140文字のほっこり。 (6)
140文字で「ほっこりする」物語を書いています。
まとめてみましたのでぜひご覧ください。
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2020/05/08 05:55
「車引きの辰ちゃんに女ができた」と噂が立った。噂を立てたのは本人で借金取りから逃れるため。「女が有り金全部持って出た」ひと月後にはこんな噂が。事情を知っている長屋の連中だけは笑っている。借金取りがやって来て「その女はどこに逃げた」と正すと、辰ちゃん気取って「川端って男と雪国へ」
2020/05/07 05:26
テントウムシは歩くことに決めた。この森の道をどこまでも。飛べるのだ。飛べるけれども歩くことに決めたのだ。こう決意したテントウムシはこの世界で自分だけだと確信している。そもそもテントウムシは天道虫なのだから、道を歩く虫なのだ。原点に帰っただけ。この森の道がいかに長く厳しくても歩く!
2020/05/06 05:50
チョウチョに恋したモグラのお話。モグラが穴から鼻だけ出していてもチョウチョは相手にしてくれません。「バカだなお前は!チョウチョは鼻じゃなくて花が好きなんだよ!」と忠告してくれたので、レンゲの花を鼻の先にくっつけてみましたがチョウチョは来てくれません。日が沈みマックラになりました。
2020/05/05 05:52
クローバーの河川敷に来ています。あまりに美しい小鳥の鳴き声がするので、どこで鳴いているのだろうと探してみましたが、見つかりません。声のする方に白いクローバーの間にちょっとだけ赤いクローバーがあるので、のぞいてみると、小人たちと小鳥たちが楽しそうに踊ったり歌ったりしていました。
2020/05/04 05:50
雨上がりの星の夜。アザミの花は自分の葉っぱの銀色に光るトゲを見ながら「私はこのトゲのせいでみんなから嫌われているんだろうな」と思った。星が「王様があなたを褒めていたわ、あなたのトゲが国を守っているのよ」と言ってくれた。だから、アザミの花はスコットランドの国の花になったんだと……
2020/05/03 06:07
働き方改革が叫ばれているので、専門家会議で「働き蜂」の名称を変更するアイディが出た。反対したのは経済界。「それでは生産性が上がらない」と言うと、養蜂家が「働き蜂こそが三密」と別の視点から問題点をあぶり出す。若者たちは「それだったら、渋谷のハチ公の名前も変えろ!」と盛り上がり中!
2020/05/02 06:04
青色が好きな市長が「公園青色化条例」を発令して、公園には必ず青色に塗った広場を設置することにした。「海みたい!」と裸になってはしゃぎ回る子どももいて、市民には大人気。この青色に塗った広場ではサーフィンはいいが、バスケットや野球をすることは禁止されている。だって海なんだから。
2020/05/01 06:11
向かい風が吹いてきました。体をかがめて自転車をこいでいると風が私に「向かい風はイヤだよね」と言う。私は即座に「風さん、追い風にしてください」と頼むと「わかった。追い風にしてあげよう」と言い、自転車はこがなくてもどんどん進んだ。が、その追い風は麦畑を揺らすことのない偽の風だった。
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