シリコンバレーで流行りの、分析・仕様策定・実装まで行うグロースエンジニアとは?
2018年7月からシリコンバレーにあるメルカリUSのプロダクトマネージャーをつとめている@tank_pmです。
Growth hackingという言葉は以前から結構流行っていた気がしますが、「Growth engineer」というソフトウェアエンジニアの種類が存在することをシリコンバレーに来てから知りました。
Facebook・Instagramのグロースチーム出身のエンジニアが入社したのですが、その際に「エンジニアという職種でありながら、提案した施策に対してかなり鋭いツッコミしてくれるし、考え方がまるでPMみたいだなー」と驚いた覚えがあります。
どこでその能力を身に着けたか聞いたところ、InstagramやFacebookのGrowth teamで長年働いた結果身についたとのことでした。そしてそのGrowth teamのエンジニアたちは、分析・ideation・仕様策定・プロトタイピング・実装まで全て行うとのことした。
少し調べてみたところ、Growth engineering界隈で結構有名なPinterestのGrowth EngineerのJob descriptionにたしかに、そのようなことが書かれています。
Contribute to each step of the product development process, from ideation to implementation to release, including rapidly prototyping, running A/B tests, and pushing code into production
翻訳)プロトタイピング、A/Bテストの設計、プロダクションにコードをプッシュするなど、Ideation、実装、リリース、プロダクト開発プロセスの全工程において貢献する。
Build scalable and reliable systems that efficiently process big data
翻訳)ビッグデータを効率的にプロセスするスケーラブルで信頼性の高いシステムを構築する。
Collaborate with teams across the growth organization to deliver innovative products that help improve content sharing, user to user communication and user retention
翻訳)コンテンツシェアリング、ユーザー間でのコミュニケーション、リテンションなどを向上するイノベーティブなプロダクトを届けるために、グロース組織内のチーム間で協力的に動く。
そんな感じで、オールマイティーな業務内容・能力が求められるエンジニアの職種があるそうです。
まあ、職種というか、Growth teamに所属するエンジニアがそのような能力を求められていて、その結果グロースエンジニアというJob descriptionができた、という話かと思います。
以前からおそらくこのような人材はいたはずですが、エンジニアのカテゴリーとして認識されはじめたと言ったところでしょうか。
(そもそもここで言うGrowth teamってなんぞや?っていう話は別の記事で書こうと思います。)
「グロースエンジニア」の時間の使い方
一般的なエンジニアの業務内容より比較的かなり幅広い業務内容なので、どのような時間配分で働いているのか気になりました。
実際にグロースエンジニアとして働いている人たちの話を聞こうと考え、10月に定期的に開催されるSF Growth Engineeringミートアップに参加してみました。(色々と勉強になったので、気が向いたら別記事でミートアップのレポート書こうかと思います)
ここでPinterestやAtlassianのグロースエンジニアと話す機会があったのですが、時間配分的には大体こんな感じらしいです↓
・30~50% データ分析したり、仮説を立てたり
・40~50% 実装
・10~20% プロトタイピング・PMやデザイナーと共同作業
一般的なプロダクトマネージャーのように、過去の実験データを見て次のアクションを考えたり、他のデータを見て新しい仮説を立てたりするのにかなり時間を割くみたいです。
ちなみに、「じゃあPMいらなくね?」って話になるかと思いますが、Growth teamのPMは大まかな方向性等を定めたり、各チームとの調整をしたりと、一つ一つの施策を考えるというよりかは、下記のような役割を担うことが多いようです↓(もちろん会社や規模によるとは思います。)
・BIチーム等と連携しながら、ハイレベルな方向性につながるインサイト等を発掘し、方向性をチームに提示する(解決策はエンジニア・デザイナーと一緒に考える、ここのプロセスはまた別記事で)
・円滑にエンジニアが実装→リリースできるように動き回る(これも気が向いたらまた別記事で書こうと思いますが、Growth teamは他のチームの担当範囲に触れることが多いので、コンフリクトが起きないように前もって調整する必要が比較的多いようです)
エンジニアが全工程を担うメリット
このようにエンジニアが分析・ideation・仕様策定・プロトタイピング・実装まで全て行うメリットはいくつかあると考えられているようです↓
・エンジニアが全て行うことによって、Ideation→仕様策定→実装→リリースの間のコミュニケーションコスト等が減り、スピード感を持って改善できるため、グロースが加速される可能性が高まる
・エンジニアリングバックグラウンドがないPMだと思いつかないであろう、より効率的・効果的な解決策や解決方法を導き出せる可能性が高まる
・エンジニアは元々分析やロジックが得意な方が多く、そもそも向いている人が多い
ただ前提として、これら全てのスキルセットを持ち合わせている人材でなければ難しいというのはあります。なので、このような業務に慣れていない人にいきなり「君は今日からグロースエンジニアね!」と言っても、なかなか難しいものかと思います。また、そもそもこのような業務内容に関心のあるエンジニアでなければ、ミスマッチが起こってしまい、なかなかきついものかと思います。
一方で、このような業務内容に興味のあるエンジニアであれば、割とすぐ必要最低限なスキルは身につくような気がしています。もちろん人によるとは思いますが、例えば話したPinterestのGrowth engineerは「3ヶ月ぐらいで慣れたよー」なんて言ってました。
まとめ
プロダクトのグロースに密に関われるし、インパクトも見えやすいので、結構面白い業務内容だなーと思います。僕もまだたまーに自分で考えた施策をそのまま実装してリリースしたりしてますが、やっぱり楽しいです。
日本でもいつかこのようなエンジニアが増えてくるのかなーとも思います。(もちろん、スタートアップ で勤めてるエンジニアだと当たり前のようにこのような働き方をしてる方もいるかと思います。)
また、シリコンバレー流のGrowth team(気が向いたら別記事でこれについて書きます)が日本でも増えていくとともに、この記事で書いたようなエンジニアが増えていくのかなーとも思いました。
参考までに、Growth engineeringに関してのリンクをいくつか↓
・Growth Engineering Meetupの録画
・Growth Engineering at Netflix — Accelerating Innovation
・PinterestのGrowth engineerのブログ (いつか翻訳しようかな)
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