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祖父母展について

私の祖父母は、父方の祖母を除いてもういない。
唯一父方の祖母が生きているが、目を開けているより閉じている時間の方が長い。
80年、90年以上生きてきた彼ら世代のことを知るのは、私の世代が最後になる。
そう気付いた時、彼らのことをもっと知りたい、伝えたい、と強く思った。

戦前、戦中、戦後という激動の社会のことや、昔ながらの生活の技術や知識…
そういう「大切なこと」も、もちろんだけれど。
もっとなんでもない…
例えば、ばあちゃんが昼ごはんに作ってくれたベチャベチャのインスタント焼きそばがおいしかったこと。
じいちゃんがよく童謡を大きな声で歌っていたこと。
一人の人間が産まれて死ぬまでの、どうってことない、けれど生きていたことがふんわり匂うようなものを、私は知りたいし、伝えたい。

祖父母展を考えたのは、こんな想いが始まりでした。

祖父母展といっても、大好きなじいちゃんばあちゃんを大切にしましょう、的なものにはしたくありませんでした。
じいちゃんばちゃんを大切にするのは確かに素晴らしいし、展示を見てそう感じてくれる人もいるのは嬉しい。
けれど、祖父母と孫の関係性は人によって全く違います。
一緒に住んでいる、一度も会ったことがない。
よく話す、何も話したくない。
大好き、大嫌い。
良くも悪くもとても近い存在の親。
その親である祖父母は、不思議な距離感があります。

様々な孫と祖父母の関係があり、いろんな人が生きてきた・生きている。
私が見せたかったのはその事実だけでした。
そこから何を感じとってくれるかは、来場者の方次第。

展示は生き物なのであの現場の空気までは伝えられないかもしれませんが、すばらしい作品や文章ばかりです。
どうぞ楽しんでいってください。

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