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忍田プロ実況おなじみの「は~い♡」は効果的な“編集点”である話【Mリーグ】

こんばんは。
場末フリー雀荘出身の田ノ倉です。


10月4日に忍田プロがMリーグの解説を担当され、
今回も好評だったわけです。


個人的に何度か忍田プロの解説を聞いていて、
聞きやすさを担保しているのは、
声質でもテンポでもワードチョイスでもなく、
忍田プロの重要なキャラ付けワードとなっている
「はぁい♡」
なのではないかと思っています。



突然ですが、普段テレビで見てるバラエティ番組の、
いわゆる「番組観覧」みたいなやつがあります。

視聴者が応募して、実際にスタジオかどこかでその収録の様子を見られるというアレです。

観客席が放送に乗っていて、
「ああ、あそこで見るのね」
とわかるやつもあれば、
「あの番組って観覧できるんだ」
みたいなものまで、色々あります。


で。

その番組観覧なのですが、
当然その番組に出ている芸能人のファン、
という層と、
その番組自体のファン
という層に参加者はだいたい別れます。

なんでもいいから芸能人を生で見たい
って人もいますが、それは前者に分類されます。

実際に番組を観覧したあと、
前者は「蓮くんマジイケメンだった~!!」とかいう感想に終始することが多い、
つまり“生芸能人”の観察を楽しんだり、興奮したり、
というところで、結果、「めっちゃ良かった」となることが多い印象です。

しかし、後者の場合は、
「思ったよりイマイチだったな・・・」
と言ってくる人がけっこういます。

(※言ってくる、というのは、僕が実際に番組観覧の手配をしていたりした経験があるからです)

その理由を聞くと、
「いつもよりトークのキレがなかった」
「鉄板ネタのはずのくだりが、いつもよりグダっていた気がする」
「全体的にダラッとした印象」
「ハズレ回だったかも」
とか言ってくる人が多いのです。

この感想については、正直なところすべて、
「そりゃそうだわ」
なのです。



実際に現場で撮影されている様子と、
放送される番組とを比較したとき、
当然ながら放送される番組では、実際撮影した素材に「編集」が行われています。

そしてその編集によって、
現場と放送される番組で大きく異なるのは、
「カット」
されている部分が多くある、ということです。

さらに言うと、番組観覧者が最も違和感を抱くのは、
「ひとくだり終えたあとのグダグダ感」
なのです。


例えば、麻雀のnoteなので、麻雀プロのアンジャッシュ児島プロを例に出すと、

「さあ、最初のチャレンジャーは・・・・大島さん!」
「児島だよ!!」

というくだりをやったときに、
放送上では
「児島だよ!!」
のところで激しめのテロップを入れつつ児島プロの顔をアップにしたり、
適当にカメラワークで遊びつつ、
笑いのSEを入れてそこで終わり。

それ以降はすぐカットし、
次はそのゲームのスタート時点、たとえば
「3,2,1,スタート!!」
みたいなシーンに飛びます。


なので放送上は、軽いひと笑いをサクッと消化して、
みたいな見え方になっています。

ただ現場では
「児島だよ!!」
のあとに観客席からひと笑い、までは同じですが、
そこから謎のぬるっとした時間が発生しがちです。

実際は「児島だよ!!」のあとに念のためもう少し、
「大島はあいつだよ!」
とか
「お前15回目だぞ間違えんの!」
とかいうツッコミを入れていたりして、
それは現場的には刺さらずたいした笑いを産まない、
みたいなことになっている場合ももちろんあります。


後追いで刺さらなかったツッコミは入れてない場合の実際の流れを具体的に書くと、

MC:「さあ、最初のチャレンジャーは・・・・大島さん!」
児島プロ:「児島だよ!!」
観客、出演者一同、笑う。

ーーーーここからカットされるシーンーーーー

MC:「すみません、児島さんでしたね、失礼しました(笑)」
児島プロ:「お願いしますよほんとに・・・・」(撮れ高十分と思っているので流し気味)
観客、笑い声が多少残る中、
MC:「ではすみません、児島さんあらためて準備いただいて・・・」
MC、スタッフのほうをチラ見
スタッフ、GOサインを出す
MC:「さあそれでは、改めまして児島さんの挑戦です!!」

ーーーーここまでカットされるシーンーーーー

「3,2,1」のSE
スタート音のSE


こんな感じの流れになります。

「児島だよ!!」
のくだりでひと笑いとってから、
次のカットに移行するまで、
実際は若干のやりとりや準備が当然に存在するわけです。

そこでなんとなくぬるっとしてから、
次のカットに採用されるシーンに行くので、
どうしても本放送と比べると間延びしている感や、
グダってる感が出てしまうというわけです。


YouTubeなんかだともっと露骨で、
カットの割り方がテレビよりかなり極端です。
(喋る言葉と言葉の間をほぼカットしているものが多い)
編集してある動画上だとサクサクチャキチャキと切れ目なくトークを繰り出している人が、
ライブ配信だと全然テンポが良くなくてがっかりする、
みたいなことを言う人もいるくらいです。


このあたりの「放送される内容」と「実際の現場」との乖離をうまいこと少なくしている人もいて、
例えば芸人のねづっちさんは、謎かけが持ちネタです。

観客や共演者からお題をもらい、すぐに
「整いました。◯◯とかけまして、✕✕とときます」
とやると、
「おお~!!」
と歓声があがるのですが、
そこで最後決めゼリフ、
「ねづっちです。」
を放つのです。


どんなにすごい謎かけを披露しても、
「✕✕とときます」
「おお~~!!」
のあと、毎回成り行きに任せるようなやり方だと、
周囲の環境にその後の展開が依存します。

そればかりか、まわりの共演者等のせいでグダったとしても、
ネタを披露したほうが「キレがない」という印象を持たれてしまいます。


ただそこで、謎かけをキメたあと、
適切なタイミングで
「ねづっちです」
と決めゼリフをかますだけで、
「はい、ここでこのくだりは終わり!」
と、区切りをつけることができ、
メリハリ感を出すことができます。

そしてこの区切りは、テレビなど映像作品においては、
いわゆる「編集点」そのものになります。


「編集点」というのは、
映像作品の編集作業時に、カットを割るポイントのことで、
わかりやすいところでは、明確に場面の転換があった箇所や、
司会者が
「続きまして、◯◯のコーナーです!」
と言う箇所などがあります。

あとは、ひとつの話題でトークが間延びした場合などは、
うまく話と話の間にできた“間”を編集点とすることがあります。


競合する演者のトークがグダってるな、
と思ったときに意図的に間を空けたり、
突然話題の転換をしたりして、
編集点を作り、グダった部分をカットさせて自分のそのシーンから使ってもらう、みたいな技術もあるにはあります。

逆に、グダったけどカットされるのは困る・・・・
というときに、編集点を作らせないために、
そのくだりの最後にとっておきのネタをぶちこんでみたりする、
というのもあります。
(最後の爆笑シーンを使いたいがために、その“フリ”となるひととおりのくだりをすべて採用しなければならない)


ねづっちさんの例に戻ると、
テレビでねづっちさんが謎かけを披露して、
「ねづっちです」
と決めゼリフを放つと、
そこを編集点としやすく、
そこでカットしてそのまま次のカットにつなげる、
という流れが非常にやりやすいのです。

これが現場の実際の動きも放送されるものとかなり似通っており、
「ねづっちです」
の決めゼリフを出すと、
「このくだりはここで終わり!」
と、バチッと切ることができます。

そのまますぐ次の謎かけに移るもよし、
MCがいるなら、それをきっかけに
「はい、ねづっちさん、さすが見事な謎かけをありがとうございました。さて、続きましては・・・」
とスムーズに次のコーナーに移行することもできます。

いずれにしても現場と放送での乖離がかなり少なく、
「生で見るとイマイチ面白くないな・・・」
がかなり軽減されます。

このあたりの立ち回りは、
テレビではなく営業や舞台を主戦場とする演者の方たちが優れている傾向にあります。






・・・と、何の話だったでしょうか。

そう、忍田プロ解説に話を戻すと、
忍田プロの代名詞のようになっている
「は~い♡」
は、まさに「ねづっちです」と同じように、
編集点として非常に効果的なのです。


麻雀の実況解説は、スポーツのそれとは違い、
目まぐるしく変わる状況に逐一反応して言葉を紡ぐというタイプのものではありません。

ムダヅモが続くこともありますし、
特にMリーグでは所作のスピード的にもかなり時間的な余裕はあることが多いのです。


なので、実況と解説の間でトークが展開されたとき、
ゲームの状況が著しく変わるまでは、
無理やりゲーム状況の方に話題を振るというのはちょっと不自然です。
いったん、実況と解説間でのトークを一区切りさせて、
あらためてゲーム状況に目を向ける、というのが自然です。

しかしそれがけっこう難しく、
いかな面白い掛け合いであっても、
その話題を締めるというのはなかなかうまくいかないものです。


そこで、
「は~い♡」
が非常に効果的なのです。

実況解説間でやりとりを行い、
「もう、このくだりはこのへんで終わりでいいな」
というときに、
「は~い♡」
で締めてしまう。

・このくだりの着地点を探す
・その着地点までうまいこと誘導する
・うまいこと着地させ、ゲームの状況に話題を移す

この工程をカットできるわけです。


とにかく強引に締めてしまうことができるにも関わらず不快感が無いというのもポイントで、
これが忍田プロ解説は小気味よく聞きやすい、という評判にもつながっていきます。


実際の現場、編集が入っていない「生」の現場にありがちな、
「面白いくだりだったはずなのに締めがグダって尻すぼみになる」
といったことが起こりづらく、
つまり、前述した「編集点」として優秀なのです。



そして今回気になったのは、
実況を担当していたコバミサこと小林未沙さんも
「は~い♡」
を多用していた点です。

あれ?こんな感じだったっけ?
って印象なんですが、これが忍田プロ効果なんでしょうか。


忍田プロ「テンホウの日かあ・・・・」
コバミサ氏「はい、って言ってるだけなんですけど笑 本当にテンホウの日に、なればいいなと思って。
今日天和出たら、天和の日になりますよ今日は」
忍田プロ「そうですね、じゃ、どなたかに出してもらいましょう」
コバミサ氏「は~い♡」 ※ここでこの件は終わり!
コバミサ氏「・・・さあ、たろうはドラの北を持ってきましたが・・・」 ※別の話題に転換


実際はこんな感じで使われてました。


おそらくコバミサ氏は真面目でいい人なんだと思われ、
解説者のよくわからん適当なトークもちゃんと受け止めてしかるべきところに着地させようとするきらいがありました。

そこまで真面目に対応しなくてもいいのに・・・
というシーンもやや見られましたが、
忍田プロからラーニングした
「は~い♡」
を駆使することによって、
今後は編集点を自ら作るかのごとく話題を切り上げ、
対局内容の話に強引に戻すことが可能になりました。

というか、忍田プロ解説の代名詞、みたいに書きましたが、
今回の実況解説で「は~い♡」って忍田プロそんな繰り出してなくね?
むしろコバミサ氏のほうが多かったんじゃね?
という気もしてきました。


まあ、どっちでもいいです。

現在のMリーグ公式実況3名の中で最も穏やかで落ち着いていますが、
悪く言えばテンポ感やテンションが物足りない部分もあるコバミサ氏の実況。

ですが「は~い♡」を駆使することによって、
穏やかながらも要所を締めた実況を展開することが可能です。


忍田プロ解説のときだけでなく、
今後のコバミサ氏実況のときに繰り出されるであろう
「は~い♡」
の効果的な使用に注目していきたいところです。














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