2-8 たのしい受験指導への道(中編)
●面接をどうする?(準備~練習しはじめ)
試しに「志望動機」 , 「どんな大学で学び,どんな大学生活にしたいか」「大学卒業後の進路,何になりたいか」 , 「高校生活で頑張ったこと」を書いてもらいました。
そういう進路を希望したのか」というざっくばらんなおしゃべりをするように。同じ大学,同じ職業を目指す生徒たちでも,そこにそれぞれの個性が出てくる。それは,自分自身で「こういうのやり たかったんだ」と「新発見」してくれる時もあるし,(ジョハリの窓で言えば,右側あたりの話かな?)「考えが整理された」と話す子もいます。(その聞き取りメモは汚いかもしれないけれど、コピ ーして渡すように。)
また,ボクはちょうどこの頃「キャリアコンサルタント」という資格の勉強をしている頃でした。その資格の説明の中で,「キャリアコンサルティングとは」という文章を紹介します。
面接練習もこれに近い部分を感じました。面接練習の初期のころは,「適切なアドバイスをする(業界用語で積極技法という)」というよりも,今までの経験や自分の今の考えを整理してあげて,どうして今の進路を希望するのか明確にしてあげる…。そんなことができたらいいな。ちなみに,カウンセリングの場面でも,積極技法の使い方について,以下のような注意点があるようです。
この「積極技法の注意点」はまさに「教師の押しつけ」を語っているとボクは思いました。カウンセリング技法なんてまだまだよくわからないけれど,少なくとも「合格させたい」「失敗させたくない」「迷わせたくない」という教師の善意の想いから生徒の主体性を奪うことだけはしないようにと思ったのでした。
こうして, キャリアコンサルティングのあり方をかじったり,実際に生徒と面接の練習をし始めて,ボク自身の「面接指導の印象」が変わっていくことを感じました。当初は,「面接指導=生徒をいかに鍛えて,どんな面接官だろうと対応できるように!!」なんて印象がありました。でも,面接指導だって進路指導と一緒。「鍛える」というよりかは,情報を提供してあげて,生徒がうまく言語化できない自分の想いや気づいていない<本人の良さ>や<興味関心があること>を一緒に見つけていく…。面接練習でも,最初の頃はそんなことができたらいいんじゃないかな(終盤は違うのかもしれないけれどネ)。
そんなことをぼんやり考えていたら,進路指導部の先生が教室の前を通りかかり,「志望理由が甘いなら,他人や情報誌もどんどん参考にしていい。たくさんの情報の中で,自分が気に入った,しっくりくる部分はマネしていいんだ。それを自分の言葉で語れればいいんだ」とアドバイスをしてくれます。ダメだしするのではなくて,こうやって情報提供,参考にする話をしてくれる先生のことを,生徒たちは「口うるさい先生」とは思わず「頼りがいのある先生」として好きになるようです。
●面接をどうする?(実際)
おおよそ志望も明確になってきたところで,本格的な面接練習がスタートです。でも,ボク自身は大学受験に向けた面接練習をしたことがありません。どうやって練習していくのが良いのかわからなかったけれど,資格試験に向かう時の勉強方法と同様,まずは過去問を見てもらい,「自分の現時点」と「当日の面接」の差を感じてもらい,何が聞かれるのか,何が準備として必要なのかを感じてもらうことにしました。といっても,ボクが全部用意するのは過剰サービス。ボクは進路指導室に過去問があることをお知らせして,自分が受ける学科の情報をコピーしてくることを勧めました。素直に従う3人。その間に,ボクも過去問やアドミッションポリシーなんかを調べて,一覧にして両面の紙に印刷。そして透明ケースへ。
そんな形で資料を用意してあげると,自然と「透明ケース(過去問一覧)」を片手に,面接準備をし,他の先生にも面接練習をお願いしに行く光景が見られました。きっと手ぶらでお願いするよりも「過去問一覧」をパっと渡して,「お願いします!」と練習につきあってもらう方が頼みやすかったんじゃないかなぁ…?
(それに,他の先生からすると,「おっ!ちゃんと準備してきてるじゃないか」なーんて思ってくれたりしたんじゃないかなぁ…?なんて予想。 もしくは願望 笑)
●突っ込む想い
ボクが面接官をすると,どうしてもたくさん「突っ込む」のです。自分でも自覚しているのですが,もっと知りたくなるのです。「どうしてウチの大学?」→「他じゃダメなの?」→「どうして教師?」→「きっかけは?」→「どんな教師になりたい?」→「そのためにどうする?」・・・(endless)。
だから,ボク以外の先生とやると,生徒たちは大体「高野よりあっさりしている,ラク」といいます(笑)。その「突っ込み」は,「自分が知りたいから」というのもあるけれど,まだ本番直前じゃないときは「面接を通して自分を考えてもらいたいなぁ」と思ったのでした。「キツく練習!」というよりも,友達との雑談で考えが整理されるように,「面接を通して考えを整理してもらえれば」なんて想いを込めて質問しまくります(でも圧迫面接したいわけじゃないので,キツくならずに 汗)。そんな面接練習の際に聞いた質問,その返答はコピーをして生徒へ。「こんなの読めるのか?必要なのか?」と思いながら渡していたのですが,ある生徒は「とてもよかった。試験場に持って行った」といいます(笑)。自分を振り返る素材になっているようです(文字を丁寧にゆっくり書く教師にはマネできない…!?汗)。
●担任は一人だから
担任はボク一人です。また,放課後に別の仕事だって入ってくることもあるでしょう。ボク自身でいえば,卒業アルバム関係の仕事が放課後によくかぶっていました。だから,うまくスケジュールしないと「ほっとかれている」と思う子だっているかもしれません。
事実,ある女子生徒が「別の子を対応している間に途中で帰る」ということが何回か続いたことがありました。別の日に個別に呼んで話をしたら,「先生,私のことメンドクサイとか思ってるんでしょ」と切り出されたのでした。話をして誤解は解けましたが,「こんなことはもうあったらやだな」と思い,「何曜日に誰と面談を何時からする」というのが一目で分かるようなホワイドボードを作ったのでした(ホワイトボードマグネットを四角く切って名前を書いて貼り付ける。総計200円で完成!! 笑)
これを作ることによって,相談してくる子も増えました。やはり,面接練習・面談を教師に相談する,という能動的な行為は勇気がいるもの。先生の予定は…とか気にする子もいるだろうし。そのハードルをホワイドボードによって下げられた気がします。それに「先生,予定どうなってる?」と聞かれたりもめたりすることもなくなりました。けれども,学級40人を均等にフォローするのはムリがあります。そもそも,相手だって,フォローされたいのかどうかわかりません。だから,こうやって<相談できる環境>を整えてあげることによって,逆に相談しに来ない子は「自己責任でがんばれ!」という気持ちでいました(ちょっとキビしいかも…汗,)。
一方で,他の先生に頼みに行く子も増えたような気がします。担任のスケジュールがあいまいなよりも,目に見えてこの日は空いてる。この日は無理,というのが見えた方が,いろいろと行動に起こしやすいのかもしれません。
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