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書体好きによるメルカリの新しいロゴタイプ分析

谷です。フォントにちょっとだけ詳しいUIデザイナーとして、書体についてnoteを書いています。

2018年後半で話題になったトピックとして、メルカリのリブランディングがあるのではないでしょうか。
meetupイベントにnote枠で応募したのですが、あえなく落選。講演を聞けなかった組ですが、勝手にロゴタイプを分析してみます。
(ロゴマークではなく、ロゴタイプです!)


1 ロゴタイプのトレンド

ロゴのトレンドとして、スタートアップやテック系企業ではサンセリフ体が人気です。
Google、Spotify、Uber、Airbnbと、サンセリフを使う企業は枚挙に暇がありません。モダンでクセがなく、使いやすいのだと思います。

💡最近リブランディングを行ったEvernoteは、当初サンセリフを検討しつつも、最終的にPublicoというローマン体を採用した珍しい例です。link

✏️

2 ベースになった書体

メルカリのロゴタイプはAzo sansという書体がベースのようです。Rui Abreuというポルトガル在住のデザイナーによって作られました。

💡実はブラッシュアップされたAzo sans 2もあります。が、書体のリリース時期から考えると、今回のリブランディングは古いAzo sansが使われているのではないかと予想します。→'19.01.16追記: デザイナーの弓馬さん曰く、やはりAzo sans2ではないとのことです。
💡Azo sansはAdobe fontにもありますのでチェックしてみてください👀

ジャンルとしては、FuturaやAvant garde gotihcと同じジオメトリックサンセリフになると思います。
ただ、ディティールを見るとジオメトリックとひとくくりにはできません。「ヒューマニストのニュアンスを持ちつつ、ジオメトリックサンセリフとして構成された書体」でしょうか。細部を見ていきましょう。

👆Azosansのt, b, qを見てください。端面がカリグラフィペンで書かれたような斜めの切り口になっています。(Futuraなどは切り口が水平です)

👆また、nやmの2画目が、やや右上に引っぱられた造形になっています。
このようにディティールに個性があり、単にジオメトリックサンセリフと言ってしまうのはもったいないことが分かります。

👆他に細かいところでいうと、aの形がdouble-storyになっています。
特に本文組の小さいサイズでoとの区別がつきやすいメリットがあります。

👆組見本を読むとこだわりが見て取れます。
黄金比に則ってプロポーションを構成しているようです。

Azo sansとメルカリを並べてみましょう。

分かりやすく変わっているのは、m, r, aの3つです。
旧ロゴを踏襲するため、mとrの一画目が消え、ロゴっぽくなっています。また、aはシンプルなsingle-storyになり、ころんとした可愛らしいイメージになりました。
全体的に、もとのAzo sansにあったヒューマニストの要素をそぎ落とした印象があります。
だとするならば、なぜわざわざAzo sansをベースにしたのか、もっと幾何学色が強い書体をベースにしなかったのはなぜか、が気になります。

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2 ロゴの新旧比較

新旧のロゴタイプを比べてみます。(画像は公式サイトから引用)

全体として、ポップだったものがフラットになり、完成度が上がった印象を受けました。なぜそう感じたのかを書いていきます。

 ●ウェイトが軽くなり、繊細さが出た
まず目につくのは線が細くなったことです。これによって、明るく元気な印象に、繊細さが加わったように感じます。

 ●黒みが調整され、フラットな印象に
黒みが均一に近づきました。
旧ロゴでは、mの頭がやや重かったり、aの線が重なる部分が黒く見えていたりしました。こういった特徴が減って、よりプレーンな印象になりました。
潰れやすそうに見えた旧ロゴeの狭いカウンター(空間)も、新ロゴでは広めにとられています。
👇黒みが分かりにくい場合は、ぼかしてやるとよいです。

 ●骨格が丸っこく、ニュートラルなイメージに
文字の骨格も変わりました。ややハリのあるトラック楕円形のフォルムから、より丸みを帯びた形になっています。

旧ロゴの造形は良い意味で特徴があり、スタートアップとしての個性を演出するという役割を持っていました。
今回メルカリは「どんな人にも身近に感じていただける『フラットさ』」を目指したとのことですので、よりタイプデザインとしてニュートラルになるよう意図したのかもしれません。
造形としても、重力に負けているようなeの終筆に勢いがでて、個人的には新ロゴが好みです。
(注:もちろん旧ロゴが悪いというわけではありません。例えばe, cのカウンターが広いため、視認性が高いというメリットがあります)

✏️

4 まとめ

・Azo sansというジオメトリックサンセリフがベース
・旧ロゴを造形を踏襲しつつ、アップデートされている
・線が細く、骨格が丸くなり、個性が減った

🔍推測
多くのユーザーを抱え、単なる一フリマアプリから、売買を支えるインフラのような存在になっていくメルカリ。今後も増える幅広いユーザーに受け入れられるよう、個性を減らし、フラットなデザインに移行しようとした。また、ロゴを洗練させることで、マーケットプレイスとしての信頼感を演出しようとしているのではないか。

✏️

以上、この分野の専門家ではないのですが、個人的に感じたことを書き連ねてみました。もしかすると、meetupで話されていたこととかぶっている、または正反対のことを書いているかもしれません......。

文字っ子のみなさまからのコメントやツッコミもお待ちしております!

それではみなさんよいお年を🙋

追記('19.01.16)
コメント欄で、旧ロゴのベースとなったのは「World of water」ではないか?とご指摘いただきました。World of waterの作者であるRaymond Larabieさん(日本在住)にメールで問い合わせたところ、下記の回答をいただきました。メルカリのデザイナーに聞いていないので明言はできないのですが、恐らく合っているのではないでしょうか。
「メルカリのロゴはたくさん見てきましたが、いままで気づきませんでした。言われてみると確かにWorld of waterだと思います。(筆者・訳)」

参考 / 画像引用元
R-Typography
Azo sans
Hello new logo | メルカリデザイン
メルカリ、ロゴデザインをリニューアル(プレスリリース)
Typodermic Fonts



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