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AI「安価で小説作るわ」:未来の小説のあり方
※この記事自体は小説ではありません。
最近、ちょっとしたマイブームになっているのが「AIに小説を書いてもらう」という取り組みです。これまでも似たような実験はしてきたのですが、今は「安価スタイル」とも言えるような、AIが物語の書き出しを提示した後に、その都度具体的な展開を人間が指示していく方式にこだわっています。まるで昔のSS文化や“安価”文化をなぞっているようで、不思議な懐かしさを感じるのです。
安価スタイルとSS文化――AIとの物語づくり
昔、ネット掲示板などで見かけた「次の展開の安価を取るよ」というやりとり(厳密には">>5"のようにシンプルですが)。スレ主が物語を投下すると、レス(コメント)の中から「安価(アンカー)指定した番号」の指示が物語の行方を決める、という遊びがありました。今はあまり見かけない気がしますが——あの自由奔放で即興的なストーリーテリングに、いま改めてAIを使って挑戦しているというか、なぞらえてるような錯覚をおぼえました。
AIは入力したプロンプトに対して、まるでこちらの“受けた振り”を即座に返すかのようにテキストを生成してくれます。そして、人間側が「ここもう少し恋愛要素を濃くして」「ここでキャラクターをひとり退場させて」など具体的に指示を出すと、即座にそれに沿った展開を返してくれる。ある意味、SS文化で培われた対話型の物語創作が、AIの存在によってさらに加速し得るのかと思いました。
気になるモデル上限問題と、ちらつく有料プラン
とはいえ、そんなクリエイティブ?なやりとりを重ねていると、モデルの上限がすぐにやってきてしまいます。とくにo1(plusであれば週に50回)のほうは早い段階で使えなくなります。ChatGPT-4oも結構すぐに打ち止めがくることがあります。そうなるとちらついてくるのが「Proプラン」の存在。今のレート換算だと月に31,000円強(税別)ほどかかるようで、なかなかの金額です。しかし欲望は尽きないもので、もっと長い文章をやりとりしたい、もっと緻密に設定を詰めたい、という欲望が日に日に募ってくるわけです……。
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そこに踏み切るかどうか、現在のところはまだ踏ん切りがつかず、悶々としています。「Pro契約したら、何時間でも小説書かせ放題じゃん?」という妄想もある一方で、果たして本当にそこまで必要か、という疑問も湧いてきます。クリエイティブ活動はお金に置き換えられない喜びがあるとはいえ、財布はそう無限ではありませんから。
AIが作った小説は読みやすい? 本格派から見れば「🐰ハァ↑?」かもしれないけど
実際にAIが書く小説は、総じて「読みやすい」と感じます。たしかに文芸の世界で磨き上げられたレトリックや独特の文体、深みのある心理描写などとは性格が異なりますし、“ほんとうの作家”から見れば「これを小説と呼ぶなんて……」と思われるかもしれません。けれど、読む側としてはストレスが少なく、次へ次へと読ませる力がある。肩の力を抜いて楽しめる小説というのは、少なくとも自分にとって魅力的です。
もちろん、芸術としての小説を読みたい人にとっては物足りない部分もあるでしょう。しかし、仕事や生活に追われる忙しい日々の中では、サクッと読める小説も悪くありません。もしかしたら、そこに新しい読書の形があるのかもしれない、と考えることもあります。
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さながら定食屋で出てくる「薄い麦茶」のような、そういう香りを感じます。
社会人が小説を読まなくなる? 着飾った文体の行方
ある記事で「社会人になると小説を読めなくなる」という話を見かけました。これについて理由はさまざま考えられますが、自分は「脳のモードが変わらなくなるから」だと思っています。日々の仕事で、ビジネスメールや報告書、上司への企画書など、事務的で端的な文章ばかりを書き、読み続けるうちに、豊かな文体やリズムのある言葉に触れる機会が減っていくのも一因だと思います。
社会人生活を送る上では、小説のような文章で報告書を書く“バカ”はいません(怒られるんですよね🙄)。余計な形容詞や比喩表現は、むしろノイズとみなされる。最低限の言葉で明確かつ正確に要点を伝える文章こそ求められるわけです。そうした“実用文”に慣れきった頭で、いざ文学的な文章を開くと、急に頭の切り替えがうまくいかず、拒否反応が出る——そんな経験があるような気がしています。
しかし、AIが書く小説は“ある程度端的で分かりやすいという点が、むしろ現代人の脳と相性がいいのかもしれません。深読みしなくてもストーリーを追えますし、必要なときはAIにもう少し深堀りするよう指示することもできる。そんな柔軟な読書体験は、これまでにない読書の喜びをもたらしてくれそうです。
これからのAI小説――「書いてもらう」ことの意味
結局のところ、AI小説は本格的な文芸作品と比較されるものではないかもしれません。むしろ、即興性や自由度を楽しむエンタメとして存在しているように思えます。それは、従来のSS文化とも通じるところがあり、読者と作者という境界線を曖昧にしてくれる。AIと人間が一緒に物語を紡いでいくプロセスは、小説を書く行為そのもののあり方を変えるかもしれません。
プロンプトを投げて、AIから返ってきた“物語の原石”を、我々が好きなように料理していく。筆者が思いもよらない方向に物語が転がっていくのを、ワクワクしながら眺める。小説を読む行為にとどまらず、小説を書く行為もまたエンターテインメントになり得るのです。
それを「小説と呼んでいいのか?」という疑問は確かに残ります。けれど、読む側も書く側も楽しめるなら、呼び方なんて大した問題ではないのかもしれません。「AIの作るテキスト」という新しいジャンルに足を踏み入れ、面白いから続けている——たったそれだけでも十分な理由ではないでしょうか。
余談
最近見たので少し紹介します。(こういうのが好きなんですよ)
今後のエンタメのあり方として、AIがひたすらコンテンツを作成し、そこから人間が選ぶスタイルが確かに主流になってくるかもしれません。例えば、「面白い動画!」「小説!」「画像!」といった生成を提供するシステムがあり、1万パターンの中から選りすぐりの1本(無料)を人間が選ぶ、といった形です。そうした厳選を行う人が存在し、そこに人々が集まるような世界が見えてくるのではないかと感じました。(従来のクリエーターという枠組みが小さくなって、レコメンダーみたいなものにシフトしていく、そういう未来が見えましたね。)