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つぶやきが進める授業

 意見を話すときは、まっすぐ手を挙げて、指名されたら「はい」としっかり返事をしてから椅子をひいて立ち上がり、椅子を机の下にしまってから意見を言いましょう。

 みなさんは、先生からこんなふうに教わりましたか? 私が子どものころは、このようなルールがありました。(ちょっと 昔のこと過ぎますか?)

 今は こんな時代ではないとは思いますが、私も、同じ意見のときはグー、違う意見はパー、質問は人差し指を出してなどと、発表の約束を決めることはあります。

 たくさんの子どもが口々に話すと、話がまとまらないので、このようなサインも必要だと思うからです。

 でも、人前で何か意見を言おうとするときって、ドキドキして緊張しますよね。かなりの勇気が必要です。

 「意見を言おうかな。あれ?どんなサインを出すんだったかな?」と、考えているうちに、話すタイミングを逃してしまいそうです。 

 いろんなルールがあると、それに気を取られて、話すのが難しくなるという面もあることを考えなくてはいけません。 

 話し合いは、何よりタイミングが大事だと思っています。話の流れに沿った発言が教室の中に大きな流れをつくります。そんなとき、抜群のタイミングで出てくる意見が「つぶやき」です。子どもの口から転がり出たひとこと。このつぶやきはベストなタイミングでやってくるし、ものごとの本質をついているのです。

 国語の「モチモチの木」の初回の学習でした。初めに、単元のめあてを子どもたちと考えました。「この学習では、主人公の豆太の性格について読み取っていくんだけど、みんなは、自分はどういう性格だと思う?」と、私は投げかけました。これは、子どもたちと主人公を近づけるための軽い質問です。漫才でいうところの「つかみ」のようなものですね。子どもたちは、自分はどんな性格かを次々と発表していきました。全員立ち上がって発表しました。あとは、まだ発表していなかった一人の子どもだけになりました。そのとき、その子が机に座ったまま、小さな声でぽろっとつぶやいたのです。「性格っていろいろ変わるからなあ」と。

 その瞬間、私は、雷に打たれた気がしました。これなのです。豆太の性格も、臆病なところと勇気があるところが交互に描かれていて、それを読み取ることが、この単元の学習の一番大事なところなのです。

 このつぶやきが出る前の瞬間までは、子どもたちの意見がどのようなものであるかに関係なく、私は次に話すことを決めていました。「豆太の性格は途中で変わっていってるよね。それは どの文章でわかる?それを、今日から学習していこね」と。普段どおりの教師主導で進めて行こうとしていました。

 けれど、この1つの「つぶやき」で授業の流れが変わったのです。

 子どもが感じたその感覚を拾い上げて学習に繋いでいくことは、子どもたちのやる気を引き出すことです。

 大人から与えらたものをやるのでなく、自分たちの中から湧き出たものをみんなで考えていくことが学習なんだと子どもたちに実感してほしい。常日頃、私たちはそう話し合っていますが、なかなか難しいことです。

 問題解決学習・アクティブラーニングなど、いろいろと言われてきましたが、どう進めていっていいのか、私にはあまりわからないというのが本音です。

 そんな中で、小さなことですが、私が努めていることは子どもたちから「つぶやき」を引き出すことです。

 そのためには、できるだけ形式は取り除くこと。手を挙げて、立って、椅子をひいてからの発言では、つぶやきは出てこないと思うからです。

 もちろん最低限度の形式は大事です。私が、絶対に守らせているルールがあります。それは、「誰かが話し出したら、最後まで聞く」ということです。「質問も反対意見も、必ず、話し手が終えてからする」という約束もしています。それは、教師の私も同じように守ります。

 また、話す方にも、「聞いている人は、あなたの話が終わるのを待っているのだから、わかりやすく話すこと。だらだら話さない。」と、言っています。

 簡単なルールに見えますが、やってみるとけっこう難しいです。

 形式だけにとらわれない「つぶやきが進めていく授業」。いつも、そんな授業がしたいとは思っていますが、まだまだ、教師が主導する授業がほとんどです。でも、いつでも「つぶやき」を拾い上げられる姿勢だけは忘れずに持っていたいと思っています。

 

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