめしてます。
――そっか。香りがこれ、華やか。
花水さん:そうなんですよ。華やかなんです。
――いいな、ずっと嗅いでいられる。
確かに、ごくっと飲んだ後の感じ、キュッと締まる感じ、確かにこれいいなぁって思います。今回、紅茶を買わせていただいて、そもそも4種類も家で飲むってなかったんで。
花水さん:ないっすよね(笑)。
――うちに、パッケージ4個あるんですけど、今の話でも聞きながらそうだよなって思ったんですけども、香りはもちろん、まず口に入れた時と、飲み込んだ後、結構3段階くらいで楽しむポイントがあるんだなって思いながら飲んでいました。
花水さん:うんうんうん。素晴らしい!素晴らしい。
――いやー、僕、食レポとか全然できないんですけども。
花水さん:違いがわかる男になってますね。
――わかりつつある男です(笑)。おかげさまで。でもこれ、きっと自分が家で淹れると、こうは行かないんだろうな、まだ。
花水さん:行く行く!簡単ですよ本当に。
――あと自分、量りが必要なのかなって思いました。
花水さん:うん。そうですね。量りは絶対にあったほうがいいです。
――ティースプーンで、みたいな話もありましたけど、確かに長野園さんで作る和紅茶って、お茶っ葉のサイズ全部違いますよね。
花水さん:うん。
――だからこれ、絶対密度によってバラけるなと思いました。
花水さん:そう。あ、抽出したポット向こう持って行っちゃったけど、うちの紅茶って基本的に、葉っぱがそのまま抽出すると、ふわっとこう戻るように作ってるんですね。
それって、見栄えだとか何だとかっていうのではなくて、お茶の葉っぱって作った後も、水分の出し入れをしてるんですよ。生きてる。言うちゃ生きてるんです。
――んーそうか!うんうん。
花水さん:うちの紅茶の場合は、4月の後半から7月の中旬ぐらいまで、ずーっと作っていくんですけど、販売のスタートを9月にしてるんですね。なんでかって言うと、作った当初はどうしても茎の部分の、本当の奥の方に、少ーしだけ水分が残ってしまうんですよ。
それが、青みとなって、本来お茶の葉が持っている香りを、ちょっと阻害してしまうんですね。
ただ、こういうちゃんと戻る作りをしていることによって、その後の熟成期間で、水分の出し入れ、移動があって、時間が経過することによって、そこの青みが抜けて行って、本来の香りが出るタイミングが9月。
ただ、物によっては、本当にそれでも出なくて、その先1年間経って、美味しくなるものもあるので。
――へぇー!
花水さん:そこから販売するとかね。で販売してるものでも、販売当初よりも、この時期のほうが、より香りが経ってくるとか。そんな感じで、結構いろいろ、ポイントが結構あるんですよ。
――お茶って、取ったらどんどん製品化されていくものかと思っていたら、そういう1年寝かすみたいなこともあるんですね。
花水さん:基本、緑茶の場合は新茶って言って、作りたての香りがいいって言うんですけど、紅茶に関してはちゃんとした作りのものであれば、2年経っても3年経っても、熟成による味わい、香りの変化を楽しみながら、美味しく飲んでもらえる。
――へぇー。意外すぎる。あと本当に葉っぱの形でいうと、Z1。これ本当に茎のあたりまで入ってますよね。
花水さん:はい。
――これ、衝撃でした。こんなお茶の葉っぱあるんだ、紅茶あるんだって思って。
確かに、お湯入れると、葉っぱがふわーっと開くじゃないですか。それを見て、今まで小指の爪ぐらいになった、いわゆる緑茶とか、ああいうやつしか知らなかったので、そういうのを知っただけでも、すごい発見だなぁと思って、面白かったです。
本当、紅茶の話マジ尽きないんですよね。
花水さん:全部理由があるもんね。
――1回ちょっと、紅茶の美味しい淹れ方も教えてもらいつつ、ぜひ聞いた方はそれを参考にしつつ淹れてもらいたいんですけど、ちょっと1回ここで切って、次の中編の話に進みたいなと思っております。