石立岳大プロ Mトーナメント勝率100%の男
こんばんは。
場末フリー雀荘出身の田ノ倉です。
麻雀というものはトップとれるのは常に四人に一人。
さらに運要素が非常に強いゲームです。
なのでよっぽど実力が離れた相手と打つ場合を除いては、
トップ取れないことのほうが多いゲームなわけです。
そして、麻雀プロという人達は、
だからこそ価値のある、「◯◯戦 優勝」というタイトルを目指して研鑽するのですが、
とはいえ同卓者ももちろん同じ立場なわけで。
そう簡単にタイトルなど取らせてもらえません。
つまり、基本的には麻雀プロというのはけっこう負けるのです。
もちろん、色々な大会で優勝してタイトルをたくさん持っている、
というのは純粋にその実力が評価され、
支持されていくのは間違いありません。
ただ、圧倒的に多く遭遇する「負け」の試合でも、
見ている人を惹きつけ、魅了し、応援したくなるような麻雀を打つことができれば、
支持されるチャンスは格段に増えてきます。
麻雀プロとして、点棒的には負けても、見ている人の心を掴むような麻雀が打てれば、
実質勝ちみたいなものでしょう。
それが大きな舞台であればなおさらです。
例えばセガサミーフェニックス新メンバーに選ばれた浅井堂岐プロなんかは、
第21期雀王をとってから注目され、
BEASTオーディションで一気に脚光を浴びましたが、
そのBEASTオーディションはおろか、
その後の対局で実際には目立った結果は残していません。
麻雀の結果だけでみると。
しかし対局では負けていても、
その魅力的な打ち筋やキャラクターに支持が集まり、
いまではMリーガーとなっています。
人気商売である面が非常に強い麻雀業界において、
対局の結果で優れた実績を残すことだけが「勝ち」ではないのです。
さて、本題に入りますが、Mトーナメント2024で個人的に最も注目していたのが、
昨年優勝はのがしたものの抜群の渋さを発揮した石立岳大プロです。
結果としては、
初戦でトップをとったHIRO柴田プロと次戦でトップとなった東城りおプロの二名が勝ち抜けしたわけなのですが、
見ていた僕は石立プロの巧みな仕掛けに心躍り、
最終戦オーラスの3p切りの表情と
インタビューでの涙には大変心打たれました。
石立プロといえば昨年のMトーナメントで決勝戦まで勝ち進み、
鋭すぎる仕掛けと意志のある押しが視聴者を虜にし、
対局中のメガネをクイッとあげる仕草やインタビューでのたどたどしさが逆にシブいということで(これは個人的な意見ですね)、
一気に有名になったプロ雀士です。
なのにX(旧Twitter)をのぞくと、
対局やインタビュー中とは全く違った謎の独自ワールドが展開されています。
対局をみてXを見に来た人たちは、
「“あいだてさん”とはいったい何なのか?」
「なぜ“あいだてさん”なのか?」
「このアイコンはなんなのか?」
「そもそもこれは本当に本人なのか?」
など、大変困惑させられたものですが、
いまではその独自ワールドの中毒性がたまらなくなってしまった人も多数いるとかいないとか。
去年のMトーナメントで、石立プロは決勝で負けましたが、
麻雀プロとしては間違いなく「勝ち」だったと思います。
そしてMトーナメント2024。
圧倒的に手が入らず、厳しい展開を強いられ、
結局敗退とはなってしまいましたが、
確実にまたファンを増やしたことは間違いないでしょう。
個人的には、予選を打った全選手の中で最も素晴らしい麻雀だったと思いました。
初戦のトンパツから先制リーチに対し鳴きを駆使して手を進め、
最終的に当たり牌の2sを抑えて先に1sを切り、
2sを使い切ってのテンパイを組んだ瞬間から、
「これこれ!!」
と非常にテンションが上がりました。
麻雀ガチ勢諸兄からすると当然の2s残しなのかもしれませんが、こっちは楽しいんだからしょうがない。
見ていてひたすら楽しい。
調子が悪かったいわゆる“白組”の中で、
最後のインタビューで最も悔しそうにしていたのも印象的でした。
現環境で「M」と冠する大会の大きさや、
勝ち進むことの価値を最も身に沁みてわかっている唯一の白組だからこそ思い入れも強かったでしょうし、
その悔しさを言葉で語るのではなく悔し涙で見せるというのも非常に良かったです。
Mリーグはエンタメ色強いのでしょうがないですが、
いまのMリーガーって喋りとか含め狙ってちゃんとエンタメできそうな人ばっかりで、
いわゆる「麻雀特化型」みたいな人がいないのがちょっと寂しいです。
以前は朝倉康心プロとかそっち系の匂いがして良かったのですが、
いなくなってしまいました。
そろそろ石立プロのような「喋りは苦手だけど俺の麻雀を見てくれ」的な感じの選手がいてもいいと思うんですけどね。
エンタメ性はXのほうをみてください、ってことで。
いずれにしても、
石立プロはまず去年のMトーナメントでは決勝まで勝ち進み、
決勝で対局には負けましたが多くのファンの心を掴みました。
これ実質勝ちです。
そして今年のMトーナメント、対局自体は初戦敗退ということになってしまいましたが、
ここでもまた非常に魅力的な麻雀や立ち居振る舞いでさらに新規のファンを掴んだことでしょう。
ここも実質勝ちです。
ほら実質勝率100%。
両方の意味で“敗退”となってしまったプロ雀士が多い中、
Mトーナメント実質勝率100%という実績は非常に素晴らしいことです。
個人的に、ひそかに最もMリーガーになってほしい麻雀プロでもある石立プロの今後のさらなる活躍に期待します。
ちなみにこれもきわめて個人的な意見ですが、
メガネは去年のやつのほうが「トガッてる奴」感が強くて良かったです。
以上。