【実況】24歳の私がエストニアの電子国民になってみた話
「エストニアという国には、電子政府というものがある。世界中どこからでも登録できて、IDが発行されれば、EU内でビジネスができるようになるらしい。」
20歳くらいの頃にそんな話を聞いた。
正式名称はエストニア共和国。バルト海に面する小国でお隣はロシア。そして、欧州連合(EU)加盟国だ。
近隣諸国と比べて小さな国土面積、少ない資源だったエストニア。襲撃を受けても勝ち目はなかった。
だから、国民が散り散りになっても国として機能するように、行政の機能をを物理的な人間の集合体ではなく、完全デジタル化したのだという。
だいたいのことは、IBMのWeb記事に書いてある。
電子政府を構築するに至った歴史や文化的背景について知りたい人は「デジタル変革で電子政府化を実現したエストニア、隠された苦難の歴史と希望の未来」を参考にしてほしい。
このnoteでは、私が単なる興味本位でエストニアの電子国民「e-Residency」に申請し、実際にIDカードを受け取るまでの一部始終を紹介する。
e-Residencyに興味がある人、デジタルノマドとしての働き方を模索している人には最後までお読みいただきたい。
とりあえず申請してみた
難しい話はさておき、私はe-Residencyの申請をしてみることにした。
まずは、e-Residency公式サイトへ。
世界各国から様々なワークスタイルの人が、色々な目的で登録しているようだ。
e-Residentの対象者は、大きく分けて4種類。
①ビジネスオーナー(経営者)
②フリーランス+コンサルタント
③起業家
④デジタルノマド
右側の写真は、申請後に発行されるIDカードの写真だ。
e-Residencyのメリットについても書かれている。
①EUでビジネスを始められる
②リモートでビジネスを成長させられる
③官僚主義を減らせる
④グローバルコミュニティに参加できる
国内にとどまらず、世界との繋がりを構築することでビジネスを成長させたい人にぴったりだ。
画面右上のAPPLY NOWをクリックすると、Estonian Police and Border Guard Boardが管轄する申し込みサイトに遷移する。
Create accountをクリックすると、メールアドレスの入力フォームが出てくる。
メールアドレスでアカウントを管理し、手続きを進めていくようだ。
メールアドレスを入れると、ログイン用の自動送信メールが送られてくる。
その後、「申請の目的は?」「なぜe-Residencyに興味を持ったのか?」「エストニアの経済にどのような形で貢献するつもりなのか?」といった質問に回答していく。
※後述するが、ここらへんの内容は割となんでも大丈夫なようだ。深く考えず、とりあえず何か書いておけばOK
ちなみに全て英語だ。英語がわからない人には、翻訳ツールのDeepLがおすすめ。かなり精度の高い翻訳をしてくれる。
必要書類
e-Residencyの申請に必要なものは以下の2種類。
・パスポート
・顔写真
顔写真は、ファイルサイズの規定が1GB~5GBだった。結構な解像度が必要なため、スマホでの自撮りだと難しい。
私は結局、近所の写真屋さんに行って、このためだけに証明写真を撮ってもらった。
受け取りは東京のみ
申請後にはe-ResidencyのIDカードが発行されるため、その受け取り場所を決めなければいけない。
とはいえ、日本の受け取り場所は東京のエストニア大使館しかない。全員大使館に足を運ぶことになるため、地方の人は要注意。
料金120ユーロの支払い
全ての情報入力が終わったら、申請料金120ユーロをクレジットカードでお支払い。日本円でだいたい1万5千円くらいだろう。
支払い完了メールも送られてくる。
立て続けに、申請を承認した旨のメールも来た。
提出された内容の審査にはおよそ30日かかる。もし何らかの理由で審査期間が延長される場合には、メールで知らせる、とのことだ。
20日くらいで審査に通る
あくまでも私の場合だが、上のメールが届いてから約20日後、審査通過のメールが届いた。
この時点ですでに個人番号が発行され、IDカードとUSBカードリーダーの発行&発送は手配済みだそう。
実際にIDカードが大使館に到着するまでにはあと2~5週間かかる。
また、到着後6ヶ月を過ぎても取りに来ない場合には、自動的に破棄されるとのこと。
審査の難易度は低い
先に書いたとおり、提出するフォームには、いくつかの質問に対して記述式で回答する箇所があった。
興味本位だけで申請する場合、何を書いていいかわからないだろう。
でもおそらく、何かしら筋の通った意見を書いておけば、だいたいは通るはずだ。
ちなみに私は、「こういうビジネスをやりたいと考えている」「それはこんな形でこれくらいエストニア経済に貢献できる」みたいな、高尚な内容はあんまり書いていない。
「なんか興味があったのでやってみました。もしかしたら将来はe-Residencyを使って何かやるかもしれないですね」くらいの感じで書いたと思う。
審査に引っかかる特段の理由(犯罪歴とか?)が無い限りは、大抵の場合は通過すると捉えて良さそうだ。
IDカードが東京の大使館に到着
上のメールが来てからちょうど2週間経つところで、Counsilという名義でメールが送られてきた。
エストニアから、IDカードが到着したとのこと。
エストニア大使館にいつでも受け取りに来てよいが、事前予約必須。
予約方法は、電話かメール。私はメールで直接予約した。
大使館に問い合わせると、受け取り手続きは10~15分くらいで終わるそうだ。
エストニア大使館へ受け取りに行ってみた
さっそく、駐日エストニア共和国大使館に向かった。
住所は、東京都渋谷区神宮前2丁目6−15。
銀座線の外苑前駅から徒歩10~15分くらいで到着した。
レンガ造りの壁が高く、少し威圧感がある。ドキドキしながら敷地内へ足を踏み入れた。
インターホンを押すと、日本語を話す女性が応対。「e-Residencyのカードを受け取りに来ました」と言うと、入り口の門が解錠された。
IDカードの受け取り手続きは10~20分程度
建物内に通されると、入ってすぐの応接間に案内される。
椅子に座ると、エストニア人の大使がやってきて挨拶した。その後は大使と2人きりの手続きである。
e-ResidencyのIDカードを持ってきてくれて、まずは受け取りの署名。
次に、指紋の採取。両手の人差し指と親指を、簡易的な機械でスキャンした。
指紋の採取が終わると、IDカードの大まかな説明へ入る。
《ケースの表面》
《ケースの裏面》
開くと簡素な注意書きがある。
IDカードと付属のUSBリーダー。中の白い紙は重要なPINコード。
有効期限は5年間。5年後に更新が必要だそう。
大使がIDカードと付属の読み取り機器の使い方、その他重要事項を説明してくれた。
特に質問がなければ、次にe-Residencyを使って利用できる行政サービスについての説明。
e-Residencyでできること、できないことなどを教えてくれた。
私は英語で説明と質疑応答を受けたが、日本語もかなり話せるようだった。
英語が苦手な人でも大丈夫だろう。
その後は軽い雑談。
「e-Residencyを使ってやりたいことはあるの?」
「どうやってe-Residencyを知ったの?」
といったことを質問されたり、私の出身地の話などで少し盛り上がった。
雑談を含め、所要時間は20分程度。
最低限の手続きと説明だけであれば、10~15分くらいで終わるだろう。
帰り際に、エストニアのパンフレットを手渡されて終了。
大使館を後にした。
トータルの所要期間は1ヶ月強
今回、e-Residencyの申請からカードの到着までの所要期間は1ヶ月と数日だった。
正直、2~3ヶ月くらい待たされるのかと思っていた。このスピード感もまた、紙の手続きをミニマルに排除した電子政府ならではなのだろうか。
タイミングによっては、もう少し長く待たされることもあるかもしれないため、参考程度に捉えておいてほしい。
まとめ
このnoteでは、エストニアのe-Residencyの手続きの一部始終を紹介した。
今回の申請は単なる興味本位で行ったため、個人的に今のところはこれといった使いみちはない。
それでも、大学生のときに知った「電子国家」と世界中の「電子国民」という存在に、自分も仲間入りできたことで、デジタルノマドとして生きるうえでの選択肢が一つ増えたように感じている。
今後、実際にe-Residencyの行政サービスを利用してみた際には、再びnoteで実況してみようと思う。
おわり