ストロベリー問題:AIと人間の知能
以下の記事が気になり、自分なりに調べて考察を深めてみました。
https://venturebeat.com/ai/the-strawberrry-problem-how-to-overcome-ais-limitations/
元記事の結論においては、「この実験が示しているのは、モデルが理解や推論ができる『知能』ではなく、パターンマッチングによる予測アルゴリズムである」という主張がされています。これ自体は技術的に正しい指摘だと思いますが、このような言い回しが、読み手にに誤解を与える可能性があると感じました。つまり、「AIには知能がない」という印象を与えかねないのではないかという懸念です。
自分自身、この主張に反対するわけではなく、むしろ元記事がAIの特性を理解し、それを効果的に活用することの重要性を説いている点には共感しています。ただし、「知能」という言葉が持つ多様な意味を考慮しないと、AIの真の可能性を見落としてしまう恐れがあると感じました。そのため、この記事では「知能」の概念を多面的に捉え、AIの能力と限界について、より広い視点から考えてみたいと思います。
→AIと人間の知性のセクションに続きます。
試してみた
さて、結論から言いますと、自分が試したところ以下の結果となりました。
ChatGPT-4o:正解
OpenAI o1-preview:正解
Claude 3.5 Sonnet:失敗
OpenAI o1-preview
↓スクリーンショットが全てですが、一応やりとり全量を掲載します。
ChatGPT-4o
↓前半の問いに対してはハルシネーションとなったため、スクリーンショットでは省略しています。やりとり全量は下記リンクを確認ください。
Claude 3.5 Sonnet
やりとりは全量リンク化できないので、一部抜粋です。
AIと人間の知性
まず前提として、元記事が述べるように、LLM(大規模言語モデル)がパターンマッチング予測アルゴリズムであるという指摘は技術的に正確です。しかし、それをもって「AIに知能がない」と断じるのは、知能という概念を単一の軸で評価することにつながりかねません。そこで、心理学者ハワード・ガードナーの多重知能理論(Multiple Intelligences Theory)を参考に、AIと人間の知能をより多面的に理解するアプローチをとってみます。
多重知能理論の概要
ガードナーは、従来の知能(IQ)のように一元的な評価ではなく、知能は複数の種類があると提唱しました。以下の8つが代表的な知能です:
言語的知能(Linguistic Intelligence):言語を使う能力
論理数学的知能(Logical-Mathematical Intelligence):数や論理を使って問題解決する能力
空間的知能(Spatial Intelligence):空間を視覚的に把握する能力
身体運動的知能(Bodily-Kinesthetic Intelligence):身体を巧みに使う能力
音楽的知能(Musical Intelligence):音楽を理解し表現する能力
対人的知能(Interpersonal Intelligence):他者の感情や意図を理解する能力
内省的知能(Intrapersonal Intelligence):自己を理解する能力
自然主義的知能(Naturalist Intelligence):自然界のパターンを理解する能力
多重知能の視点から見たAIの限界と可能性
LLMが持つのは主に「言語的知能」に相当する能力です。人間が複雑な文章を理解し、言葉を駆使するのに似た形で、AIはトークンを使って意味を推測し、文章を生成します。一方で、単純なカウントや論理的推論に失敗することは、「論理数学的知能」に弱点があることを示しています。ただし、この弱点は、AIに「知能がない」と判断する理由にはなりません。
また、例えば音楽的知能や身体運動的知能といった人間特有の能力に関しても、AIは異なる形で優位性を発揮できるでしょう。音楽の自動生成や、ロボット工学を通じた動作の最適化などです。これにより、AIは人間の限界を補い、協力して問題を解決することが可能です。また、AI同士でも限界を補って、「個」となり得ると考えられます。例えばChatGPTに画像生成を頼むと、DALL-Eが動作します。数学的に正しいことを望む場合、Pythonコードを書かせて実行させることができます。
「知能の全体像」を捉えることの重要性
単一のミスや弱点をもって知能を判断するのは、全体像を見誤る危険があります。人間もAIも、それぞれに得意・不得意があり、多面的な視点で評価することが必要です。たとえば、AIが論理的なタスクに失敗しても、他のタスクでは高いパフォーマンスを発揮することがよくあります。
ガードナーの理論を参考にすれば、「AIがカウントできないから知能がない」とするのではなく、どの領域で知能が発揮され、どの領域に課題があるのかを見極めることが重要になってきます。そのうえで、AIと人間の異なる知能を組み合わせて、協力して新しい解決策を見つけることが、未来の共存の鍵となるでしょう。
余談:AIの成長と人間の新たな価値
たとえ有料版であっても、現時点のAIはまだ完成形には遠く、いわば「ベータ版」のような存在と言えるでしょう。使う人々は皆、テスターの役割を担っており、AIの成長を見守りながら共にその可能性を引き出しているのです。
人間もまた、成長の途上にあります。これからAIが課題を次々と克服し、より高度なタスクをこなせるようになれば、人間は新たな挑戦をどこに見出すべきか悩むことになるでしょう。その中で、AIと共に進化し、新たな価値を創造していくことが求められるのかもしれません。
このような協働の未来を見据えることで、私たちは「AI vs 人間」という対立の枠組みを超え、共に成長する道を見出せるのではないでしょうか。人間がAIとどのように共存し、新しい世界を築いていくのか──それがこれからの私たちに課された最大の課題であり、同時に最大の可能性でもあります。
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