見出し画像

『休息』(仮称)油絵の修復と絵の語るストーリー

冒頭タイトルになっているのが今回修復後の油絵。

修理前には、キャンバスが丸められて保存されていたこともあって、乾いた絵の具が剥離する状態であったが、専門家の修理により剥離は安定し、ゆがんでいたキャンバスもきれいに木枠に貼り付けられている。

9月に修復を依頼した時は、丁度「無言館」の『語り続ける戦没画学生』の番組で大貝 彌太郎(おおがい やたろう)氏の『飛行兵立像』を見た後でもあった。同じような保存の境遇にあったこの静子さんの絵と想いを重ね合わせ、経年による絵の具の剥離をも尊重し、下手に表面と見た目を綺麗にするよりは、剥離をそのまま残し、これ以上の破損に及ばないような修復を選んだ。

修復前の絵は下のような状態であった。

幸い女性の描かれた箇所の剥離はなく、その周辺に多くの剥離が見られた。女性のモチーフは当初から決まっておりキャンバスに最初に描かれ、その後も上塗りされていないということではないだろうか、周囲の上塗りは作家を取り巻く環境や作家自身の変化により、絵筆が加えられたものと推測される。これらの変化は絵の具の剥離のおかげで、見ることができ、この作品のストーリーと共に、静子さんの思いや希望、そして生き方のようなものを推測することができる、一連の関係したデッサンも発見され、実に興味深い。

この女性の姿勢というか、最初のモチーフは絵画を学んでいた頃のモデルを描いた『瞑想』が始まりと思われる。

『瞑想』悩める女性の瞑想であろうか、、。ひじを置く台以外は背景に何もなく、確かに内面的な瞑想を思わせる。

その後に描かれた同様のモチーフには、中央に道か溝のようなものがあり、何かと対峙していることが明らかである。対峙するものは何なのか、時にはジェンダーであり社会であり、深い藍色で矛盾や不条理を表現したのかもしれない、実際に二人の進む道はなかなか受け入れられない時期が長く続いた。ここでは当初のモチーフの個人の内面的なものは感じられない。

そして次に続くのがこのデッサンである。これはまさに『休息』のモチーフである。しかも安らかな感じを与える女性の休息に見え、悩みも対峙するものもなく、安堵した休息のようにみえる。油絵の『休息』では、地平線へと続く道は背後に描かれている。最初からあった肘を置く台も当初は描かれたものの、より大自然の中の休息にふさわしくするために、身体全体を道端の法面にもたれるようにして、台は草花を描くことで見えないようにしたはずであった。

自然と一体となった生き方により、悩みも対峙するものもない『休息』を得ることができる。そんな境地に到達したのではないだろうか。ストーリーはベートーベンの第9『歓喜の歌』に匹敵しそうであるが、曲はブラームスかマーラーがあっているようだ。

もう一度改めて見る『休息』からは何ともいえない安らぎが感じられる。

(この記事は下記のHPと同じ内容になっています)
https://yuzoetshizukoauniger.amebaownd.com/

いいなと思ったら応援しよう!