思いがけない一言
子どもの頃から太ってた。
ということは、今も太っているのだけれど。
その頃の写真はほぼないから、どれくらい太っていたかはわからないけど、他の子よりは太い自覚はあった。子どもって、性格よりも見た目優先になるしね。
今はそこまで人の目は気にならないけど、子どもの頃は本当に気にして、「きっと、みんなわたしのこと太ってるって思ってる」って泣いてた。だからダイエットしよう、とはならないから自業自得感はあったんだけど。
これは、わたしが人より太ってることを気にしていた小学生のときのお話。
社会科見学で消防署に行く事になった。
わたしは事前学習の中で、班でのじゃんけんに勝って当日はしご車体験をさせてもらえることになった。
当日、じゃんけんに勝った人たちは順番に安全のためのベルトを消防隊員さんにつけてもらう。
そのときにわたしは若い男性の消防隊員さんにつけてもらうことになったのだけど、わたしの頭の中は「太ってるって思われたらどうしよう」ってぐるぐるしていて、はしご車への緊張も相まって不安と吐き気が襲った。
でも若い消防隊員さんは、わたしにベルトをつけながら
「あー、子どもってこんなにちっちゃいんだなー」
って笑いながら言ってくれた。
本当は『他の子に比べたら太ってるな』って思ったかもしれないけど、言葉になって出てきたのは言われたことのない「ちっちゃい」だった。
わたしはすっごく嬉しくて、そのあとはしご車で20mくらい上まで上げてもらったけどそのときのことは覚えてない。社会科見学で残った記憶は、消防隊員さんのこの言葉だけだった。
たったそれだけの話。
人って、そんな些細な言葉で救われたり、はたまた傷ついたりするんだ。
人の心の中なんてわからないし、皆を傷つけない言葉だけをしゃべるなんて、絶対にできないんだけど、それでも、この思い出を忘れずに生きたいと思った。
あのときの消防隊員さん、素敵なことに気づかせてくれて、ありがとう。
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