ミニ相撲ロボット研究家かく語りき

 谷口 左千夫は、十五歳になったとき、その中学校を去り、中学校の悪夢を捨て、高校に入った。


ミニロボット相撲とは何か

相撲ロボットとは

 相撲ロボットとは、広義には競技としてのロボット相撲に出場するロボット全般のこと、狭義にはその中でも縦,横の長さが200mmまで、重量が3kgまでと定められた大会に出場するものを指す。ラジコン型と自立型がある。国産。詳しくはこちら
 3kgの相撲ロボットはミニ相撲ロボットと区別するためか「メガ相撲ロボット」と呼ばれることもある。

ミニ相撲ロボットとは

 相撲ロボットに比べ、より小さいロボットを指す。富士ソフトが主催する「全日本ロボット相撲大会」では、縦,横の長さが100mmまで、重量は500gまでと定められている。外国産。逆輸入とでもいうべきか。
 2024年度より本格的に日本の大会に新たな競技として導入されはじめた。イオンモールが主催する高等学校ロボット相撲選手権では500gクラスが新設され、全日本ロボット相撲大会では地区大会が開催されるようになった上、国技館での2日目にあたる決勝大会では今までの地下ではなく本会場で試合が行われるようになったのは、いずれも今年度のことである。
 3kgとの大きな違いとして、吸着機能の禁止というものがある。ほとんどすべての3kgのロボットはネオジム磁石を底面に貼り付け、鉄製の土俵にガッチリと張り付くような構造をしている。またブレードを可動できるようにし、ブレードの裏にもネオジム磁石を貼り付けることで、ブレードの刃と土俵の隙間を無くし、相手をしっかりすくい上げることができるようにされている。ミニ相撲では一切そういったことが許されない。土俵は大抵、木製である。磁石の代わりに接着剤を利用して土俵にくっつくのはNGということである。
 ルールに適合したロボットであるか、試合開始前にスタッフの監視の基、調べることを俗に「車検」という。車検では大きさの確認のための「100mm*100mmの枠(大抵、アクリル製)」や重量の確認のための計り、吸着機能を搭載していないか、そしてブレードを丸めてあるかの確認のための印刷用紙、これらが用いられる。枠は102mmとか、105mmあたりになっていることが多い。100mmの枠に収めるために99mmで設計を…なんてことは無用である。ブレードのチェックは人によってかなり差があるかもしれない。念の為、会場にヤスリを持参しよう。吸着機能について、磁石の有無は確認されない。印刷用紙の上にロボットを置いた後、ロボットを持ち上げると同時に印刷用紙が持ち上がらなければOKとなる。「磁石で相手のブレードに吸着を…」というのはギリギリセーフ?あくまでも禁止されているのは土俵への吸着であって、相手への吸着ではない。なんなら、磁石がNGならモーターを積めないじゃないか!なんてことになってしまう… どうする?富士ソフトよ!

日本で行われる大会一覧

 現在、日本にはいくつかのロボット相撲大会が存在している。初めて大会に出場しようと考えたとき、何も知識がないと混乱してしまうだろう。その問題を解決するべく、ここにまとめる。特に記述がない場合、ミニ相撲ロボットを指す。

全日本ロボット相撲大会

  • 主催:富士ソフト株式会社

  • 参加できる人:誰でも。地区によっては高校生の部と一般の部の2つに分かれる。もちろん高校生が一般の部で出場したって問題ないが、どうせなら大人のいない高校生の部で出場したいところだ。

  • 賞金等:優勝すれば100万だとか50万だとか。噂はいろいろ。2023年度は500級で1位は15万、2位は10万、3位は5万であった。2024年度は優勝で50万だった。また、2024年度は3kgと同じように優勝で文部科学大臣賞を受け取れた。2024年度はベスト16(決勝出場者)から賞金が出た。

  • 備考1:まずはじめに参加するのは地区予選会となる。そこで入賞すれば、国技館で行われる全日本全国大会(という名の世界大会)に出場できる。高校生の場合は、負けたとしても「高等学校ロボット相撲選手権」で入賞することで全日本全国大会に出場できる。全日本全国大会は2日間で行われる。だいたい12月の最初の土日。1日目は予選となる。予選で勝ち進めば、2日目の決勝に出場できる。トーナメントだから1日目で負けたら泣くしかない。

  • 備考2:3kgにはビックパレット福島で行われる高校生の部の高校生全国大会と、国技館で行われる一般の部の全日本全国大会が存在する。500gの場合は前者が存在しないので、後者に行くことになる。前者はそのうち無くなるとかなくならないとか。そんな噂が。高校生の部で勝ち上がっても、全日本全国大会は一般人(大人)と戦うことになる、ということだ。

  • 備考3:地区予選会では賞金がでないってどういうことd(((

  • 備考4:地区予選会、全日本全国大会の2つに分かれる。全日本全国大会は、1日目の予選と2日目の決勝に分かれる。

高等学校ロボット相撲選手権

  • 主催:イオンモール株式会社

  • 参加できる人:高校生のみ

  • 賞金等:現金はでない。入賞すれば「全日本ロボット相撲大会」の全日本全国大会(国技館)に出場できる。

  • 備考:地区大会よりも上はない。入賞しておけば、「全日本ロボット相撲大会」の地区予選会で入賞できなくても国技館での全日本全国大会には出場できる。嬉しい。高校生は国技館に行くチャンスが2回ある(高等学校ロボット相撲選手権&全日本ロボット相撲大会の地区予選会)ということになる。

その他

  • 各都道府県の産業教育フェアで大会が行われているとかいないとか。この場合、「高校生だけの県大会」という位置づけになるだろう。

  • 富士ソフトとイオンモールの関係がややこしい

製作

 ミニ相撲ロボットの製作について。製作にはレーザ加工機や3Dプリンター、CNC、旋盤、フライス盤、ボール盤などがあるとよいだろう。もちろん全てを用意する必要はない。やりたいこと次第だ。最低限、3Dプリンターの一つは持っておきたい。

考え方は主に2パターン

  1. 2枚の金属の板をレーザー加工機等でくり抜き、それらを重ねる。

  2. 3Dプリンターで印刷する。

 1の場合は2DCAD、2の場合は3DCADを用いる。私は腐ってもFSFの元・支持者であるからして、2DならLibreCAD、3DならFreeCADをオススメする。設計の自由度からか、2を選択する人が多い。

キットを買うなら…?

 初めてミニ相撲ロボットを製作するのであれば、まずはキットを買うべきだろう。キットを購入し、それをどこを変えれば問題を改善できるのか、という方向で設計をした方がいい。0から作るのは少々ハードルの高いことであると思う。ミニ相撲ロボットの構造については、各種キットを見るように。ここでは説明しない。

  • ロボショップ:海外の製品を日本に輸入し、そこそこの送料で送ってくれる。オススメはここ。ちなみに楽天のロボショップ39ショップ(2025/01/07現在)。場合によっては楽天で買った方がいいかも?

  • Jsumo:海外から送られてくるため、送料がけっこうかかる。Jsumoの製品が欲しい場合、同じものがロボショップでも売られていないかを確認するとよいだろう。

  • Sumozade:Jsumoと同様。

  • 秋月電子通商:品揃えは少ないが、無いわけではない。送料を払いたくなければ実際の店舗で購入しよう。ん?交通費ってなに?

部品

 部品は秋月電子通商ロボショップMISUMIリトルベランカスイッチサイエンスなどの国内の業者から、AmazonAliexpressJsumoSumozadePololuCytronなど海外の業者までも駆使して集めなくてはならない。キットを買ってしまえば一箇所で済むが面白みに欠ける。

モーター

 ミニ相撲ロボットにはブラシ付きDCモーター(これ以降単にモーターを呼ぶ)が使われる。その中でもギアボックスと一体となったもの、ギアードモーターが好まれる。このギアードモーターに更にギアを付けるという変態もいるとかいないとか。ロボット相撲には、相手と押しあったときにパワーが求められる。そして、十分に操作可能な速度に抑える必要もある。3kgなら自分でギア比を考えてギアを自作、あるいは購入するところだが、500gとなると100mm*100mmに収めなくてはならないため、スペースを節約する必要がある。これらの理由から、ギアードモーターにたどり着くのである。
 モーターを購入する上で注目するべきは、回転数とトルク、そして定格電圧の大きく3つだ。タイヤの直径にもよるが、回転数は500rpm以上は欲しい。そうでないと相手にスピードで劣り、横や後ろに回り込まれてしまうだろう。逆に1000rpmを超えると、ラジコン型であれ自立型であれ制御が難しくなってしまう。トルクについては、連続負荷トルクと停止トルクの2種類がある。相手と押し合いになり、モーターの回転が止まっているときにかかるのが停止トルクである。負荷によって回転が遅くなるにつれ、停止トルクに近づく。ギアについて知識がある人間であれば、ギア比を上げれば回転数が落ち、トルクが上がる、ということを知っているだろう。その辺りは割愛させてもらう。定格電圧は、破れ!!!もちろん、壊れやすくはなる。定格を破ったことによる損害について、私は一切責任を負わないと身勝手に明言させて貰うが、破らないことには始まらない。モーターの性能は電圧にほぼほぼ比例するかと思われる。ミニ相撲ロボットに使われるモーターの定格電圧は、そのほとんどが6Vである。そこにモータードライバを介して2セルのリポバッテリーの電力を供給するとしよう。どうやって電圧を6Vまでに抑えろというんだ。PWM制御でできるじゃないかって?そういう問題じゃあない。そこに絶対に負けてはならない相手がいるというのに、手加減するやつがいるのか?諸兄に問いたいのは、8.4V(1セルあたり3.7Vとするのが一般的だが、実のところ満充電時には約4.2Vとなる)の電圧が出せるのにもかかわらず、わざわざ6Vに抑え込むという相手をバカにするような態度でいていいのかということである。定格電圧は超えてこそ漢だ。
 ミニ相撲ロボットはモーターの性能がなによりも重要で、例えるならば親子丼と三つ葉のようなものである。モーターが弱ければミニ相撲ロボットは作るなと言いたいくらいだ

  • N20:誰が定義したのか不明だが、俗にN20と呼ばれる規格が存在する。マブチモーターの775の模造品が広まって、775が一つの規格として周知されるようになった、みたいな話かと思われる。原作はどれかわからない。有識者求む。後述のCore Dc MotorやNovaMaxには性能が大きく劣るが、値段が安い。安心を求めるなら秋月電子通商にて、とにかく安く、そして豊富な品揃えを求めるならAliexpressにて購入するとよい。ピンからキリまである。使用してみてどうだったか、全世界のミニ相撲ロボット制作者とSNSで共有し合っていきたいところだ。

  • Core Dc Motor:400rpmモデル750rpmモデルがJsumoより販売されている。SumozadeのNovaMaxシリーズに比べると性能が劣る。とはいえN20よりはマシだ。ロボショップで購入できるため、送料を払わなくて済む(楽天で2つ購入すれば3980円以上にとなり、39ショップであるロボショップでは送料無料となる)のも嬉しい。直径15mm,端から端まで47mmとあるが、実際はそれぞれ16mm,48mm程度ある。

  • NovaMax:ミニ相撲ロボット向けギアードモーター界隈では最強(私調べ)。Sumozadeより発売。400rpmモデル800rpmモデルがある。

夢想家の同志諸君へ ー 幻想のMaxon
 3kgと同じように作る場合は、Maxon(とりわけDCXのグラファイトブラシのモデル)のモーターを選択するとよいだろう。性能、消費電力、価格、どれをとっても世界一である。Maxonが必要とする電流を、バッテリーが放電可能な電流として満たしているか、これには十分注意してほしい。バッテリーが試合中に爆発したら大変だ。私がMaxonを勧めたばっかりに、そんなことにはなってほしくない。そしてケーブル。あんまり細いケーブルに大電流を流すと危ない。
 さらにブレードか旗を広げれば圧倒的なパワーを上手く利用できるはずだ。重量が心配になってくるが、肉抜きを多用すればどうにかなるだろう。
 購入はオンラインショップから。

タイヤ

 タイヤのホイールは市販されているものを購入するか、旋盤で自作するかという2通りの方法がある。素材には主に鉄が使われる。中には真鍮で作る人もいる。
 ホイールに取り付けるゴムについては、ほぼほぼシリコン製一択だろう。私の経験則では、シリコンのゴムが一番グリップ力が強い。これも買うか自作するかの2通りがある。シリコンの効果剤の割合を調整したり、色をつけてみたりすると面白い。これはぜひ試してみてほしい。
 タイヤとモーターの固定方法については、Dカットが採用されることが多い。モーターの軸を断面から見てDの字になるようにヤスリで削り(もしくは予めその形になったものを購入し)、タイヤの回転軸となる部分に穴を開け、モーターの軸を通す。更にタイヤには土俵に垂直な方向にネジ穴を作る。そこにイモネジ等を入れて固定する。…文面では想像が難しいだろう。

モータードライバ(Hブリッジ回路)

 モータードライバとは、モーターを制御(正転/逆転/ブレーキ)するためのIC、もしくはそれを利用したモジュールをここでは指す。Hブリッジ回路とは、モーターを制御するために4つのスイッチをいい感じに配置した回路である。ここでいう「スイッチ」とは要するにトランジスタであり、トランジスタとはMOSFETである。(YouTubeを見ているとこのようなコメントを見かける。「最近の若いのは「モスフェット」「モスフェット」と耳障りで仕方がない。「モスエフェイーティ」だろ!」と。どちらでも誤った呼び方ではないが、私もモスエフェイーティ派である。なんだよ!フェットって!LEDをレッドって読むようなもんじゃないか。じゃあなんでMOSはモスなんだ、なんていうんじゃないよ… そういうもんだろう?)自分で組むとスペースを食う(単に私の基板設計が悪いのかもしれないが)ため、ICを利用するべきである。ICだけでは面倒ができるから、市販のモジュールを使ってしまおう!というのが最近の流れのように感じる。少なくとも私の周りではそうだ。
 モータードライバには大きく分けて、シングルチャネルのものとデュアルチャネルのものが存在する。ミニ相撲ロボットでは主にモーターとタイヤそれぞれ2つずつ搭載し、1つのタイヤに1つのモーターを使う。デュアルチャネルのものを選んだ方が便利であることは間違いない。また、モータードライバとマイコンが一体化した基盤も販売されている。こちらは比較的高価にはなるが、スペースの節約にはなるだろう。両者の中でいくつか例を挙げてみる。

モータードライバ(モジュール)
※電圧と電流は出力できる最大のもの。秋月電子通商のモジュールは、ICの絶対定格ではない。発熱によって性能は低下する。必要に応じてヒートシンクやファン、放熱シートの利用を検討したい。

マイコンとモータードライバが一体となった製品

マイクロコントローラ

 マイクロコントローラ、略してマイコン。PICマイコンやH8マイコン、AVRマイコンなどなど。私の経験則によれば、ぶっちゃけ動いてしまえば大差ない。好みの問題かと思われる。プリント基板を用いてマイコンボードを自作するか、小型のマイコンボードを使用することを推奨する。それらが難しいのであれば、前述のモータードライバとマイコンが一体となった製品を利用するべきだ。全ては諸個人の工夫次第。

 マイコンと接続する部品

  • モータードライバ(PWM制御、つまりアナログ出力)

  • ラジコン型であればプロポのレシーバー(PWMの入力) 左右のスティック

  • 自立型であれば(センサーを搭載したラジコン型のロボットもあるが)ブレードの左、ブレードの右のフォトセンサー(土俵の白い部分と黒い部分とを見分ける),赤外線センサー(デジタル or アナログの入力)

  • 自立型であればリモコンの信号を受信するモジュール(全日本ロボット相撲大会や、高等学校ロボット相撲選手権で使用されるSONY製のリモコンの信号を受信するモジュールはデジタル信号)

  • 電源としてバッテリー。もちろん、3端子レギュレーター等で適切に降圧させる。

  • その他。無重力装置とか時空転送装置とか洗脳装置とか。

 以上のことを踏まえると必要となるIOピンの数は、ラジコン型なら6個以上(うちPWM出力2個以上)、自立型なら10個以上(うちPWM出力2個以上、アナログ入力2個以上)となる。使用する部品やその数によって変わるが、最低限これだけは必要となるだろう。

 上記の条件を満たした上でなるべく安価で小型なマイコンボード。価格は秋月電子通商の販売価格(2025/01/12現在)。

  • Seeed XIAO RP2040:850円。超小型。USB-TypeC。ラジコン型ならこれで十分。自立型には物足りない。

  • AE-RP2040:700円。本家のPicoに比べ70円安く、GPIOは4つも増えて計30ピン。加えてUSB TypeC。

  • Raspberry Pi Pico/Pico 2:770円/880円。情報の豊富さを求めるのならばこれ。USB microBなのが残念。

 価格を考えるとRP2350 or RP2400の二択。Arduinoは高い。Raspberry Pi Picoの方が優秀。

プロポ(コントローラー)

 好み。それだけ。オススメ、というより2024年度の時点でユーザーが多いのは近藤科学のMC-8かと思われる。マイコンでの制御については近藤科学の解説や私の書いた記事『プロポ「MC-8」をArduinoやRaspberry Pi Pico/Pico2で使うためのプログラム』.『Raspberry Pi Picoを利用したミニ相撲ロボット 電気的な部分とプログラム ラジコン型&自立型』を参照。スティックの仕様を図にしたものを以下に載せる。

図1 プロポ「MC-8」のスティックのPWMの変化

フォトリフレクタ(土俵の白と黒を見分ける)

 ロボショップで適当なものを買えばいい。それが一番安い。特筆すべきは「ラインセンサー」の名で売られている製品である。これらは使い勝手がいい。マイコンのアナログピンで簡単に読み取ることができる。明るいほど、つまり白であるときは値が小さくなる。

 などなど。土俵と近づけると正しい値を出力しなくなるので注意が必要。何mm程度離せばよいのかは、そのセンサーの仕様を調べて判断する。

距離センサー(相手を捉える)

 デジタルで出力されるもの、アナログで出力されるもの、この2種類が存在するが、アナログで出力されるものを利用することをおすすめする。アナログで出力されるもの、具体的には距離を測ることのできるセンサーを使用することで、より多様な動作をさせることができる。もちろん、シンプルにデジタルだけだって構わないし、2種類のセンサーを組み合わせたって構わない。どのようなコンセプトでそのロボットを制作しているのか。これが重要である。
 センサーを選ぶにあたって、特に注意するべき点が2点ある。
 1点目は、そのセンサーの反応する距離である。距離は長すぎても短すぎてもいけない。長すぎれば土俵の外にいる審判や自分自身、相手、その他障害物に反応してしまう。ここで距離を測定し相手のロボットではないと判断できればいいものの、やはりリスクは回避するべきである。会場にもよるが、私の経験則からして40cm程度のものなら問題はない。
 2点目は、センサーのサイズである。当然のことであるが、以外にも電子工作用に売られているセンサーはミニ相撲ロボットに搭載するにしては大きすぎるものも多い。サイズについては忘れずに吟味た上でセンサーを選びたい。

バッテリー

 ミニ相撲ロボットには小型のリポバッテリーを選ぶとよいだろう。バッテリーを選ぶ上で知らなくてはいけない知識がいくつかある。それらを大雑把に印しておく。詳細を知りたい場合は自分で調べるべし。
 まずはリポバッテリーの電圧について書こう。リポバッテリーには「セル」という概念があり、この「セル」をいくつか直列接続することで電圧を上げることができる。ちなみにセルはとてもデリケートである。ちょっと傷つけただけで火を吹くため要注意。地面や人に投げつけるのはご法度。周りのカバーにカッターで切り込みを入れて剥がすのもNG。過充電はもちろんダメ。セルは1つで3.7Vであることが多い。これを残量100%まで充電すると約4.2Vとなる。つまり、2セルなら3.7V * 2s = 7.4V(最大約8.4V)、5セルなら3.7V * 5s = 18.5V(最大4.2V * 5s = 21V)となる。各部品を傷めないためにも、電圧が最大いくつなのか、しっかりと考慮する必要がある。
 電圧ときたら次に電流だ。リポバッテリーが放電できる電流は
そのリポバッテリーの容量(mAh) * C = mA
で求められる。例えば容量が500mAhで、20Cのリポバッテリーの放電できる電流は
500mAh * 20C = 10000mAh(10A)
となる。通販サイトの商品ページには、バースト値と定格値の2つが書かれていることが多い。安全のためには定格値に収まるようにするべきだ。
 空になるまで使ってはならないということも知らせておこう。リポバッテリーの残量が0%になるまで使用してしまうと、リポバッテリーが劣化してしまう。次に充電するときに電気があまり溜まらなかったり、できるだけ充電しても電圧が低かったり、そもそも充電ができなくなってしまったりする。そういった一切の面倒を回避するために、バッテリーチェッカーは存在するのだ。残量はどれだけ残すべきなのか。これについては論争があるだろうから私は書かない。ただ、半分程度は残すべきだ。
 最後に充電時の電流だ。1Cが望ましいとされる。別に0.5Cだって構わない。劣化させたくないなら、1Cよりも大きな電流を流してはならない。

N20のモーターなら2セルか3セル、Core Dc MotorやNovaMaxなら4セルを使いたい。定格電圧を超えた電圧を利用したことによる損害については、私は一切責任をとらない。購入先はリトルベランカかAmazonになるだろう。安心を求めるならリトルベランカがいい。

リモコンの信号を受信するモジュール

 全日本ロボット相撲大会や高等学校ロボット相撲選手権で指定されるスタートモジュールは、Jsumoの「Official MicroStart Sumo & Minisumo Robot Start Module」これを買うしかない。(ただし、自作できない訳ではない)。Jsumo、いい商売してるなぁ。使い方についてはデーターシートを見てもらおう。
 大会によって、指定される番号が異なる。Ready、Start、Stopが1,2,3の大会があれば、4,5,6の大会もある(と思われる)。これを変えたいときは、まず電源を入れてからモジュールの白いボタンを長押しし、ボタンから指を離してモジュールの赤と青の両方のLEDが点滅している状態にする。その後、リモコンのボタンを押す。4,5,6に変更したい場合は、ゆっくりと、4,5,6の順番でリモコンのボタンを押す。終わったら、電源を落として、再度電源を入れる。
 車検時にリモコンの確認が入る場合がある。念の為リモコンを持参し、ボタンの変え方もメモして置くとよいだろう。
 一番重要なのは、リモコンの信号が混線しないようにすること。本番のときはガンを使用して信号を発信するが、この信号を相手のロボットのモジュールに吸い取られてしまうと厄介だ。自分のロボットだけなんどやってもReady信号が入らず、試合が始まらない。こんなことにならないよう、自立型の出場者には必ず対策をほどこしてほしい。相手のガンからの信号が入らないように、また自分のガンからの信号が相手のロボットのモジュールに吸い取られないように、自分のロボットのモジュールと相手のロボットの間には何かしらの壁を作るべし。絶縁テープでも、適当な板でもなんでもいい。頼むからちゃんとやってくれ。試合が始まらないとイライラする。

ブレード

 鋭い刃のこと。これを正面に取り付けることにより、相手のロボットをすくい上げ、土俵の外へ押し出す。ブレードのついていないロボットはほとんどない。つけるかつけないかは戦略次第となる。なるべく鋭く、そして地面との隙間がないようしっかりと接地させたい。
 かつては「両国剣」と呼ばれるものが流通していたらしいが、製造元の倒産により(?)現在では入手不可能。そして検索してもあまり情報が出てこない。謎。
 ミニ相撲ロボットの場合は、その特徴の一つである安全性を高めるために刃先を丸めるルールになっている。
 スクレーパーの替刃やJsumoやSumozadeで販売されているブレードを使用するとよいだろう。

 ちなみにブレードの始まりはテレフォンカードらしい…

終わりに

 2025年度の各大会が始まるまで、随時加筆する予定。この文章は2024年度までのミニ相撲ロボットの総括として書いたものでもある。書籍化希望。もちろんまだまだ書けるので、出版社の方、どなたかお願いします。

 全日本ロボット相撲大会を主催する富士ソフト株式会社様、高等学校ロボット相撲選手権を主催するイオンモール株式会社様、そしてそれらの大会を協賛する各企業様、後援する文部科学省様はじめ各ロボット学会様、各県の教育委員会様、その他の各団体様に感謝を。ありがとうございます。できれば全日本ロボット相撲大会の地区予選会の入賞者にも賞金をお願いしまs((


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