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『万葉集』を読む (雪の道)

これで「『万葉集』を読む」を終了します。

不安におびえる子どもを、母が引く……

妻が差し伸べる手を、夫が握る……

妻、26歳、夫30歳後半、男の子、9歳……他にも数人がいたが、冬の山道、この家族を置いて逃げ出す者もいただろう、倒れるものもいただろう。

このように大海人皇子(後の天武天皇)の吉野行きは、急であり、必死だった。

古代日本の最大の戦い、壬申の乱は、この大海人皇子の吉野行きから始まった。時に671年11月23日だった。多くの妻の内、鸕野讚良(うののさらら:後の持統天皇)は、ただひとり、大海人皇子と共に吉野に下ったという。

万葉集には、戦い終え、8年後、夫婦でこの「吉野」を再び訪れた時の、長歌がある。(25番)読みやすいように改行しました。

三吉野之 耳我嶺尓 
時無曽 雪者落家留
間無曽 雨者零計類 
其雪乃 時無如 
其雨乃 間無如
隈毛不落 念乍叙来 
其山道乎

みよしのが みみあがのねに
ときなくぞ ゆきはふりける
まあなくぞ あめはふりける
そのゆきの ときなきがごと
そのあめの まあなきがごと
くまもみな おもひつつぞきし
そのやまみちを

(私の解釈)
あの美しい吉野の、連なる山々
あの時は雪が、降っていたなあ
いつまでもいつまでも降っていたなあ
あの時は雨も、降っていたなあ
いつまでもいつまでも降っていたなあ
その雪が、いつまでも降るように
その雨が、いつまでも降るように
途切れることなく
いろいろと思い出しながら
この人といっしょに、今また、この山道を登っている。


どうですか、皆さんは、人生の節目、節目で
子どもの手を引き……
夫の手を握り……
不安におびえながら歩いた道はなかっただろうか……
雨は降っていなかっただろうか……
雪は降っていなかっただろうか……



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文字を媒体にしたものはnoteに集中させるため
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