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プロンプトエンジニアリングという虚構

前々から、確か昨年あたりにもどこかで書いた記憶がありますが、自分は「プロンプトテクニック(プロンプトエンジニアリング)」という言葉が妙に持ち上げられる風潮に、ずっと疑問を感じていました。これだけ(対話型の)生成AIが進化して、GPT-4クラスのモデルが「人間並み、あるいはそれ以上」に文脈を理解できるようになってきた現在、わざわざ「工夫されたプロンプト入力」そのものに固執する意義はどれほどあるのでしょうか。折角なので、ここで改めて自分の考えをまとめておこうと思います。

↓これを読んで、ああ、自分も書いておくか、と思いました。ただ、この辺の話題は立場上微妙なので、何かあったらこの記事は消すかもしれません🙄


プロンプトエンジニアリング不要論の背景

まず、一般的なビジネスパーソンが生成AIを日常的に活用するシナリオを考えると、複雑なプロンプト設計はもはや必須ではなくなっています。なぜなら、優れたAIサービスはユーザーエクスペリエンス(UX)の最適化によって、ユーザーが「難しいプロンプト」を頭をひねって考えなくても、自然な言語で欲しいアウトプットを得られる設計を進めているからです。

GPT-4ほどの高度な言語モデルであれば、いちいち「#定義」のような特別な記法や複雑な指示をしなくても、こちらの意図をある程度的確に汲み取ってくれます。要するに、「プロンプトを極める」こと自体が特別なスキルではなくなりつつあるのです。

テンプレ仕事とプロンプト礼賛への違和感

「プロンプトテクニック」を誇示する人々もいますが、その多くはAIが容易に代替可能なパターン化されたタスク領域にのみこだわっているように見えます。もしプロンプトの工夫程度で最適化できるような仕事であれば、遠からずAIがその領域を自動化してしまうでしょう。

テンプレ化した業務そのものに光を当て、「このプロンプトさえ使えばOK!」といった発想は、クリエイティビティや発想力を重視する時代にはあまり価値を持たなくなっています。要は、プロンプトテクニックをヨイショしている人が行っているタスクは、どこまで本質的で、付加価値を生むものなのか? そこには多くの疑問が残ります。

噛み砕くと、「素晴らしいプロンプトテクニック!」といったコメントは忖度か、「あぁ~!水素の音ぉ~!」と優位な差は無いように思います。

本質的に求められる力とは

では、これからの時代に求められるのは何か。自分が強調したいのは、「問いを立てる力」と「モデルを使いこなす戦略的思考」、そして「独創的な視点」です。

  • 問いを立てる力:そもそも、何が知りたいのか、何を作りたいのか、その問題設定を的確に行う知性が重要になります。的外れな質問をいくら巧妙なプロンプトで包んでも、中途半端な答えしか得られません。

  • モデルを活用する能力:生成AIは単なるツールに過ぎません。その可能性を引き出すには、どんなタスクに適用するか、どう情報収集するか、他のツールと組み合わせるかといった、組み合わせ「使いこなし方」が鍵を握ります。

  • 独創的な視点:AIがすでに既知の情報やパターンを網羅している時代、人間に求められるのは新しいアイデアや、他者が気づかない切り口です。そこにこそ価値が生まれ、競合優位性が生み出されるのです。

具体と抽象のストレッチ

より本質的な部分に踏み込むと、生成AIとの対話で真に重要なのは「具体と抽象のストレッチ」だと考えています。これは単なる知識の習得や業務での活用を超えた、より高次の思考法です。

例えば、ある分野について学ぶ際、まず基礎的な学術知識を身につけ、それを業務に応用するというのが一般的なステップでしょう。しかし、そこで留まっていては真の創造性は生まれません。より高次の段階として、具体的な事象から抽象的な概念を抽出し、さらにそれを新たな具体へと展開していく——このサイクルこそが、創造的な思考を生み出す源泉となります。

これは例えば、小説を書く際の想像力であったり、新しいビジネスモデルを構想する際の発想力として現れます。具体的な観察や経験から普遍的なパターンを見出し(抽象化)、そこからまた新しい具体的なアイデアを紡ぎ出す(具体化)——このような思考の柔軟性こそが、AIと協働する時代において決定的に重要になってくるのです。

生成AIは、この具体と抽象のサイクルにおいて、自分たちの思考を補助し、拡張してくれる強力なツールとなり得ます。しかし、そのサイクル自体を司るのは、依然として人間の創造的な知性なのです。

例外的な領域:バックエンドでの最適化

もちろん、すべての状況でプロンプト工夫が無意味になるわけではありません。小規模なLLMを扱う場合や、特定ドメインで数%のパフォーマンス向上が事業の明暗を分けるような専門的なプロジェクトでは、プロンプト最適化が依然として有効です。

しかし、それは一般的なユーザー視点から見れば「裏方の作業」であり、ユーザー自身が過度にプロンプト技術に精通する必要はないでしょう。その専門的な最適化は、もはやサービス開発者や研究者、エンジニアの領分です。

まとめ

去年も似たようなことを書いたかもしれませんが、そこから時が流れ、考えはさらに明確になりました。プロンプトエンジニアリングという一過性のトレンドにしがみつくのではなく、より本質的な「問いを作る力」「独創的な視点」を磨くことが、これからの生成AI活用においては決定的に重要だと思います。

生成AIは、もはや「どう聞くか」より「何を聞くか」、そして「その答えをどう生かすか」が本質的な課題となっています。その意味で、プロンプトテクニックに固執することは、価値創造から一歩遠ざかってしまうのではないでしょうか。これからは、個々人がよりクリエイティブな問いかけを行って、生成AIの知性を最大限に引き出す方向にシフトしていくべきだと、私は強く思います。

余談

最近また自作短編小説も出すようにしていますが、こういったものも回り回ってその訓練なのでしょう。一概には言えませんが、業務においても良いアイデアが生まれやすくなった気がします。こういった取り組みはドンドンやりたいですね!

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