冬の一等星
冬の一等星
きりりと寒い冬の夜、読みたくなる本がある。
移動中の電車とか、心地よい音楽が流れるカフェとかで読書をするのも好きだけど。
この本だけは絶対に、静かに1人で読む。
もう数えきれないくらい読んでいるけど
文蔵の優しさに触れたいからこれからもずっと読む。
優しさについて考えるとき、
真っ先に思い浮かぶのが文蔵。
人それぞれ、好きな優しさは違うと思うし
それを優しさとして受け取るかどうかも人それぞれ。
わたしは文蔵がもつ優しさがダントツで好き。
世間的には誘拐だと一言で捉えられるんだろう。
文蔵はおそらく、何か罪を背負って生きている人なのかな。
でもあの時間はずっと優しさで溢れていたなと思う。文蔵の言葉も行動も考えも全部。
その優しさが周りに伝わることはきっとない。
でも、8才の女の子にはちゃんと伝わっている。
家族からさえも与えられなかった優しさを
文蔵からもらって、それを受け取ることができた。だからお互いを"子どもだから"とか"見知らぬ男だから"とか関係なく信じ合うことができたんだろうな。それってすごいこと。
"変わっている"と言われて傷ついていたけれど
映子ちゃんが普通の女の子だったら
文蔵が普通の犯罪者(と言ってしまっていいのか)だったら
決して生まれることのなかった奇跡。
そんな誰も知ることのできない奇跡をひっそりと読ませていただくのが何よりの冬の贅沢。
もし文蔵に会えたら…どうやってうさぎ座の存在を知ったのか聞いてみたい。