2-11 (付録)ボクの進路メッセージ(後編)
通信5:早めに決めたらエラいのか。
石狩翔陽高校の生徒たちの特長は「将来の夢が決まっている人が他の高校より多い」ということです。総合学科だから,という理由もあるけれど,「勉強以外の道を早々と決めた(決めてしまった)」人も多い。そんな高校に勤務しているからそれがフツーに感じてしまっているけれど,ボクが高校生の頃,将来の夢が決まっている同級生はごくわずか。もっと言えば,大学で何を学びたいか,よくわからないままなんとなく学科の名前で進学する人もいました。その分,大学でいろいろ試して決めよう…というわけです。
ボクも含めたそんな人たちは,みんな一般受験。勉強が大変・日程も2月…。その代わりに,卒業後のことなんか全然考えなくても大学進学にチャレンジできました。
公募推薦は一般受験に比べてメリットもあります。一方で,「早めに大学での過ごし方や卒業後を考えなくてはならない(決めなくてもいいけれど)」という苦悩があります。今,将来が明確に決まっていなくたって,それが高校生のフツーです。周りに流されず,自分のペースで考えればいい。
将来の夢を早めに決めた人がエラいわけではありません。もしエラかったら,転職して教師になったボクはどう考えればいいのでしょうか(笑)。
…とはいえ,「公募推薦なんだから面接もあるし,考えなくちゃいけないでしょ」とも思うでしょう(汗)。だから,「とりあえず」「17~18歳の今の自分で考えると」の話で面接は乗り切ってしまえばいいと思うのですがいかがでしょうか。
…こんなことを書いていたら,北海道の教員採用試験を受けた時を思い出しました。面接で,「行ったことない土地で働く・人間関係を作っていくことに魅力を感じます」なんて,適当な台詞を話したことを…(汗)。
通信6:短所はホントか。
たとえば,ボクの短所は「他人(特に年上)に頼るのがニガテ」ということです(だから高校生(年下)を相手にする仕事を選んだ…という)。だから,面接練習をたくさんの先生にお願いしている姿を美しい(憧れる)と思っています。
では,その「すぐ他人には頼れない性格」というのは,短所でしょうか。当然「短所」とも思えるけれど,だからこそ得られたものもあります。高校時代までは1冊も本を読まなかったボクが,たくさん本を読むようになれたことです。人に頼りづらい部分は本に助けてもらったわけです。家に何百冊も置いて,本に埋もれそうな生活。だけれど,何の躊躇もなく本を買うことができるし,たくさんの知識を得ることができました。
「すぐに学習内容を覚えられない」という短所だってそう。短所に感じるけれど,そんな自分と向き合っていたおかげで,「記憶術」や「マインドマップ」など,様々な場面で活用できる技術に出会うことができました。(それに,いとも簡単に「ニガテな人の気持ち」がわかる気がします)
面接の練習をしていたり,日常生活を送っていると,「あの人はうらやましいなぁ」とか「自分はこんな短所があるなぁ」と思ってしまいがちです。けれど,視点を変えれば,短所だって長所になるはず。一歩引いて考えてみて,それでも気づかなければ友達や先生に聞いてみて,自分の魅力に気づいて欲しいなと思ったのでした。(…と書いてみてふと思う。書いている自分の部屋は本に埋もれて足場も…という状況だけれど,部屋を整理できない,という短所は何かの長所にならないのだろうか…笑。うーむ。)
通信7:面接準備の悩みは。
ボクは,面接の準備(自己分析)は,ホントは好きじゃありません(おいおい…)。なぜなら,「誰かのための行為」と感じづらいからです。心理学者フランクルは,著書でこんなことを述べています。
つまり,「何かのため」「誰かのため」であれば悩む価値があるけれど,自己目的ではダメ…みたいなカンジでしょうか。だから,一見,「自己目的の悩み」のように感じてしまう「自己分析」が今でもボクはニガテなのです。
そういう意味では,「教師」という仕事の悩みは,悩みの質としては最高です。つまり,「誰かのため」が相当わかりやすい。相手の笑顔,相手のありがとうが<直接>届くわけだから…(世の中の仕事は,広く考えればもちろん誰かのための仕事。だけど,それが<わかりやすいか>でいえば,職種によって様々)。
そこで,少し傲慢と思っても,ムリヤリこんなことを考えてみましょう。
キミが「大学に入る」なり,「教師になる」
…と,「あんな人が喜ぶ…」。「世の中のアレに役に立つ…」,
というのを考えてみたら…。少し悩む価値が出てきませんか?(思いつかないかな?)。また,フランクルはこんな言葉も残しています。
うーむ…。深すぎて…(汗)。でも,ボクなりに解釈すると,「相手はいる。アナタは人生から求められているんだよ」ということだと思いました。
ここまで書いて,「何を言いたいのか」という気分にもなってきました(笑)。ここまでの話と,公募推薦や面接練習の話をボクなりにつなげてみると…
①「面接練習のための振り返り」はキツいよね~
(だって自己目的の悩みっぽく感じるから)
②でも,自己目的じゃ~ないよ,だって「誰か」「何か」がアナタを求めているんだもの!
③そんなのいないって?違うよ~。具体的な相手が思いつかなくても,「人生」からアナタは求められているんだよ~。
④でも,そうは書いてみたけど,ボクはやっぱり自己分析はニガテだなぁ…(笑)。そういう意味では,教師の仕事ってラッキー!「未来ある子どものため」ってはっきり感じられるし,直接反応も見れちゃうもんね~
なんだか,今回の通信は何を伝えたいのかよくわからない文章になってしまい…(汗)。最後に,「でも,直接感謝が伝わらない仕事だって(こそ)大切!」という印象を受けたMr.Childrenの『彩り』という歌詞から…。
通信8:苦労は余計か。
つい,「AO推薦は早く決まっていいなぁ」「指定校推薦があれば良かったのになぁ」と思ってしまうのではないでしょうか…。だって,心配要素は少しでも少ない方がいいものね…。
でも,この苦労だって意味はある。わかりやすい例で言えば,高校の先生になった際に,志望理由書や面接で苦労する生徒たちの気持ちがわかるはず。万が一,一般受験を体験することになったとしたら,それだって,一般受験する子たちの不安や努力の仕方を伝えることができるはず。
また,「努力した上での成功体験」と,「あっという間に手にする成功体験」では,自分への自信度が違ってくるんじゃないかな…。
ボクの例で言えば…
みたいなカンジでしょうか…(もっとたくさんありそうだけれど)。
公募推薦のために,たくさん準備している今の時間。それは間違いなく無駄にならないはず。それは「今この瞬間」はそう思えないかもしれないけれど,後から振り返れば「あの経験があったからこそ」と思う何かになります。あと2日。あっという間ですね。
Coffee Break ~ちょっとよりみち~ -伝えたい想い-
今紹介している3人の推薦入試の後,別のクラスで一般受験にチャレンジする金井さんという子がいました。うちの学校はAO入試&推薦入試で進路を決める子がほとんどなので,一般受験(2月)を受ける子は一桁ぐらいの人数。ボク自身,一般受験で志望大学に合格したので,カナさんに共感を感じます。その子と帰り道一緒になり,進路や受験の悩みについて聞いていたところ,「先生の話とても良かった!」というホメ言葉!その後,カナさんとは受験が終わるまで定期的にLINEでやりとりするようになりました。上記で紹介した「中さんの進路通信」や「ボクの添えページ」もPDFで送ると,金井さんからウレシイリアクションが都度届きました(後述)。自分のクラス同様,他のクラスの子にも,進路で不安や緊張を感じている子は多くいます。そういった子たちにも寄り添えるような教師でありたいなぁ~と思うのでした(そういった子たちにすぐ届けるメッセージとしても,本『たのしい進路指導』はとってもいい!)。