年金暮らしのロミオとジュリエット「金の糸」(ラナ・ゴゴベリゼ)
Facebook及びInstagramからの転載。
もうすぐ閉館してしまう岩波ホールで観ました。
ジョージアの映画。
監督は91歳だというので、ゴダールやイーストウッドと同年齢ということになります。けれど、全く力弱さを感じない秀作でした。本当に映画界には信じられないほどタフな製作者がいます。
観終わって、3年前に亡くなった認知症だった母と、母が認知症になったのは父の死と同時だったんですが、父のこと。両親のことを思わずにいられません。
母は認知症になると家から出なくなりました。父は病気になってからどんどん痩せていき、やはり私が外食にでも誘わない限り出かけなくなりました。つまり私の両親は、晩年のほとんどを自宅で過ごしました。
この映画の主人公は、老いたことにより同じ風景の中ばかりにいます。それは、不幸なことでしょうか。この映画は決して不幸ではないと描いています。
まさに「大人の映画」と呼ぶに相応しい、含蓄のあるセリフが深い余韻を残します。そして、ラストシーンのあまりの美しさには息を飲みます。人間の晩年を描いた映画としては、昨年の「ファーザー」に全く引けを取らないです。
時折、ジョージアの歴史の影が見え隠れしています。食卓を囲むシーンが複数あり、そういった所に異文化を観ることができます。世界は果てしなく広いです。
先週号のしんぶん赤旗日曜版に監督のインタビューが載ってました。赤旗日曜版は安いから詳しく読みたい人は一部売りで買っていただきたいですが、監督の母も映画監督だったんですが、スターリン時代に収容所に10年流刑され、父は処刑されたそうです。監督自身もソ連の検閲と闘ってきたとのこと。
いま、現代のスターリンというか、もっと悪質かもしれない某国の政治指導者が、世界中を恐怖と怒りと悲しみに覆っています。そんな意味でも、今観る価値がある映画でした。