2-3 オトナの役割
-高校生との三者面談を通して考えたこと-
今は高校2年生の担任。修学旅行も終わって,今は三者面談の時期です。今まで「進路未定」と書いていた子が,急に「小学校の先生になります!」と言ってきたりして,高校生たちの変化を見るのは,とてもたのしいです。大学に進学する子。専門学校に進学する子。就職する子。芸人やアイドルになりたい!と言う子。多種多様です。ウチのクラスには,3人の子が「学校の先生になりたい!」と言っています。(小学校・中学国語,中学国語)
●夢?現実問題?
そんな話を理科準備室で隣に座っている同僚の先生に話したら,「そういう子にまず言いたい事は,勉強できないとなれないよ,って言いたい。過去も言ってきているね。だって教員採用試験があるじゃない?それに,過去の卒業生のxxもxxも,結局は教員になっていないし…」,とか,別の同僚の先生は,「卒業生が毎年教育実習に来ているけれど,実際なっている人はほとんどいないよね。だって倍率高いでしょ」なんて言います。
ボクは最近採用試験を受けたから,「そこまで倍率は高くないんじゃ…?」と思って調べてみたら,今年の「札幌市・小学校」の倍率は2.3倍。そこまで高くないじゃなーい。
その先生に,「最近はそこまで高くないみたいですね」と伝えたら,「でも教育学部が主の〇〇大があるじゃなーい。派閥みたいなものもあるのよ~。それに,ウチの学校,学力は平均以下の学校よ」なんて言います。
そんな言葉を聞いて,この前,学校で行われた「社会人講話」で地元企業の植松努さんという方が話していた言葉を思い出しました。
●つぶすより,応援したい
一方,職員室でボクの隣に座っている先輩体育教師は,「担任を見て,「オレも目指せるな」なーんて,ハードルの低さを感じたんじゃないの?(笑)」とか「ウチのクラスなんて,教員になりたいやつなんてゼロだよ。教師なんて絶対やだね!なんて言ってるよ(笑)。担任の影響なんじゃないの?」なんて冗談を言ってきます。この先生とは,「また職員会議寝てたでしょ」とか,「その生徒に朝のホームルームやらせたら?高野先生よりしっかりやってくれるよ」(←すごいステキな案!)など,普段から冗談を言い合う仲。でも,夢をつぶすより「アイツならオレらより良い教師になるよな~」なんて言える方が,よっぽど健康的な気がしました(もちろん,現実的なアドバイスをする大人も大事でしょうが…)。
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国語の中学校教師になりたいと言ってきたバレー部の女の子は,三者面談の時に,はじめて親を前にして「今,自分がなりたいと思っているのは学校の先生だ」ということを伝えたみたいです。どうやら,自分の学力や生活態度を考えたら,「学校の先生」なんて将来の夢は,親には言い出しづらかったみたい。
でも,中学生の時期と同様,高校生だって第二の思春期?ってカンジがするので,親と将来のことをまったく話さない家族だって,ちらほらいて当たり前なのかもしれません。(ボク自身,高校の頃は母親とほとんど口を聞かなかったので…)。それに,「アンタはまた勉強しないで部活ばっかり~」なんて親に言われたら,なるのに勉強がとても必要そうな「教師」という仕事は口に出しづらいかも…。そういう意味では,三者面談は<親と子どもが話をするきっかけの場>。そう考えると,予定の時間が大幅に過ぎたって,寛容になれる…(気がする)。
●身近なオトナの役割
その子に,「なんで中学が良いの?」と聞くと,「だって高校は,来たくなかったら来なくてもいいでしょ。本当に嫌なら退学するし,欠席増えて単位がとれなくても自己責任でしょ。中学は義務教育。退学もない。そこがいい」との事。彼女はもしかしたら,「どうやったら学校がたのしく過ごせるか」とか「悩んでいる子とは一緒に寄り添いたい」みたいな事を考えているのかもしれません。
ボクは,『中学教師・おもしろい』(中一夫編・ほのぼの出版)というガリ本を「朝読の時間,読んでみない~?」と貸してみました(蛍光ペンが引っ張っていたり,付箋がついていたりと少し恥ずかしいけど(汗))。中一夫さん(東京・中学)が編集した本で,ボクが教師になる前,よく参加していた昭島サークルの人たちがたくさん登場します。(今でも在庫はあるみたい。売り場でも見かけます。オススメ)
でも,なぜボクはその子に本を貸したのでしょう?うまく言えないけれど,「学校の先生って忙しいってニュースでやったりしているし,厳しく指導…みたいなイメージあるけど,たのしく教師している人たちがボクの仲間にたくさんいるよ。子ども達と共に過ごしているよ」みたいなことをなんとなく伝えたかったのかな。
貸した所,その子は,「この本,面白いよ」と伝えてくれました。朝の時間,毎日読み進めています。「仮説実験授業」という言葉はわからないかもしれないけれど,きっと「中学教師,たのしそうだな」なんて思ってくれるんじゃないかな…。どうかな。
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そんな事を考えていたら,「学校の先生になりたい!と思う高校生や大学生が「教師って面白そうだな」と感じられそうな機会が与えられたらいいな…」なんて思ったりします。「なりたいな」という夢・意欲があれば,現実問題もどうにか乗り切ってくれるんじゃないかな…。万が一乗り切れなかったとしても後悔はしないんじゃないか。
いや,教師と言う職業に限らず,「仕事するってたのしそうだな」「大人になるの,悪くないものだな」というカンジをできれば伝えたいな。(←そのためにはどうしたらいいのかな? …例えば,<たのしく授業をすること>(たのしく仕事をしている姿を見せること)かな…)
どうしても,現実問題としての「倍率」とか,「学力」とかが目にいっちゃう。もちろんそれも大事だけれど,一番身近で働いているボクたちオトナの役割はそういう,<生き様>みたいな事を見せることも大事なんじゃないだろうか…。そんなことを,三者面談を通して思ったのでした。
※ ところで,この生徒を含め2人の生徒に,隣の同僚先生の冗談を本気にして,「朝のホームルーム」をお願いすることにしました。毎日のボクからの連絡にメリハリがつくし,生徒自身も,こちらがいろいろと考えなくても「もっと全体を見なくちゃ…」「声が小さいかも…」など振り返りを行ってくれました。朝の時間を代わりに頼んだだけなのに,「先生,良い経験になってま~す」なんて言われると,「えぇ~!こんなんで喜んでくれるんだ~」とボクもウレシくなったのでした。
(追記)
「生き様を見せる」という話につながるかどうかわかりませんが,先日,進学コースの物理(高校3年生,週4時間・6人)の授業が終わり,最後の試験で男子生徒の一人がこんな感想を書いてくれました(下記)。ボクは「自分の生き方はこうだ」なんて事は言葉にして伝えたつもりはないけれど,授業の仕方・様子から,彼はボクの<生き様>を感じ取ってくれたのカナ…?なんて思ったりしました(キザかな…)