献血だらだら話(日本赤十字さんからポスターについてお返事がきたよ!)
(めっちゃ前置き長いので読むのだるい人は画像までスクロールしてくださいね)
大変注目を集めている、「宇崎ちゃんは遊びたい」×献血コラボキャンペーンのポスター。太田啓子弁護士の「環境型セクハラのようなもの」発言をはじめとし、「胸を強調し過ぎて公共の場にはふさわしくない」「性の商品化である」「女性をアイキャッチとして使用している」という批判や、「職場ではないのでセクハラではない」「どこが性的なのかわからない」「表現の自由の侵害・萌え絵に対する弾圧だ」「胸の大きい人に表に出るなということか」などという擁護や批判に対する反発が見られました。
私はもともと太田弁護士に共感したわけではありません。それどころか、宇崎ちゃんは露出をしておらず、恥ずかしげに眉を寄せているわけではないのです。今まで問題になった萌え画とはちがうと感じました。私はすんでのところで太田弁護士にメンションを送るところでした。「これ、言いすぎじゃないですか?」(私は空気が読めないので、ネタじゃなくて本当にやってしまうのです……)
私は「宇崎ちゃん」のポスターに異を唱えていた人の発言とそれに反発していた人の意見を見続けました。そして自分なりにいろいろ考えました。そして今も考え続けていますが、ポスターのあり方には否定的です。
ところで、私が引っ掛かった意見のひとつとして、「私は『女だけど』『巨乳だけど』気にならない」があります。自分が気にならないことは、誰かが気になることの、打ち消すことにはなりません。私は非喫煙者ですが、たばこのにおいはほとんど気になりません。だからと言ってたばこのにおいを気にする人に「私は気にならない」と言ったって、なんの意味もないでしょう。「おまえだれやねん」ってなるだけです。
否定的ではありますが、私はキャンペーンに使われる前から「宇崎ちゃんは遊びたい」の原作を、試し読みでほんの少しだけ知っておりました。胸の大きな「宇崎ちゃん」という女の子が無愛想な先輩にかまってもらおうとするお話で、いつもはクールな先輩が、宇崎ちゃんが無自覚に垂れ流すセクシャルな部分にドキドキするというお話です。正直、私はエロというより他愛ない話だと思っていて、ラッキースケベも勝手に自分を慕ってくれる美少女も男性によるものにありがちなので、この騒動がなければ読んだことすら忘れてしまいそうだったのです。
でも、ちらっとは知っているだけに……いくら、あの絵柄が献血のキャンペーンのポスターに使われたことを批判しており、原作を否定しているわけではありませんと言ったって、この議論がされるたびに漫画のタイトル、およびヒロイン「宇崎ちゃん」の名前が飛び交い、あの絵が掲げられるわけです。なんか、かわいそうになってきません?
「いや、あんたさっき『他愛ない』ゆうたやんか、それにポスターに否定的やないか」おっしゃる通り、私は今では不自然に強調して描かれた胸や、「まだ献血未経験なんスか、(略)注射が怖いんスか」という煽りも、献血という目的のためには不適当だと思います。さらに、男女共同参画という観点から、アイキャッチとして女性を使うのはよろしくないというのも理解できます(だから、本当は露出の少ないキャラやアイドルの写真の献血ポスターだって批判の矛先となってもおかしくはないわけです)。
でも、ご都合主義とは言え、漫画の中ではけなげで快活な宇崎ちゃんなので、胸だけじゃなく、彼女の他の魅力が伝わるポスターにすればあそこまで炎上しなかったのではないでしょうか。炎上しなければ問題がないとは言わないけれど、女性の体の一部を実際にはありえないくらいディフォルメして見せなければ、女性の体に向けられている視線をつきつけることはなかったのですから。描き下ろし、もしくは別のカット(そして別のセリフ)を使うことはできなかったのでしょうか。
ということで「なんであんなに燃えるポスターにしたのですか」と、日本赤十字の広報さんに聞いてみました。
10月18日に日本赤十字の広報室あてにメールフォームから質問をお送りしました。期限は25日までとしていたのですが、25日過ぎてもお返事はなく、私は完全あきらめモードで「まー、ぼちぼち質問文だけアップするか」と思っていたのですが、なんと昨日29日に返信が来たのでした。
まず、忙しいなかお答えくださったのは本当に感謝です。ただ、どちらかというとぼんやりしている私ですら、ツッコミたくなってしまう内容です。「当キャンペーンはファンの方へのノベルティプレゼントのため」「ポスター等による一般の方へのPRを目的としていない」とありますが、前者はわかるけれど、後者はなんの理由にもなっていないと思います。目的としていなくたって、一般の方に見えてしまっているのだから。「一般の方へのPRを目的としていない」のなら、あの絵が一般の人の目に触れる必要もないと思うのですが。
個別の内容に答えて頂けないのも、とても残念です。どうしてこれまでの絵の選び方や切り取り方を工夫して防げたかもしれない炎上をこまねいてしまったのか。広報担当者やファン以外の人がどうとらえるかを、これまでの炎上事件を参考に学ばなかったのか。デザイン決定までにどんな話がなされたのか。これを明らかにすることは、とても有益だと思うのですが。
答えてくれたことには変わりないので、次のことばを、感謝の言葉とともに送りました。
この先のキャンペーンひとつ一つで、今回、私や多くの人が抱いた疑問に、少しずつでもいいから答えて頂けるといいな、と願っています。
追記:ポスターは新宿の献血ルーム前の地下道に置かれていたようです。
参考:弁護士ドットコムニュースより