ゼロからのスペイン語で挫折しない方法
セールスコピーライターの谷本理恵子です。
ひょんなきっかけで、スペイン語の勉強をはじめたわけですが、「大人になってから、スペイン語を、まったくゼロからはじめる」となると、いったい何から手をつけていいのかわからない方が多いと思います(というか、私がそうでした)。
いろんな本を買ってみたり、語学学校に行ったほうがいいのかなと思ってみたり、検索してみたり、YouTubeを見てみたり…
いろいろと迷っているうちに、時間が経っているだけで、何も起こらないというのが、一番もったいない。
なので、「この順なら、絶対、後伸びする!」という、もっとも効率のいいおすすめの入門方法を、ご紹介したいと思います。
しかも、すべて市販の本だけで、完結する方法なので、安上がり。その上、「これなら飽きないし、挫折しにくいはず」という、ある意味、決定版的な内容です。
ちなみに、私が「どういうスタンスでスペイン語をやっているのか」という話は、こっちに書いています。
で、私は「スペイン語を教える仕事」をしているわけではありませんので、ものすごくシンプルだけど効果抜群な方法を、実際に使った本といっしょに、そのまま載せておきますので、ぜひ、騙されたと思って、やってみてください。これだけであなたのスペイン語、最短でいい感じに伸びていくと思います。
1 「人生を変える!スペイン語講座」
一番はじめにやるべきなのは、ごく短い会話の丸暗記です。といっても、「自分と相手との会話が2往復する」程度の長さのものを3つだけ。なので、暗唱といっても、身構える必要はありません。
英語の授業でも、はじめに「Hi! I'm Mike. Nice to meet you.(こんにちは、私はマイクです。はじめまして)」とか「Good morning. How are you?(おはよう。元気?)」的な会話が出てきたと思いますが、まさにあれ。今後も永遠に使うだろうやり取りですから、最初に覚える意味もありますよね。
ただ、どんな会話文でもいいわけではないんです。これ、「挨拶」を覚えるためにやるわけじゃないので。もちろん、結果的に「挨拶」や「自己紹介」もできるようになっちゃうわけですが、ここでやりたいのは、音や文法に慣れることなんですよ。
なので、あとあと必要になる要素が、まんべんなく含まれているものである必要があります。つまり、暗唱しているだけで、体感的に文法理解が進んで、あとで勉強したときに、「あー、あれね」と勘が働くようにしておくのが、すごく大事なんです。
こういう配慮の行き届いた文例って、実は「NHKラジオの語学講座(テレビではなくて、あくまでもラジオです)」が、すごく得意なジャンルなので、たまたま開講月に当たったなら(4月か10月スタートです)、「NHKラジオのテキスト」を覚えてもいいんですが、タイミングをはかるくらいなら(語学は積み上げ方式で学んでいくため、いきなり途中からだと厳しい)、さっさと、えみこ先生の「人生を変えるスペイン語講座」という本の最後についている文例を覚えた方が早いです。
本の内容は、エッセイ風といいますか、考え方やマインドセット的な内容がほとんどなので、賛否両論があるかもしれませんが(私は、この先生のYouTubeも好きなので文句はないのですが、Amazonレビューが割れている)、とにかく巻末付録が秀逸です(たとえ使うのがこの2ページだけであっても、やっぱりこのページの文章が一番いいと思う)。登録すれば、解説動画も見られるので、その音声を頼りに、完全になりきってスラスラ出てくるまで、暗唱しておいてください。
何しろ、これをやってるかどうかで、この先、挫折するかしないかが決まると言っても過言ではありません。いきなり文法とか、短文暗記とか、単語暗記とか、やっちゃダメなんです。理屈を知る前に、先に耳から音を入れて、口で真似できるようになっているというのが、後伸びする秘訣。なので、この時点では、ハッキリ言って「謎の呪文」なんですよね。でも、それでいいんです。細かい意味とか文法とかわからないままでいいので、とにかくこの部分だけを、ひたすら唱えて、完コピしてしまいましょう。
なんで最初に「呪文」が必要なのか?
実は、私は、小学校5年生のときに、NHKラジオの「基礎英語」を聞き始めました(結局、大学生まで毎日聞き続けました。私、けっこう真面目なんです)。それまで、英語を習ったことは、まったくありません(ちょうど英語教室が流行っていたので、私も習いたかったのですが、母の教育方針に合わず、叶えられませんでした)。つまり、文法も単語もまったく知らない状態で、いきなり会話文から入ったわけです。しかも、日本人の発音は聞いたことがなく、いきなりネイティブの発音に触れているわけですから、とにかく耳が頼りで、聞こえた通りに、自分でどうにかカタカナにしたりして覚えました。
はじめは、びっくりするほど覚えられなくて、本当に何度も何度も聞いて、何十回も何百回も発音して、どうにか覚えられるかどうか、というレベルです。当時のラジオは、1日3回放送だったのですが、少なくとも朝と夜との2回は聞いていましたし、時にはラジカセで録音して、とにかく、同じ発音とイントネーションで暗唱できるようになるまで、繰り返し頑張っていました。
なので、たとえば、私にとっては、英語の「Really?(ホント?)」は、「うぃうぃ?」として覚えたんですよね。「リアリー?」という日本人発音を聞く前に、音だけで覚えたからです。「Mr.Smith(スミスさん)」の発音も「ミスタ・スミッっフ」だと思ってたので、まさか「スミス」だとは思いもしませんでした。私にとっては、はじめから「th」の発音は「ス」じゃなかったので、むしろ、中学に入学してはじめて日本人の発音を聞いた時に、ものすごく違和感があったくらいです。
で、そんな一風変わった方法で英語の勉強をはじめたわけですが、このやり方が、後々、めちゃくちゃ威力を発揮しました。特段、何の対策もせずに受けた英検の面接でも、発音を褒められましたし(そもそも、対策をしなければいけないという概念すらなかったんですよね。何も知らないって怖い)、耳で覚えているわけですから、ネイティブの質問もすんなり頭に入ってきて、リスニングで苦労することもありませんでした。なにより、型が頭の中に入っている状態になっていましたので、何の苦もなく、その場でスラスラと英語で答えられたので、試験官の先生と話が弾んだことを覚えています。
特に、当時のNHKの英語講座では「今日の文例」の「単語」を入れ替えて文章を作る練習が必ず入っていたので、自分で変形させていろんな文章を作ってみるのが当たり前になっていたのが効果的だったようです。大学時代に、はじめての海外旅行に行ったときにも、自然と頭の中で、文章が組み立てられるようになっていたので、会話に困ることはほとんどなく、逆に、自分でも驚きました(同時に、一緒に行った友達たちが、英語を知らないわけではないのに、めちゃくちゃ苦戦していたのが、衝撃でもありました)。
ただ、残念ながら、この方法は、最初ほど、すごくキツイんです。音に馴染みがないので、はじめは、20回聞いても30回発音しても、すぐに忘れるはずです。逆に言えば、そんなもんです。
将来的に「知っている組み合わせの音」が増えてくれば、どんどん楽になってはいきますが、最初のうちは、まったくゼロからなので、本当に記憶の「引っかかり」がなくて、めちゃくちゃ大変だとは思います。その点だけは、あらかじめ覚悟しておいてください。
つまり、「今は、どうにかして最初の「引っ掛かり」を作るためなんだな」とある意味、諦めていただき、1日に何度も見て、空で言ってみようとしては、うまくいかないから、また戻って、繰り返す。今日こそ覚えられたと思ったら、次の日には、またびっくりするほど忘れている、というのを何度もなんども繰り返して、すっと出るまで、やりきっていただきたいのです。
「なんでこんな簡単な会話が覚えられないの?こんなに短いのに、嘘でしょ?!」と思いながら、1週間や2週間でもかかってよいですし、何なら1ヶ月かかっても、100回や200回やるつもりでも、問題ありません。だって、最初の最初で覚えられないのは、才能ないからじゃないんです。はじめてのことだから、無理ないよねってだけですから、ここで挫折しないのが最重要(なんでも、新しくはじめたときって、そんなもんですよね?車の運転とか料理とかスポーツとかも)。最初の壁さえ乗り切れば、あとはどうにかなるので、ここが1番の肝だと言えます。
そもそも「こんにちは!」からの挨拶は、ナチュラルスピードでさらっと出てこないと、実用性がありません。「えーっと」って悩んでいる暇はないので、それくらいやっていて、ちょうどいいとも言えます。今、英語で「Hi!」とか「Thank you!」って、まったく考えなくても、するっと出てくりのは、これまでの人生で何度も言ってきているから。もう反射的に使える。スペイン語でもこの手の会話は、それくらいにやり込んでおくべき表現なのですから、まずはゲーム感覚で、条件反射で無意識で出るくらいまで覚えきってみてください。
そんなに長い文章ではないですし、ごく簡単な短い文章ですから、絶対にできます。というより、できるまでやり続けるのですから、誰でもできるんです。
入門書や文法書には、本当にいろいろな文章があるので、どれを覚えてもいいような気がするとは思うのですが、私としては、「人生を変えるスペイン語講座」の196ページと197ページの会話を暗唱したのは、あとあと、ものすごく大きな意味を持ちました。さすが、プロスペイン語コーチが書いた本だけあって、めちゃくちゃ考え抜かれた文章になっていると思います。騙されたと思って、ぜひ同じことを、やってみてください。
ここで2週間くらい足止めを食らったとしても、絶対に、あとでこの貯金が活きてきます。ま、それくらいに、はじめは覚えられませんが、これをやるだけで、次からの勉強が、一気に楽になりますので、ぜひ。
2「基礎から学べる はじめてのスペイン語文法」
3つの会話文が、自然にスラスラと口をついて出るまでになってから、ようやく「教科書を使って勉強しよう」という段階に入ります。
ただ、面白くない本だと、続かない。それに、その本自体が、どんな組み立てになっているのかも、超重要です。だって、最初のうちは余裕がまったくないので、最低限の文例だけに絞って欲しいけれど、できれば、将来的に応用しやすい文章になっている方がいいわけですし、普通に勉強しているうちに、自然と知っている単語が増えていって、いろんなことが言えるようになりたいですよね。
そんな、わがままな要望を叶えてくれるのが、この「基礎から学べる はじめてのスペイン語文法」という本です。
何がいいって、カラーでイラスト入りなので、優しい色合いを見ているだけで、気分が楽。勉強してる感がなくて、楽しい。しかも、徐々に、使用単語が増えていく積み上げ方式なので、あえて覚えようとしなくても、いろんな単語を自然に覚えてくるし、解説もわかりやすい。各項目のバランスの取り方なども、独学のテキストとして、非常に使いやすいんです。
各ページにQRコードがあって、「今日は、このページ勉強しよう」と思ったときに、音声にアクセスしやすいのも、ちょっとしたことのようで、すごくありがたいポイントです。無駄な動きゼロ。さらには、各例文の各単語の下に単語としての意味がすべて書かれていたり、カタカナで発音が書かれているだけでなく、アクセント位置が点で示されていたりと、初学者にとって、ものすごく使いやすい工夫が随所にあります。
1講あたりの分量も、隙間時間に1講ごと進めていくのにぴったりですし、途中に何度かある「読んでみよう!話してみよう!」という会話文も秀逸。結構早めのナチュラルな感じの音声で、それまでに学んだ文法項目がすべて織り込まれているので、この部分は、暗唱を目指して練習するのにも、ちょうどいいですし、実際に使いそうな雰囲気の会話になっているので、「これ覚えたい!実際に使いたい!」と気分も上がります。他の例文も、とにかくよく考えられていて、限られた単語を駆使して、よくぞここまで実用的な形に持っていったなと思うくらいです。
要するに、この本は、単なる文法書ではなく、実際に話せるようになるためのステップがちゃんと踏まれていて、「ひたすら真面目に何度もやれば、絶対に話せるようになるはず」と思える、素晴らしい入門書になっているわけです。
もし1冊だけ買うなら、絶対にこの本でしょう。まずは、この本を隅から隅まで、とことんやり切るのが、おすすめです。
3 「キクタン スペイン語入門編 基本500語レベル」
「単語集」の使用には、賛否両論あります。なので、使い方次第かなというところ。
私は、基本的に、単語を覚えるためには、使いません(高校時代に朝の英語小テスト対策でやったときだけですかね)。だって、「日本語の単語」と「外国語の単語」が「1対1で対応する」なんてことは、まずないんです。微妙に概念が違ったり、カバーしている範囲が違ったりするので、日本語訳を覚えようとすること自体に、無理があると思うんですよね。
なので、「キクタン」は主に、家事などをやっているときの、聞き流し用です(料理とか洗濯とか庭仕事とか)。なにしろ、文法の本なんかは、自分自身が「勉強しよう」というモードに入っていないと、音声だけを聞いても流れてしまって記憶に残りにくく、あまり意味がありませんが、チャンツ(リズミカルな音楽に合わせて覚える形式)で、動詞の活用を口ずさんだりするのは、口の体操というか、筋トレ的に意味があるはずです(動かし慣れていないと、いざというときに突っかかって、うまく発音できないんですよね。しかも、スペイン語の動詞の活用を瞬発的に出るようにしたいとなると、これまでにない脳の回路を繋がなきゃいけないですし)。
ただ、ちょっとした体操のつもりでやっていたとしても、少しずつ音や単語を覚えてくるものなので、結果的には、文法の本を見たときに、わからない単語が減ってくるというオマケつき。いろいろな方面で、勉強が楽になってくる、という意味では、ちょっとした空き時間で取り組んだり、ながら勉強をする時に、おすすめかなと思います(ちなみに、私にとっては、英語のキクタンは相性悪かったので、今のところ、動詞活用が重要なスペイン語限定でのおすすめかなとは思います)。
時期としては、私自身は「基礎から学べる はじめてのスペイン語文法」を半分くらい終えた段階で、「キクタン」を併用しはじめました。そのあたりまでいくと、例文などに使われる語彙数も増えてきて、だんだん覚えきれなくなってくるので、別の方法も混ぜていくほうが、総合力が上がる、という感覚です(しかも「キクタン」って、基礎的な文法がわかってないと使えない本なので、いきなりでは無理。まったく目立ちませんが「動詞」の各見出し語の下に数字があり、それが40ページからの「付録」の「動詞の活用表」に対応していて、これはこれで便利な作りなのですが、気づきにくくないですか?)。
なので、あくまでメインは「基礎から学べる はじめてのスペイン語文法」ですが、ずっとそれだけやってると飽きてくる。だから、もっと気楽に聞き流したいタイミングで、軽いノリのものも組み合わせよう、といった使い方で、ぜんぜん真面目にやってはいませんが、せっかくアルクの使い勝手の良いアプリで音声を流せるのですから、音や単語に馴染む目的で、何度も口ずさむには、ちょうどいいんじゃないかなと思っています。
ちなみに、完璧に覚えきるまで、ひたすら、ずっと繰り返すのがおすすめです(あえて次のレベルの単語集には進めない)。というのも、基礎語彙は、「聞いてわかる」では、全然ダメだからです。自分が「無意識で使いこなせる」ところまでもっていかないと実用性に欠けるので、見出し語を聞いた瞬間に、活用がお手本音声よりも先にスラスラッと出てくるところまで、もっていくべきでしょう。
ちなみに、私は、1日1つずつというよりは、広めに聞いて、何度も繰り返すようにしています。脳科学的に考えるなら、接触回数を増やすほうが記憶に有利だというのもありますが、ずっと同じものばかりをリピートしていると、脳がスルーしはじめる瞬間があるので、ある程度、緊張感をもって注意を向け続けられるくらいで、どんどん流していく方が効果的なんじゃないかと思っています。
ただ、さすがに「動詞」については、すんなり活用が出てくるまでもっていくとなると、1日に1日分ほどしか進められない(キクタンは今日の学習量が表示されている)。なので、前日や前々日の復習分を聞いたり、名詞や形容詞を聞いたりという感じで、広めに聞いて、それぞれの単語に触れる回数を増やすようにしています。
いずれにせよ、人間は、忘れる動物です。思い出す回数を増やすのが重要。
4 ゼロからスタートスペイン語単語 BASIC1000
普通は、「キクタン」か、この「ゼロからスタート」かのどちらかの単語集を使うと思うのですが、まったく方向性が違うものなので、私は併用してもいいんじゃないかなと思っています。
ただ、この本も、単語を覚えるためには、使っていません。こちらの本の音声は、文例の読み上げが入っているので、それ目当てです。日常生活で、この程度の文を、何も考えずに言えるようにしたいですから、さらっと出てくるまで練習しようということですね。
逆に言うなら、この程度の文章は、聞いた瞬間に、わかりたい。特に、文章の最初で、動詞の活用を聞いた瞬間に、動詞の意味だけでなく、すぐに主語とか時制とかが、パッとイメージできないと話がわかりませんから、「意識して考えなくても、文章全体の意味が即座にわかる」というところを目指しています。
なので、「キクタン」よりも、ちょっとハード。少しやる気があって、本を手元に置いている状態で、真似して読んでいくといったリピーティング教材のような使い方をしています。
言うなれば、「基礎から学べる はじめてのスペイン語文法」の補助教材的な位置づけです。文法書に出てくる文例には、どうしても限りがあります。すごく厳選された良い文章が掲載されてはいますが、とはいえ、もっとバリエーションがあった方が、練習になりますよね。なので、こちらで、練習量を増やそうという作戦です。
つまり、「定期的にやろう」と頑張るのではなく、「なんとなく音読したい気分の時にやる」という使い方をしています。たとえば、「ちょっと疲れているから、文法解説を読むのはキツイな。それほどHPが残ってないな」という時にやるイメージです。
いずれにせよ、「スペイン語の単語帳」って、「入門レベル」の人がいきなり手に取る系のものではないのでご注意ください。これが「英語の単語帳」だと、動詞とか名詞をそのまま覚えようとしても、どうにかなるんです。ほとんど変化しないので。
でも、スペイン語の場合には、どこに元の単語の名残があるのか不明なくらいに、形が変わっていきます(たとえば、原形「ir」という動詞が、私が主語だと「voy」に変わるというだけでも衝撃なのに、過去形になると「fui」やら「iba」になるとか、英語で言うところの現在進行形みたいな形になると「yendo」になるとか、もうカオス)。
なので、ごく基礎的な動詞の「直接法現在」の活用やら、「性数一致」やら、基本的な文の作り方が一通り頭に入ってから出ないと、意味不明すぎて使えません。これ知らないで、つい英語と同じ感覚で「まず単語帳を買ってみようかな〜」みたいになるから、余計に挫折する人を増やしちゃってる気がします。
スペイン語は、初級文法の理解が超重要。最初にルールを理解しないで、感覚でどうにかできるほど甘くはない。だって、すべてのルールが、これまで自分が知っている世界のものとは、まったく違うから。サッカーやるにしても、「手でボール触るな」とかいう最低限のルールは知っているべきでしょ?最低限のルールは、先に知ってた方が、絶対に便利だって。
5 NHKラジオのスペイン語講座
ここまでくると、一通り初級文法は見たことあるし、基礎的な単語にも馴染みが出てくるので、おそらく1年のうちのどんなタイミングで聞き始めたとしても、少なくとも「入門編の3日分」は、どうにか聞けるレベルになっていると思います。
NHKラジオの会話例は、非常によく考えられているので、丸暗記するつもりで、何度も聞くのがおすすめです。
なので、私は、生で聞くのではなく、1週間遅れで配信されている「NHKゴガク(語学講座)」というアプリで聞いています。はじめは、1日分の放送を10回くらい聞いていましたが、次第に、同じ放送を3回聞けば、理解できるし、すらすら読めるし、文章を見なくてもさらっと言えるという状況になっていきました。
何度も繰り返すので、はじめはテキストを見ながら、しっかり勉強するのですが、最後は、車の運転中に流したりして、忘れる前に復習するといった感じで、使っています。練習問題なども含め、すべての文章を完璧に言えるようになるまで、なんども回数を回せば、これはこれで基礎力の定着にかなり役立ちます。
ちなみに、数十年前のラジオ語学講座には、だいたいロールプレイ(役割練習)の時間があって、2人のうちの1人になりきって、数秒のポーズの間に自分のパートを読み切らなければいけなかったのですが、今は、そういう時間は削られています。なので、自分自身で、どちらの役割もできるように、その場面に入り切って、練習しておくのがおすすめです。感情を込めて「なりきりプレイ」をやった経験があってこそ、実際の会話の際にも、すんなり文章が出てくるようになるからです。
復習を繰り返す
そもそも私が、このように基礎系の本を同時多発的に並行してやるのは、同じ教材で復習するよりも、別のところで同じ文法項目や、同じ単語に触れる方が、「あ、また出てきた!やっぱこれ重要なんだ。記憶しておかなきゃ」という意識が働く、という理由からです。
つまり、私のスタンスとしては「1冊をやり切る」方式ではあるのですが、その復習に使ったり、練習問題として使ったり、いろいろと補助的にいれながら勉強している、というイメージでやってるわけですね。
こういうやり方だと、いちいち「これ本当に必要なのかな?」という疑いを挟む余地がなくなるので(全部の本に出てくるなら、絶対に必要なんだなと諦められる)粛々と勉強しやすくなるというだけでなく、目先が変わるので新鮮な感覚にもなりますから、もともと飽き性な人に、おすすめの復習方法なんじゃないかと思っています。
スペイン語を話す人を見つける
こんな感じで、ひたすら基礎力を鍛えつつも、アウトプットの機会を見つけにいくのも大切です。言語なんで、使ってなんぼ。「あー、わかりたい!伝えたい!!」という渇望感があってこそ、もっと勉強しようという気になるからです。
しかも、今は語学系のメッセージアプリもあれば、ランゲージエクスチェンジもマッチングアプリもあるわけですから、スペイン語を話す相手を探すのに、そんなに苦労はしないのではないかと思います。
もちろん、いきなり「音声会話」となるとハードルが高いので、はじめは「文章」のやり取りがおすすめですが、実際に誰かとコミュニケーションを取るとなると、それだけで、めちゃくちゃ語学力は伸びます。相手がいると「返信しなくちゃ!」というプレッシャーがかかって、サボれなくなりますし、「これってどういう意味だろう?」「こういう時ってどう言えば良いんだろう?」と調べたりする機会がめちゃくちゃ増えるので、その言葉に触れる機会も激増します。
今は、AIもありますので、相手のメッセージの意味がわからなければ、ChatGPTに、文法解説を頼めばいいのです。めちゃくちゃわかりやすく説明してくれますから、初級文法をある程度やったら、早々に実地練習に飛び込んでみる方がよいのではないかと。
それに、AIは、自分の書いた文章を自然な文章に添削してもらうのにも、かなり使えます。ただし、「AIの作る文章は正しいだろう」と鵜呑みにするのではなく(実際、間違ってくること、結構ありますので)、「自分が自然に使えそうな文章」になるまで、「え、自分ならこうは書かないけど、この単語抜いたらどうなるの?」とか、「ここにこの単語入れても、成立するの?」とか、「この単語とこの単語のニュアンスの違いは?」「なんでここには定冠詞がないの?省略するの?」「え、これって未来形じゃないの?すごく似てない?」「この手の話は、三人称使うのが普通なの?」などと聞きまくって一緒に作っていけば、いいのです。辞書を使うよりも、検索するよりも、圧倒的に効率良く、文法知識や単語のイメージを掴んでいくことができます。
それに、自分でイチから文章を作ろうとすると、どうしても自分の語彙力に制限されてしまいますし、文法的なミスにも気づきにくいので、コミュニケーションやアウトプットの練習にはなったとしても、それだけでは上達していきません。ですが、ここにあえてAIを挟み込んで「さらに、こういうニュアンスを入れるなら、どう言うべき?いくつか例をちょうだい」みたいなオーダーをして、いくつかの案の中から精査していくと、知らないうちに語彙力や文章力も、ぐんと上がっていくわけです。
つまり、AIを「家庭教師」的に使いながら、「実際の人間」とのメッセージのやり取りをするのが、もっとも気づきが多く、実践的なトレーニングだと言えます。私は、この方法を、英語学習でかなり最終段階にきてから取り入れたのですが、もっと早くやっていたら、ずっと短期間で伸びただろうなと思っています。
書けないことは、話せません。冷静に考えれば、当たり前ですよね。まずは、チャットの短い文章をスラスラ読めるし書けるように持っていきましょう。
スペイン語を使って学ぶ
私のスペイン語は、まだまだ、まったくそのレベルにまではいっていませんが、英語学習時に、その次の段階で役立っていたのは、「英語を日本語で学ぶ」のではなく「英語を英語で学ぶ」という方法です。
たとえば、「英語で書かれた文法書」で勉強して「設問が英語で書かれた文法問題」を解いて、「英語の解説を読む」というだけでも、かなり勉強になりましたし、「英語で英単語を説明する」というトレーニングも語彙力強化に役立つので、当初は、そういうことをやった方がいいとは思うのですが、そうこうしているうちに全般的な理解力が上がってくると、興味のあるジャンルの情報を、英語で手に入れるようにする方が、勉強がぐんと楽しくなって、伸びていきやすくなります。
私の場合には、趣味のアルゼンチンタンゴに関する情報は、日本語よりも英語の方が圧倒的に多いため、「英語での解説動画」を見たりすることが、英語力向上に非常に役立ちましたし、「英語しか話せない先生」のところにタンゴを習いにいったりもしていました。なので、おそらく、スペイン語も、初級レベルが終わって、どうにか中級レベルにもっていくことができたら、そんな感じで進めていくことになるんじゃないかなと思っています。
で、その先は、あまり興味のないような一般常識も勉強しておくというレベルになっていきます。たとえば、「医療用語とか覚えても、いつ使うんだろう?」と思っていたのですが、自己啓発系のセミナーで「脳科学」の話になれば「大脳新皮質が…」といった話も出てきますし、「量子物理学」の話も出てきます。なので、大人の会話では、一般教養の範囲の単語は、当然知っている前提で話が進むよなと思うようにはなりました。
さすがに、スペイン語をこのレベルまでもっていこうとは思っていませんが、基本的に、言語習得とは、そういう順番で進めていくんだろうな、とは思っています。
結局のところ、覚悟があるかどうか
語学学習が進まない最大の理由は、おそらく、学習法に迷うからでしょう。「〜って、やった方がいいのかな?」「〜ってやって効果あるのかな?」などと考えている間に、何でもいいから、やればいいんです。考えている時間が、一番無駄。何かやっている風に思えてしまいますが、実際には何事も進んでいません。
厳しいようですが、そんなふうに考えるのは、ひたすら「逃げたい」からでしょう。「やった方がいいかな?」というのは、やりたくないけど、やった方がいいと思っているパターンか、今やっているものを続けたくないから、逃げたいパターンか、どっちかなんじゃないかなと思いますし、もし続けているけれど効果を疑い始めているなら、きっと、その方法を惰性で続けても意味はありません。
要するに、ある程度、自分の中に答えはあるんです。ただ、やりたくない。もっと楽をしたい。努力したくない。近道を探したい。でも、当たり前ですが、ラクな道なんて、はじめからないんですよね。
大リーグ選手とか、オリンピックの選手が、努力なしであそこまで行けたと思う人なんて、誰もいませんよね。コツコツ継続的に練習する以外に、道がないことなんて、みんな知ってるんです。
だから、「モチベーションが上がらない」というのも、言い訳に過ぎません。一流の選手がそんなこと言うわけないですよね。それに、日常生活に、モチベーションって、必要ですか?やる気がなくても、できることは、あなたにもいっぱいあるはずです。なので、モチベーションが最低であっても、やればいいだけという、シンプルな話なんです。
語学の習得が得意な人は、何かを継続的にやった経験があるおかげで、コツコツ積み重ねていく事自体に慣れていたり、人よりも苦にならない人が多いのかなと思うのですが、もともと何かを習得する系って、すべてそういうものですよね。
ピアノを弾けるようになるにも、何度も練習しますし、何年もかかります。ダンスだって、将棋だって、バスケだって、コツコツ基礎を繰り返して、だんだんと習得できるもののはずです。
つまり、いきなりできると思っている方が、どうかしています。続けていれば、いつかはできるようになりますから、考えてる暇があったら、とりあえず、目の前のことを、やってみればいいんです。今どき「ハズレの方法」は、そうそうありません。「やって害になる」ことも、めったにないでしょう。だったら、多少、遠回りをしたっていいじゃないですか。あれこれ浮気をするよりは、あなたが、これと決めたものを、やりきった先に、ようやく見える景色を見てから、また次を考えればいいんです。
とはいえ、どうしても、やる気がないときには、スペイン語系のYouTubeを見てみると、良いんじゃないかなとは思います。疲れているときに「文法解説」とか「必須単語」系の動画を見るのはしんどいでしょうが、勉強法とか、インタビューくらいなら、聞き流せたりしますよね。
要は、「ゼロか百か」みたいな考え方ではなく、焦らず、腐らず、細々と長く付き合っていくのが、語学学習の秘訣かなと思っています。何かを新しく身につけるのは大変だけど、やっぱり楽しいもの。特に、語学学習というのは、単に「話せるようになる」というだけでなく、物事の考え方が大きく覆されたり、普通に生きているだけでは得られない「気づき」が得られるのが、醍醐味です。
たとえば、日本語では絶対に聞かれないだろう質問に答えようとしていると、これまでに考えたことがないことを考えますし、結果、気づくこともたくさんあったりします。そんなふうに、旅行に行かなかったとしても世界がどんどん広がっていく感覚が、私自身はとても好きなんですよね。
なので、よかったら、以上の方法を試してみてください。私自身の経験が、ゼロから外国語をはじめる際の何らかのヒントになったなら嬉しいですし、もしこの方法で、あなたの世界がちょっぴり広がったなら、私としても13,000文字を超える超大作を書いた意味があるかなと思っています。
ちなみに、本業は「セールスコピーライター」という「売れる文章」を作る仕事です。もっと言えば、特に「女性に売る」場合に、どういう文章やデザインにする方がいいのか、どんなマーケティングを仕掛けるといいのかを教える仕事をしています。
ほんと、スペイン語まったく関係ないわ。我ながら、趣味にかける情熱、やばい…。