初めてのフィットネスに行った女の話

さて、初フィットネスである。

通い慣れたおばあちゃん達に混ざって着替えを済まし、カウンターで予約の旨を伝えると爽やかなお兄さんが現れた。トレーナーである。

体成分分析をおこない、結果を見ながらの面談が始まる。

「朝は何時に起きますか?」
「8時9時には…」
「食事は?」
「朝は食べないでお昼は家で食べたり学食で済ませたりします」
「夜は?」
「コンビニ弁当かサラダです」
「間食は?」
「自分からはしないようにしてます」
「…お酒は?」
「あ~~~飲みますごめんなさい…」

さながら取り調べである。

「結構お酒飲みます?」
「飲みます…」
「どういうものが多いですか?」
「ハイボールが多いですけど甘いお酒も飲むし焼酎も日本酒も飲みます…水みたいに飲みます…」
「おつまみは?」
「食べます…」
「揚げ物は?」
「あれば食べます…」
「まあだいたいありますもんね」

鋭い尋問をするトレーナーと項垂れる女を横目に不思議そうな顔でおじいちゃんが通り過ぎて行く。

「この食生活で太るはずがないので完全に全ての原因はお酒ですね」
「お酒」
「日本酒はお米飲んでると思ってください」
「お米」
「メロさんはお米を水みたいに飲んでいます」

OKOME WO MIZU MITAINI !

凄まじい衝撃を受けていると、トレーナーが今度は結果表を指さした。

「体成分分析の結果としては筋肉量がハンパじゃないです。特に腕が凄いですね。アスリート並みです。何か運動されてました?」
「全く…」
「腕立てだけ死ぬほどやったりもないです?」

それは一体どういう状況なのか

「吹奏楽部で6年間打楽器で力仕事を少し」
「あ~筋肉つきますねえ」

では、目標の体重減少と手足を細くするメニューをお教えしますねとトレーナーが立ち上がる。

トレーナーという生き物は総じて「褒めてアゲて追い込む」という行為が死ぬほど上手い。

「フォーム完璧です!」「いいですねえ!」「まだいける!」「あと5回で休憩しましょう」「あと2回!」「これでラストです!」「はいラスト!」「次でラスト!」「ラスト!」

その代わりいつまで経ってもラストは来ない。

程よく汗をかき、次回の予約をして大浴場へと向かう。
頭にタオルを乗せたさながらニホンザルのようなおばあちゃん達と一緒にお湯に浸かった。
さっきからおじいちゃんおばあちゃんしかいない気がする。時間帯のせいだろうか。

さっぱりとした気持ちで退館する。
これなら続けられるかもしれない。

それにしても備え付けのリンスインシャンプーを使ったらめちゃくちゃ髪の毛がサラサラになった。
正直、今日一番の収穫である。

お風呂にだけでも入りに行こうかしら。


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