藤野古白句 「紅鐘調」より24句
講談社版「子規全集 第十五巻 俳句會稿」より、明治26年1月22日に詠まれた藤野古白の俳句を選出しました。
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日付 明治二十六年一月二十二日
表題 紅鐘調
野に折りし梅を肩荷や菊の苗
月朧ろ苫のみ並ふ湊かな
月影をくゝつて嗅くや梅の花
萬才や烏帽子のかけは御簾の内
羽子かゝる軒の葱の日向哉
長閑さにひさごすてたき流れ哉
囀や小窓に青く松映る
柳から四五間はねる雫哉
渡し呼ぶ舞扇あり春の暮
袂から小川にこほす芹菜哉
白梅や香はへたてねと竹の垣
寺を出れは山門はまた餘寒哉
虻の来て障子あけさす日和哉
藪を出て驛になりぬ干大根
春の野や牛飼い鞭を挙くる暮
春風や沖へ流るゝいさり舟
窓に見る山々青し百千鳥
冬の夜やひつそりとして山一つ
行水に針も障らぬ薊哉
春の雪雫目にふく木立哉
春雨やばちの濡れたる琵琶の音
松風に凧のとゝくや東山
榾焚てわか影に泣く恨哉
猿曳の猿にぬかする白髪哉
底本:「子規全集 第十五巻 俳句會稿」講談社
発行:昭和52年(1977年)7月18日