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久しぶりに自然なスタンディングオベーションを見た【朝倉康心プロ・麻雀最強戦2024】
こんばんは。
場末フリー雀荘出身の田ノ倉です。
めちゃくちゃ今さら?って感じの話ですが、
先日、Xを見ていたら朝倉康心プロが息子さんを収録現場に連れて行ったみたいなポストが目に入ったり、
いま一気見している今週のMリーグでちょうど朝倉プロが解説されたりしていて、
なんとなくやっぱ書こうかと思ったのでかきます。
最強戦2024のファイナルも今日はじまったことだし。
何週間か前、1ヶ月くらい前かな?
の週末にやっていた麻雀最強戦2024ザ・リベンジ。
見事優勝したのは松本吉弘プロで、
これをきっかけにMリーグでも調子を戻してくれるといいのですが、
どうなるでしょうか・・・・
と思ってたのですがMリーグではまだダメみたいです。
いままでABEMASを親の仇のように悪口ばかり言っていた場末雀荘のおじさんたちが、
珍しく
「さすがに松本キツイなあ・・・あれはいくらABEMASでもちょっとかわいそうだわ」
みたいな話をしていました。
で、ぼくはこの放送を雀荘というか、
正式には雀荘じゃないんですが、
とにかく麻雀が打てるところで見ていたわけです。
そこには他の客もいて、
麻雀も打ちながら、
わりとみんな放送には注目しながら打っていました。
で、今回、元Mリーガーで初代天鳳位の朝倉康心プロも出ていたのですが、
無事予選を突破し、決勝まで進出していました。
その朝倉プロですが、
今回はけっこう気合い入っているように見えまして。
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打牌内容がかかり気味だとかそういうことではなく、
所作面や表情面から感じたことです。
不安な感じやおどおどした感じはあまりなく、
やってやるぞみたいな決意に満ちた表情をしていたり、
実況の日吉プロも言っていましたが、
リーチ後にツモ牌を画面に十分な時間示すことなくツモ切ってしまったり。
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そんな朝倉プロですが、
決勝ではあと一歩というところで和了牌に恵まれず、
オーラス一本場の時点で、
・ツモ:マンガン以上
・出和了:跳満以上
が優勝条件となっていました。
しかし親番の松本プロがツモ和了りで連荘し、
オーラスニ本場
・ツモ:跳満以上
・出和了:倍満以上で条件なし、松本プロから跳満以上、リーチ棒が出れば跳満以上誰からでも
という優勝条件に。
一方、2着目となった谷井プロは中が暗刻で、
トップ目の松本プロとは2900点差。
谷井プロの条件成立はわりと容易で、
朝倉プロにはあまり時間がない状況です。
この時点で、その店の中では
「松本プロか谷井プロの優勝でしょ」
という空気が流れていました。
そんな中、
赤なし麻雀で出和了跳満の手なんかそうそう都合よくできないっしょ
という多くの視聴者の予想を裏切り、
朝倉プロが見事カン2ソーを嫌い、
リーチチャンタ三色ドラ1の出和了跳満の手をテンパイ。
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ツモるか松本プロから出アガりで逆転優勝です。
「おい、朝倉が手ぇ入れたぞ!」
店内で誰かが発した言葉から、
客たちの注目は再び自分の麻雀から最強戦の方へ戻ります。
店内だと実況解説の声がよく聞こえないので、
詳しい点数状況を見るために席を立ってモニターの方に近づいてくる客が数名。
これに対して、真っ向勝負を挑む松本プロ。
この形でリーチ。
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「松本かぶせてきた!」
「リー棒出たから朝倉どっから出ても逆転!アガれば逆転!」
と盛り上がり始める店内。
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気合いの入った朝倉プロの表情に、
朝倉プロ応援の声が多数漏れる中。
数巡のめくり合いののち、
朝倉プロが7pを掴んで松本プロに放銃となってしまいます。
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一気に店内には
「ああ~~~!!」
というため息が漏れ、
いよいよ優勝は松本プロだな、
ということになり、
各々自分の席に戻る客たち。
次局、松本プロはさらに谷井プロから直撃し、
かなり盤石の状況となります。
「結局またMリーガーかあ」
と、流れている試合をもはや消化試合かのように言う客も出てくる始末。
誰もが消化試合かと思っていたオーラス4本場。
三倍満ツモが条件の朝倉プロに、
まさかのこんな手が入ります。
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リャンシャンテンくらいのときに、
ぼーっと見ていた客が
「うわ!朝倉チューレン(九蓮宝燈)あるよチューレン!!!」
と騒ぎ始めたのをきっかけに、
またぞろぞろと客がモニター前に集まり始めます。
点数状況を見て条件確認のためと、
そもそも遠くからだとマンズの清一色は何がなんだかわからないからです。
最終的なテンパイ形は九蓮宝燈にはなりませんでしたが、
ツモって一発か裏ドラが絡めば三倍満というテンパイに。
(12月24日追記:ツモれば一発か裏ドラは不要でした。11翻、足ります。)
リーチ・ツモ・清一色・一気通貫・一盃口。
これに裏か一発があれば三倍満。
(12月24日追記:裏も一発もいりません。)
なんなんそれ。
「朝倉来た!朝倉来た!たぶん一発か裏で逆転!」
(12月24日追記:こいつのせいでみんな勘違いすることに・・・)
と店内は再び大盛りあがりとなり、
誰一人として和了牌が山に残っていないことにも気づかず、
「ダメか~!あと1巡!」
とかみんなでやっていました。
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最終ツモが七萬じゃなかったときには、
さっきのハネツモ条件のときの2倍くらいのため息が店内に轟くことになりました。
たまたま最終手がメンチンだったということもあり、
立ち上がってモニター前で釘付けになっていた客が多数派だったということもありますが、
流局後、座っていた客も混じって立ち上がり、拍手喝采。
久しぶりに生でスタンディングオベーションのようなものを見ました。
なぜこんな盛り上がったのかというと・・・・
正直よくわかりません。
南3局のめくり合いくらいから、
なんとなく朝倉プロ応援勢がわらわらと生まれてきた印象でした。
やっぱり逆転が見たい、っていう思いがみんなうっすらある中で、
単純にこんなに見事に繰り返し逆転手が入ったこと、
しかも最後は三倍満という珍しい条件クリアの手、
そして今回はとくに応援したくなるような必死さが朝倉プロから伝わってきたこと、
そういう色々な要素が絡み合って、
スタンディングオベーション、ということになったのだと思います。
優勝した松本プロの気合いももちろんすごかったのですが、
僕らの中では今回のMVPは朝倉プロということになりました。
そもそも朝倉プロって発信している内容的にはめちゃくちゃ自己評価低い感じを出されてますが、
普通に考えたら、初代天鳳位で元Mリーガーってだけで、
麻雀プロの中でも最上位レベルで実力も知名度も保証されている立場です。
さらにMリーガーでなくなってからも、
パチンコ屋来店営業などタレント的な方向に行くことなく、
Mリーグ解説などあくまで麻雀をメインにしたものだけで活動を続けられています。
その解説での評価も十分高い。
Mリーガーや元Mリーガーがパチンコや公営ギャンブルなどの実質ギャンブルであるものとの関わりを表立って行うことに忌避感を覚える層や、
麻雀プロなんだからパチンコ打ってる暇あったら麻雀打てよ
とか思う層にとって、
非常に好感を持たれるムーブかと思います。
そのうえ、シングルファザーとして幼い息子さんの育児をしつつプロ活動をしていく苦悩や、
一転して子どもと過ごす時間の素晴らしさなんかを並行して赤裸々にSNSで発信するという、
キャラクター・バックグラウンドとしての独自性もあります。
こう列挙するとかなりハイスペックな感じがするのですが、
ことあるごとに自己評価が低いかのような発言や発信があります。
実際、例えばMリーガー時代にはチョンボがあったり、
錯チーがあったり、
そういうこともあるにはあったのですが、
それ以外のプラス材料となる実績やスペックをも凌駕してマイナスまで持っていくほどのものではありません。
まあ、だからこそそれを活かしてぶちこんでくる自虐ネタの切れ味が鋭く見えたり、
普段のそういう控えめ、ネガティブベースのキャラクターとのギャップで、
今回のような真剣勝負でのガチ感ある表情や、
ここぞというときにバシッと言い切るようなシーンが映えるのかもしれません。
あと、解説時に時折出てくる最高位戦選手への軽いイジり気味のコメントがクセになります。
「太にこれくらいの配牌渡しとけばそれなりに仕上げてくれる、でもリーチ受けてすいませんアンパイ無いっすみたいになることもあるけど」
みたいなのとか。
とくに好調時の竹内元太プロに対してはコメントを求められるたびに
「(竹内プロの好成績は)いまとにかくツイてる」
みたいなワードを織り交ぜるなど、
とにかく何かチクッとひとこと言ってやろうと執拗に狙っている感がたまりません。
いずれも各選手の確かな実力を認めたうえでのイジりではあるのですが、
同じ団体の身内に関するコメントというところで、
他団体の選手に対してのコメント時より明らかにリラックスしてる感が滲み出ているところが良いです。
他団体のプロに対してコメントする際は、
明らかな緊張が毎回見られます。
そことの対比が面白い。
プロなんだからミスはしてはいけないとか、
感情に流されてはいけないとか、
解説はフラットな立場ですべきとか、
そういうのも理解できますし、
それらをきっちり遵守できる人はもちろんプロとしてすごいと思います。
ですがいま、麻雀プロというのは麻雀のプロフェッショナルであると同時に、
いわゆるタレントというか、演者としての要素も非常に重要です。
そういう視点でみると、
朝倉プロの魅力ってやっぱり人間臭さなんじゃないか?
と思います。
チョンボもするし、
メンヘラ気味ポストもあるし、
身内の選手にはくだけたコメントをしてしまう。
でもMリーグという大舞台でプレッシャー等からチョンボしてしまうのはわかるし、
男性だろうが女性だろうが一人での子育ては大変で精神的に追い詰められ弱音を吐いてしまうことに共感される方は多いでしょう。
普段気を張っている分、身内に対するコメントですこし緊張の糸が緩み砕けたコメントをしてしまうのもわかります。
これがプロとしていいのかというのは別にして、
そこには間違いなく人間臭さがあります。
これで麻雀が全然ダメだったら単純にダメなやつなんですが、
麻雀の実力自体は折り紙付きなわけですから。
そもそもネット麻雀のトップがリア麻の世界に来て、
さぞ精密でマシーンみたいなやつなんだろうと思っていたら、
逆にむしろめちゃくちゃ人間味あふれるやつが来たぞ、
みたいなことで、ギャップ萌えですか?
違うか?
まあとにかく、そういうことです。
環境や手牌に恵まれるなどの好条件があったとはいえ、
画面の前で多くの視聴者たちがわーっとスタンディングオベーションしたのです。
こんなに自然な流れでのスタンディングオベーションは日本でなかなか見れません。
このときと同じくらいの空気感って、
なんかのスポーツの日本代表戦をスポーツバーで見たときとかじゃないですかね?
まったく同じ手牌で、まったく同じ手順で打ったとして、
朝倉プロ以外の選手だったらなかなかスタンディングオベーションまでにはなってなかったでしょう。
(実際、なってた選手もわりといるかもしれないけど、
なってなかったでしょう、
のほうが収まりが良いのでその方向でいきます。)
少なくとも、朝倉プロは、
こういう場でこういう手牌、ツモを引き寄せる「ヒキ」と、
視聴者を惹きつける「ヒキ」、
両方のヒキを持ち合わせていました。
いまのMリーグって、
男性プロはわりとキャリアや実力が堅く、
打牌内容的には賛否あれど根本的なところでの危うさを感じる選手はほとんどいません。
朝倉プロは選手としての魅力や実力は確かながら、
ある種の危うさも感じさせる(アウトロー的な意味ではなく)選手であると思っています。
チーム戦という枠組みの中でリアリティショー的に人間ドラマを描くエンタメ的要素も多分に含むMリーグ。
視聴者数の増加とともに麻雀をしっかりとは知らない層も増えてきて、
それに伴い純粋な競技面以外でのエンタメ要素も重要性が増しています。
またMリーグの舞台でチョンボなどボーンヘッドをかます朝倉プロが見たい、
とかそういうことではありません。
重要な場面で朝倉プロが登場し、
プレッシャーに耐えながら戦うところを、
「ちょっと今日表情硬いけど大丈夫か?」
とか思いながらヒヤヒヤしながら視聴するのはやはり楽しいのです。
悪趣味だと言われればそれまでかもしれませんが、
そもそもリーチして捲り合いだとかなんとかを楽しんでいる麻雀好きは、
こういうエンタメコンテンツにもどっかヒヤヒヤ感というかスリル感を求めてもおかしくないと思うんですが、
どうなんですかね?
僕が一貫して白鳥プロを推し続けているのも、
この6-9sは止めて、
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この4pは放銃しちゃう
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みたいなバランス感がファンとして非常にスリリングだからというところが要素としてかなり大きくなっています。
のちの牌譜検討では、
どちらも打つべきではないとのことでしたが、
それでも4pが放たれてしまうというこの絶妙なバランス。
このバランス感によって、
白鳥プロがダントツでもダンラスでも、
オーラス最後の最後まで
「こっからでもワンチャンある」
とか
「ここからでも捲られる可能性あるよ」
とか楽しめるわけです。
朝倉プロの話に戻りますが、
とにかく朝倉プロの人間臭いキャラクターは個人的にはとても魅力的で、
ライト層の増えてきたいまのMリーグの状況にもマッチしていると思います。
全体的にMリーガーの雀力があがってきているとかいうことは言われてますが、
そのあたり朝倉プロは問題ないんじゃないですかね?
僕は雀力的なところは判断できないですが、
元天鳳位なわけですから。
そんなわけで、
あの自然なスタンディングオベーションを見た身からすると、
やはり朝倉プロは天鳳位という確かな実力だけでなく。
色々人を惹きつけるものを多分に持っているんだろうなというのをあらためてめちゃくちゃ感じました。
また再びMリーグの舞台で見てみたいなと。
じゃあ誰が抜けんの?
と言われるとそれは知りませんが。
・・・というのを、今さら書きました。
決して、仕事が忙しすぎて最新のMリーグ情報に追いついてないから、
ということではありません。
よろしくお願いします。