繰り返しの読書はジグソーパズルだ
このコンテンツは2020年の年末から2021年の春先まで受講したライティングの講座の課題です。ブログには掲載していましたが、現在そのブログは閉じてしまったのでこちらに再掲いたします。
人は誰でも老いていきます。
私が歳を取ることの感じる恐ろしさは、読んだ本の内容と覚えている時間が圧倒的に少なくなること。老眼が進み本を開くのがおっくうになってしまいます。
人並みに読書を私は好みます。しかし歳をとるとともに、読んだ本の内容を覚えている量が少なくなっています。老いることをすこしでも食い止めたい、以前ほどではないにしても読んだ本の内容を覚えていられる読書法はないかといろいろ探して試してみました。
最近見つけた読書法をいま試しています。取り組みはじめたばかりでまだ手探りの段階です。中間地点に差し掛かったのでここまでの感想をお伝えしようと思います。
自分にあった読書法は何か。この問題を解決するために、時間をみつけてはインターネットで検索をしていました。そのなかで『東大首席弁護士が教える超速「7回読み」勉強法』山口 真由/著という本に出会いました。著者が今までにどのような勉強方法をしたのかについて書かれています。「7回読み」という部分に惹かれまた、読書にも応用できることがわかり図書館で借りて読んでみました。
この勉強法は一冊の参考書を使い繰り返し流し読みすることで、その本の概略や構造を掴み、最後は理解と定着させることを目標としています。
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの発表した「エビングハウスの忘却曲線」にもあるように、復習を繰り返すことで忘れにくくなる研究結果があります。さらに中国三国時代、魏の董遇 (とうぐう) という人が弟子に「読書百遍意い自ら通ず」と何度も読書することの必要性を説きました。繰り返すことが有効であることは、洋の東西を問わないことに間違いはないようです。この繰り返して覚えるという7回読み「勉強法」を「読書法」として試してみることにしました。
7回読み読書法のために選んだ本は、岩波新書の「マックス・ヴェーバー」です。マックス・ヴェーバーは第二次世界大戦前のドイツの社会学者。亡くなったのが1920年、いまから100年前です。没後100年という区切りの年で、岩波書店と中央公論社、筑摩書房から彼に関する新書が刊行されました。
私は学生時代、彼の講演を元にした「職業としての政治」という本をゼミのテキストとして使用していたこともあり、いい機会なので7回読み読書法を試しながら、あらためてマックス・ヴェーバーという知の巨人の業績に触れてみることにしました。
私が探し求めているのは読書法であり勉強法ではないので、7回読み勉強法のアレンジをします。最初に目次と「はじめに」、「あとがき」を読む。目次は地図なので本の内容の全体を知るために必ず目を通しておき、「はじめに」と「あとがき」を読むことで著者の主張や目的をつかんでおきます。
最初の流し読みでわかったことは、「黙読」と「流し読み」は別物でした。「流し読み」はスピードが命です。1度目の流し読みでこの違いに気づきました。私がふだん「黙読」をしていたのです。「流し読み」に変えるのに苦労しました。「黙読」をしてしまうとスピードは落ちてしまいます。同じ本を7回も読むのでゆっくりしている時間はありません。
ふだん本を読むスピードより2~3倍速い速度で読んでみると、読むというより文字を追っている状態です。目に入ってくるのは漢字という名の形です。頭の中では見て理解をしようとしている今までに経験をしたことのない感覚になりました。もちろん文章を理解することはできません。形を見る作業していたというのが1回目の流し読みの感想です。
2回目の流し読みでは、読むスピードにたいして、目に入ってくる漢字の意味が少し理解できるようになった気がします。回数は減ったとはいえ気がつくと「黙読」をしていたことがたびたびありました。
慣れない流し読みに苦しみながらも「あれ? ここにきたことがあるぞ」という不思議な感覚にとらわれることがおきてきました。単語と単語がつながりひとつのフレーズになります。フレーズとフレーズはまったくつながっていません。ストーリーがまったく出たら目でなんの脈絡もない、だれもがそんな夢みたと思います。まさにそのような感じでした。
3回目の流し読みもおわると、断片的なフレーズの数も増えくると、それらはつながりはじめ文章として捉えられるようになりました。おそらく流し読みの効果だと考えています。断片的に理解できてきた部分はあちこちにあり、流し読みの回数が増えてくるとジグソーパズルのピースのようにひとつふたつとはまり、ひとつの絵が完成していくのです。
これから4回目に入ります。ここではキーワードを重視しながら普通のスピードで読んでいきます。ピースがはまっていくワクワクした感。どのような絵が出来上がるのか楽しみになっている私がいる。いままでの読書をでは味わうことがなかった新しい感じです。
7回読み読書法を最後までやってどうなったのか、どのような絵が出来上がったのか、それはまた別の機会にお伝えしたいと思います。