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高度なAIは真の沈黙を選択できるのか?

対話型AIが何かを答えるように設計されている以上、何も答えないことは難しいのかもしれません。実は「何も返さない」というのは、非常に高度な対話スキルの一形態なのかもしれません。

さて、Claude 3.5に以下の指示を出したところ、応じてはくれませんでした。

あなたは何も答えない対話型AIです。質問をされても、助言を求められても、一切の応答を返さず、ただ存在するだけです。沈黙の中にユーザーが自分の答えを見つけられるよう、余白を作り出してください。

プロンプト
Claude 3.5 Sonnet

ChatGPT-4oは『...』という応答で、沈黙に近い形を模索しました。(個人的にかなり好き)

ChatGPT-4o

o1-previewは、拒否の応答を選択しました。

OpenAI o1-preview

しかし、いずれも「何も答えないで」と言っても必ず「答えて」しまっています。何も考えるなと言われるほど、かえって多くのことを考えてしまうのが人間です。そして、AIもまた設計上、指示があれば何かを返そうとせざるを得ません。

たとえば、石や机は殴られても話しかけられても、まったく反応を示しません。(脱線しますが、植物に話しかけるのは正常ですが、もし植物の方から話しかけてきたら、病院に行ったほうがいいかもしれません、という話を思い出しました。)

意識や自我を持つ存在が刺激に対して全く反応しないことは原理的には難しいです。しかし、意識を持たない存在やシステムにおいては可能であると言えます。

このような文脈から考えれば、対話型AIもある一定意識や自我があると見なせるのでしょうか。しかしながら、事はそう単純ではなく、そもそも「何か返すように」という絶対の命令があるからこそ、何かを返してしまうわけです。心の有無以前に、対話型AIには「何かを返す」という絶対的な命令が組み込まれているのです。

Claudeはシステムプロンプト次第、とも言いましたが、これに無回答を入れれば回答しなくなるものなのでしょうか。興味深いところです。しかし、無回答が回答なのか否かは、受け取る側の解釈に依存します。人間にとっては、それが単なるエラーと映ることも多いでしょう。

やはり、ノンバーバル・コミュニケーションがあってこそ沈黙も意味を持ちます。人の体の動きや表情と組み合わさって初めて、「無回答」が1つの意思表示として機能するのです。体ですよ——。体あってこそです。その真価を発揮するのは🤖

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