見出し画像

RAID 5/6の誤解を解く:データ保護のための正しい理解とは?

RAID(Redundant Array of Independent Disks)は、複数のディスクを組み合わせてデータの冗長性やパフォーマンスを向上させる技術として広く使われています。中でもRAID 5RAID 6は、パリティ情報を利用して、RAID5は1台、RAID6は2台のディスク故障に耐えられる構成です。しかし、これらのRAID構成をもって「壊れない」「バックアップになる」といった誤解に多々遭遇してきました。

この記事では、RAID 5/6の本質的な役割注意すべき問題点を整理し、データ保護における正しい理解を目指します。



1. RAID 5/6はバックアップではない

RAID 5/6は、ハードディスク故障に対する耐性を向上させるものであり、バックアップの代わりにはなりません。

RAID 5は1台の故障、RAID 6は2台の故障に耐えられるように設計されています。しかし、誤操作やウイルス感染、ランサムウェアによるデータ破壊、自然災害には無力です。

「バックアップ」とは、データを別の場所に完全にコピーして保存することで、データを保護するものです。RAID 5/6が提供するのはハードウェア障害への耐性であり、データの保護ではありません。

したがって、RAID 5/6運用中でもバックアップは必須です。

2. RAID 5/6のディスク負荷と寿命への影響

RAID 5/6では、データの分散とパリティの保存により、ディスクの負荷が増加し、寿命が短くなる可能性があります。

RAID 5/6では、データを全ディスクに分散して記録し、パリティ情報(データの整合性を確認するための情報)も保存します。そのため、1つの書き込みで実際には複数回の書き込みが発生します。

その結果、ディスクにかかる負荷は通常の1台のディスク運用と比べて2倍以上になることが多く、ディスク故障のリスクが高まります。

3. 大容量RAIDシステムのリスク:故障率が増加する

大規模なRAID 5/6システムでは、ディスクの本数が増えるにつれて、システム全体の故障率も掛け算的に増加します。

例えば、16台のディスクを使ったRAID 6システムでは、以下のようなリスクがあります:

  1. 各ディスクに3倍の負荷がかかる

  2. 16本のディスクが直列で配置されている

  3. 結果として、理論上はシステム全体がディスク一本に比べ48倍故障しやすくなる

また、RAID 6では2台の故障まで耐えられますが、再構築中(故障したディスクのデータを新しいディスクにも分散する過程)にさらに故障が発生する可能性もあり、ディスクが多くなるほど故障リスクは高まります。

4. ホットスペア(HS)の導入でシステム信頼性を向上

大規模なRAID 5/6システムでは、ホットスペア(HS)の導入が必須です。

ホットスペアとは、ディスクが故障した際に自動的に再構築が始まる予備ディスクのことです。ホットスペアがないと、手動でディスクを交換するまで再構築が始まらず、その間に新たなディスク故障が発生するリスクが高まります。

例えば、8TB×16台のディスクを使ったRAID 6システムを24TB×7台のRAID 6+1HS(ホットスペア)に変更すると、システム全体の故障率は3/8と大きく改善されます。

総容量あたりのディスクの本数を減らすことは、障害回避に大きく役立つため、信頼性の向上に繋がります。さらに、HSにより、故障時にシームレスに回復に向けて対応できるため、危機的状況を最短化できます。


5. RAID 5/6運用における正しい理解と適切な設計

RAID 5/6は強力な技術ですが、それだけで完璧なデータ保護を実現できるわけではありません。

ディスクシステム全体としては信頼性は下がっていることに注意が必要です。

RAID 5/6を効果的に活用し、データを適切に保護するためには、以下の点を考慮します:

  1. 定期的なバックアップの実施

  2. ホットスペアの導入

  3. ディスク負荷を考慮したシステム設計

  4. 定期的なディスク健康状態のチェック

  5. 迅速なディスク交換と再構築の実施

これらの要素を組み合わせることで、初めて信頼性の高いシステム運用が可能になります。

結論

RAID 5/6は確かにディスク障害への耐性を提供する強力な技術ですが、それだけではデータ保護として不十分です。重要な点として、RAID 5/6では、必ずHDD1本あたりの故障率より、システム全体の故障率は著しく下がります。しかし、だからこそ、その下がった故障率に対する保護対策の強化が必須なのです。

この認識に基づき、以下の方策を組み合わせます:

  1. 定期的なバックアップの実施

  2. ホットスペアの導入

  3. ディスク負荷を考慮したシステム設計

  4. 定期的なディスク健康状態のチェック

  5. 迅速なディスク交換と再構築の実施

  6. システム全体の故障率を考慮した冗長性の確保

RAID 5/6を正しく理解し、適切な設計を行うことで、ストレージシステムを効果的に運用しつつ、データ保護のための総合的なアプローチが必須となります。システム全体の故障率が下がることを、さらなる保護対策で補強することが必要です。

常に最新の技術動向にも注目し、必要に応じてシステムを更新することも忘れずに。RAID 5/6の特性を十分に理解し、その利点を最大限に活かしつつ、潜在的なリスクに対しても適切に対処することで、初めて、強固なデータ保護体制が整います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?