浅草WINS
数年ぶりに浅草のWINS(場外馬券発売所)へ行った。
コロナも落ち着いて、浅草の街にも外国人の姿が多く見られており、WINSにも数年前の賑わいが戻っていた。
都内のWINSは数多くあるが、悪名高き浅草WINS。何もないことはないだろうと思って行ったが、やはり何もないことはなかった。
メインの桜花賞を買うべく15時前にWINSへ行き、中山10レースから観戦。やや荒れたレースの結果画面を見ていると、急に横から声をかけられた。
前歯が2本ない典型的な馬券ジジイだった。恐らく直近のレースで少し大きい配当を取ったらしく、手元には少なくない札束(1000円札がほとんど)を持っていた。
「これでカツ丼が食えるよー」
彼の第一声はそれだった。突然声をかけられてカツ丼が食べられると言われても意味不明ながらも、場所が場所だけに何をしたいかは理解できた。
少し大きい配当を取ったことを誰かに話したかったのだろう、話しかけやすそうな人間を選んで声をかけたのだ。
声をかけられた自分も典型的な馬券親父に声をかけられたことが嬉しくてつい反応してしまった。
3万くらいあるよと言いながらその手にある札束には万札が3枚とたくさんの千円札があって、確実に5万以上はあるように見えた。
それを目の前で数え始めるジジイ。途中でうまく数えられないジジイと一緒に声を出して数えてあげた。
結果的に6万近くあったその札束をジジイは満足気に鞄へしまうと、昨日負けていてこの払戻で捲ったこと
、万馬券を狙いすぎるとよくないということを繰り返し語ってきた。そんなことは10年近く競馬をやっていれば分かりきっている。しつこいジジイに少しイラッとしたので、6万を桜花賞にそのまま注ぎ込むようにそそのかしたが、そのことに対する反応は全くなく同じことをひたすら繰り返す壊れたジジイになってしまっていた。
適当に返事をしているうちにジジイはつまらなくなったのか、離れていった。楽しかったけど、別に馬券ジジイからのアドバイスは求めてない。
桜花賞は外れたが、リバティアイランドが大外から突き抜けたリプレイを眺めていると、またも横からジジイに声をかけられた。
今度は歯抜けではなくスーツを着ているジジイだった。ただそのスーツがめちゃくちゃ汚れていた。よれまくっているし、シミがところどころについている。あぁ、浅草に来てよかったとまた思えた。
そのジジイはリバティアイランドを軸にして、三連単、ワイドを持っていたが、三連単は相手が漏れていて外れて、抑えのワイドは当たっていた。
ワイドで抑えていた鮫島が若手としては注目しているような話をされた。ジジイいわく、あとは坂井瑠星も買える若手らしい。まぁ、そんなことはここ一年競馬やっていれば分かる。別に桜花賞だけ買いに来たような初心者ではないことを説明すればよかったかもしれないが、ジジイが気持ちよく話すのを邪魔する必要もない。
三連単15点くらいとワイド8点くらい買ってたから、ガミっているジジイに厳しくはしたくない。俺が話を聞くことでジジイの鬱憤が晴れるなら5分程度は時間をあげたい。
皆さんもなんとなく寂しくなった時は近場のWINSへ行ってキョロキョロしたり、話しかけてくれオーラをたくさん出してみてください。
一人でいるジジイのそばでやれは間違いなく話しかけられます。コミュニケーションを取れるかは怪しいけど、少しばかり刺激的な時間を過ごせるでしょう。