埋蔵量評価
私は石油開発業界で技術系社員として働いている。今回はその仕事の一部について触れたいと思う。毎年1月は忙しい。年度末に向けて企業の資産となる埋蔵量評価を実施しなくてはならないからである。
読者の皆さんは埋蔵量と聞いてどんなイメージを持つだろうか。一般的には地下に貯留されている油ガスの量を想像されるのではないだろうか。日常会話の中では、その理解での使用で全く問題ないと思われる。しかし企業の資産としての「埋蔵量」を扱う場合には地下に存在する量以外にもいくつか条件を満たさなければならないのである。今回はそのあたりを簡単に紹介したいと思う。
まず石油開発業界における埋蔵量評価のスタンダードは「PRMS」というものである。これは企業の資産としての「埋蔵量」を定義しているもので、正式名「Petroleum Resources Management System」といい、米国の石油技術協会「SPE」が発行しているものである。米国証券取引委員会「SEC」が米国石油開発企業の埋蔵量開示義務で「PRMS」を採用しているため、これが世界標準となっている。
この「PRMS」は上記理由により企業資産価値評価の面が強いため埋蔵量に経済的視点を加えている。つまり地下に存在する量(原始埋蔵量)のうち回収可能な量(可採埋蔵量)の中で、さらに経済性が成り立つ量を「埋蔵量」と定義しているのである。これは言われてみれば当たり前で投資家が石油開発会社を評価する際に、開示されている埋蔵量が実際には赤字になって生産できない量も含まれた過大な量だとしたら、投資家は正しく企業評価することができない。つまり公開されるべき埋蔵量は経済性が成り立つ回収可能量であるべきなのである。よってPRMS.ver2018では「累計キャッシュフローが最大になる時点までの累計生産量」を「埋蔵量」と定義している。
では「埋蔵量」はどのように計算されるのか。私の認識では基本的に2つの方法がある。一つは生産実績を基に減退率を求め、数学的に減退カーブを引く方法であり、Decline Curve Analysis(DCA)と呼ばれているものである。もう一つは石油工学に基づく数値シミュレーションによる予測になる。特にまだ開発されていないフィールドでは生産実績がないので、こちらの方法が取られる。これらの方法で生産プロファイルを求めたら、操業費や開発費などのコストを求め、長期キャッシュフローを計算し、累計キャッシュフローが最大になる時点である「経済限界」を求め、「埋蔵量」を定めるのである。
さて長々と埋蔵量の定義や評価作業のフローをご紹介させていただいた。「PRMS」に興味がある方は以下のリンク先をご覧いただければと思う。プロジェクトベースのクラスサブクラス評価などより詳細を知ることができる。ただそこまで興味がない方が大半だと思われる。筆者としては「埋蔵量」は地下に存在する量ではなく、正確には経済性が成り立つ回収可能量であることだけでも頭の片隅に覚えていただければ幸いである。
PRMS.ver2018
https://www.spe.org/en/industry/reserves/
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