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2000年秋 飯島愛さんのインタビューテープから

PCから古いインタビューおこしのデータが出てきたので。飯島愛さんがおなくなりになったのが2008年。もう、15年もたっているんだなと。本人がチェックしない形で公表するのはルール違反かもしれないけど、私のライター人生の中でも忘れられないインタビューのひとつだったのでひっそり公開してみようと思う。

芸能人のインタビューはそんなに数多くやっていないけれど、世間に求められている自分の像を演じることに徹する方が多い印象だった。でも飯島さんは、もちろん本音をべらべらしゃべったわけではないだろうけど、諦念を抱えながらも、うそをつけない誠実さが垣間見えて。魅力的な人だなあと大好きになった。

今も彼女の話し方や息づかいまで思い出せるような忘れられないインタビューだった。拙いインタビューですが、文字起こしに(にこっ)と入れている部分があって。通常そんな文字起こしのしかたはしないのだけど、あのときの彼女の、防御としての「にこっ」が本当に忘れられなくて、起こしにも書いてしまったんだと思う。

インタビューは2000年の秋頃だと思われます。

飯島愛さんインタビュー (2000年)
●「プラトニック・セックス」は大ベストセラーになっていますね。
 告白系の本が今、時代的に流行ってたんですかあ? へえ。ラッキーでしたね。意図的じゃなかったけど、時代にのっかっちゃいまいしたねえ。おいっしいなあ~(笑)。今回の本は、これまでの私の経験を暴露的に告白するとか、カミングアウトするしない、っていう感じではなくて。過去とかは(自分が)してきたことですし、そこはそんなにきついことではないんです。(AV時代のことなどの)行動も、例えば、お金がほしいとか、どんな仕事をするか、何を選択するか、というのは、人によっては、やりかたがいろいろかわってくるだけで。それを、勇気をもってするか、軽蔑するかはいろいろそのときによってかわるんと思うんです。だから過去に自分がやってきたことを書くのは、いまさらきついとかそういうのはなかった。でもそれよりも、根本にある、女の子の寂しい感じとか、めめしいかんじのときとかを書くのが、私としては一番したくなかった。
 ……カッコわるいじゃないですか、簡単にいえば(笑)。強く生きていたかったのですが……。でも、そういうところを隠しているよりも……、今、世の中がドライなのでね……。男の人とかでもめめしかったり、弱いところをみせられて発言できる人のほうがよっぽどすてきだなっておもえるようになって、勇気をだしてみたんです……。嫉妬心とか、常識として醜いとされてるものとか、あんまり自ら言いたくないですよね。でも、そういうところは人間誰にでもあると思うので、それを書いただけだと思います。(AVの)経歴とかは、当時から平気で言っちゃってましたしね。そうやって一言でいうのはかんたんですよね。でも、そのときの気持ちが痛んだこととか、揺れる部分ですよね。そういうところはあまりいいたくなかった。当時から。

●弱い部分は表に出さないようにしてきた?
 うーん。どうなんでしょう。にこっ(★私の顔をみて首をかしげて笑った)あえて意図的にはしてないですけど……。例えば、お金がほしいからとか、貴金属がほしいとか、海外旅行にいきたいとかは、みんなしたいことだし、夢はみんなありますよね。そのためにはそのぶんのお金をかせがなくちゃいけなかったり、代償があるじゃないですか。それを前向きにバイトにして、旅行にいこうとか、そういうタイプんじゃなかったんですよね。妥協したというか。どんなことをしてでもお金が必要で、お金があったり物品があったりするとこう、精神的に余裕ができて、そこからスタート、っていうかんじの考え方だったんですけど。……普通はそうじゃないでしょう?  お金かせぐって。自分を認めてもらってがんばってでしょう。デビュー当時はよく、お金はあとからついてくるものだからっていわれていたんだけど。そんな、あとからついてくるなんて保証のないこととか、わからないものにたいして努力なんかできないと思ってたから。わりきって開き直ってましたけど……。でも、絶対に、人間は多面性があるとおもうので、自分がなによりそういうところがあったので……。今書けてるものに満足いくわけでもなく、くりかえしなんですけどねえ。みんな腹のなかはこっちのほうがが楽だなと思ってっても、それじゃいけないっていうのもあって……。でもどっちが「絶対」とか、そういうんじゃない。振り子だと思うんで。お金お金っていうふうに言えば言うほど、意外に純粋な部分があるとか言われて驚かれたりとか。……でも本当のあなたは……ってなんでも当たるようにできてるのよ(笑)。占いでも、本当のあなたはね……っていわれると、そうなんですって思うし、なんでもあたるようにできてるし、いろんな360度のとりかたやみかたができるし。

●純粋とか言われるのはやっぱり気恥ずかしいんですよね……。
 ねえ?  だってはずかしくないですか?  だって男の人で、会社でぱりっとかしてる人が、家では彼女にあまえて、「オシッコでしゅー」とかいってるかもしれないじゃない?  幼児プレイとかじゃなくて、自然にね。おねんねしますか?とかやってるかもしれないじゃないですか。 っていうかそういう人のほうが多いじゃないですか。だから一流企業の男性とかでも、そういうのを書いたとしたら、おもしろいにきまってますよ。僕は実は、愛人がいるんですよ、っていうことがおもしろいんじゃなくて、愛人のところにいってしまうのは、そこでは童心に帰れるっていう「ごはんでちゅよ~」とかいってるんですとか書いたら、そんな面白い本はないと思うし、みんな共感すると思うし。結局はそれも、いろんな人の解釈だと思うので。 
 私は、書くときも、一本柱が自分のなかにちゃんとあって 目標だてて書いたことはないので……。どちらかというと。女性としてね、不安だったりしたことを……今まで刹那的に生きてきたんですけど、不安を覚えるようになりまして、自分の段階を、ステップをとかそういうビジョンをきちんとたてたわけでもなかったし。この本だって自分が書きたかったというんじゃなくて、そういうお話を頂いて、書くか書かないか、ってこと、なんですよね。お仕事って。基本的には。やるかやらないか、なんです。やりたい、とかじゃんです。小心者なんでね。あんまり夢とか目標とかたてちゃうとプレッシャーになちゃうんでダメなんですよ。で、やるかやらないかというときに、じゃあやるならきちっととやらないと、カッコ悪いし。きれいごとだけ書いたりとか、ふれられたくない部分をオブラートにつつむのであれば、やらないほうがいいだろう、という決心がついただけで。
 (自伝の)お話いただいてから1年くらいたちましたけど、最初のころは全然やる気でなくて、お休みの日は自分の家でテープにむかって話したりとかしていて、今日は構成の人がきて、今日は中学校のくらいのころをやっておいてもらって、来週それの原稿をあげて、ワープロにたたきおこしたので、それをみてチェックしましょうとかいってたんですけど、ろくにやりませんでしたもんね。できませんでした~、とかいって。テープもゆっくりしゃべれば長くなるし。渡したときにマネージャにテープがこれしかまわってないんですかとかいうとおこられちゃうから、えーっと、あれは~とかいいながら。時間かせいで。姑息なんです。本当に夏休みの宿題やってるみたいな。
●そうやって書いていくことで自分自身の発見はありましたか?
 たいしてかわんないんですよね。小心者になりましたね。困るもん、そんな、誰かに影響力与えるようなことになったら。手放しではよろこべないですよ。この本読んでとても感動しましたという解釈をする人もいるかもしれないけれど、違った方向に解釈してしまって悪い方向にいってしまう人がいてもそれは責任とれないですから。私がそれを指導したわけじゃないですか。誰でも、日常の、小学生でもそうだっとおもうんですけど、決められた毎日、足かせつけられてるはみだせない社会の中で生きているわけじゃないですか。誰でも足をふみはずしたいとかいう願望があるわけじゃないですか。でもそれをする勇気がなかったり、しちゃいけないという道徳心とかがあると思うんですよね。
 でも誰でもなんかめちゃくちゃになりたい、解放されたいとかね。家庭もってるローンもってるサラリーマンが、なにしてるんだろ、おれ、とか考えてることあると思うんです。このままでいいんだろうか、とか。誰でもその日その日の仕事がうまくいかないとか、疲れたとかのテンションであるのを、なんかこう、勇気づけられましたみたく、くるんですよ。読者カードとか。何の勇気つけられてるんだか。ちょっと違うんじゃないかと……。でもこうやってできあがったものを解釈するのは人それぞれだから……。だからどんどん小心者になってきちゃって……。困るんですけど、みたいな(笑)。
 発売した当日とかに増刷ですっていわれて、10万部くらいっていわれたときは、やったーって、がんばったからうれしかったんです。それからいろいろ取材いただいたりとか、でも、質問の内容が今までのインタビューのレベルより高いレベルの質問が多くなって、少年犯罪についてどうおもいますか?とか。 しらねーよ。そんなことって(笑)。もっと違うこと聞いてくれませんか?とか。思ったり。

●本当の自分を知ってほしくて書いた、というような感じではない?
 うーん。すごいスキな人とか、愛しい人、愛している人には、本当の自分を、っていうか……自分のことをわかってくれてるのはすごく嬉しいとか、喜ばしいことですけど、万人にたいしてはおもいませんね。不可能ですから。今は両親とももうなかよくやってるんだけど、これはもう両親への嫌がらせですか? って感じで。もう仲良くなってるのにほじくりかえすから。今更ほじくりかえさなくてもいいのに。とか。そういう目で見る人もいるし。親しい人なんかとくにそう。仲良い友達とかは、経験一緒にしてきてるから、何の刺激もない。事実じゃん、? って。 
 だから自分のなかでトラウマになってたものをはきだすことによって、リセットにするとかいうのは、ない。……まあ多少はあると思いますよ。例えばAVだなんだっていうのは、最初は、回りの人が気を遣って、話さないでくれてる。最初はみんな、そこがおもしろいからって、ひきだそうとかするんだけど、事務所がいっさいだめだっていう形だったから。でもなれてきて、自分ががんばっていけば、まわりにいる仲の良い友だちやタレントさんもできてくると、みんな気遣って、そこにふれないんですよね。そのあまりの気の使い方に、逆にやだなと思うときもありました。
 だから本を書いてそういう部分は、変な線がとれたような気がしますが。でもなにもかわりやしないですよ。ずっと一緒ですよ。日々のテンションだけでね……。あははは。……ねえ?

●10万部ってでも、ほんとにすごいですね。
 どうしましょう(笑)? ねえ。

●読者からの反応も、好意的な意見が多かったようですね。
 一番おもしろかったのは、1300円もしたのに内容が薄いっていうの(笑)。

●元気づけられた、という意見はすごく多いようですね。同じような辛い思いをしたり、苦労してきた人などは特に。
 うーん。でも、違うんだよねー(少し真剣な表情に)。今回本を書いて分かったことがあるとしたら、要するに好きな事してきただけなのよ。わたしが勝手に。別に苦労したわけでも、つらいことでもないのよ。望んでスキなことをしたための犠牲があっただけで。それは望んで自らが起こした行動についてくるデメリットなので、苦労とかつらいとか不幸っていうのは、一生懸命普通に……まあむずかしいな。ほんとうに。でも私の場合は、決して本当に運が悪かったわけではないし、どうして私はこんな不幸の星の下に生まれてきたんだろうってことでもないし、本当に、私のまわりの人たちのほうが苦労したんじゃないかってだけで、好き放題した結果、ですから。今までも、そういった心の交流みたいなところにすごくクールでしたから。

●踏み出せなくても、ふみだせなかった人が、共感したんでしょうか。
 わかーんなーい。でもありがとう。でも本当に、人それぞれのあれなので、いろいろでも私の本を読んで、いろいろなにかを自分の中で、思い思いで考えてくださることはすごくありがたいことなんですが……でも、むずかしいです。
 分かって欲しいという気持ちがない、っていうほどクールじゃないし、欲を言えば、全員にすかれたいし、そりゃあみんなに好かれるほうが幸せだけど、でも、そういうことは不可能じゃないですか。妥協してるっていうか。純粋なままでいる気持ちと、、それじゃ世の中渡っていけないという葛藤があるんですよね。生まれてきてからずっとそうだと思うんだけど、みんな自分をわかってくれない、って思うわけですよね。自分本位で。それが争いごとやけんかや、すべてのはじまりだと思う。親にたいしても、恋人にたいしても友達に対しても、グチるときにも「わたしはこんなにしてあげてるのに」って言っちゃって、男の子も「おめー、おれだって」って。相手の立場になって考えるってこと、頭ではわかっていても体ではできないですから。不条理な感じ。本当に友達ともけんかよくするし、恋人ともけんかするし、親ともしたけど、互いに自分を押しつけてしまって、むずかしいですよね。だから無理ですよ。無償の愛っていうの? 博愛とか、愛は与えることであるというお言葉ってあるでしょ?  んなのできるわけじゃないじゃん。できないよ?

●テレビに出るようになってからも、「良く思われよう」とは思っていない?
 最初はね。すごく保守的になってきましたよ。ビジネス的にいえば。そのビジネス的な考えの根元にあるんですけど、生きていくための。反体制にあるためのとか、反発心とかじゃなくて、世の中の流行っているものとか、集団が思うものとか。私がデビューしたときには、みんな世の中本音をはかない。はっきりずばずばいわない世の中だった。それでたまたま……それは計算じゃなかったんだけど、そういう世の中だから、私のようにドライのほうがかっこよかった。でもだんだんコギャルとかが、売春しちゃったー、だの、関係ないじゃん、いいよー、とかみんながドライになってるじゃないですか。頑張ってもしがない世の中なので、そうすると、ドライさって偽りだったりしますから、そういうときに弱いこという人のほうが、カッコいいなあって思えるんですよ。だからそういういとはありますよね。

●愛情と一緒に憎しみや嫉妬を抑えて……と。
 出川哲朗に「だめだよ、あんな難しいことかいちゃ」っていわれた。プロローグとか、出た!かっこつけてる本。って、「おれはハッキリいって読むのやめようかと思ったけど、よかったよ、途中から」って。おもしろいですよ。そういってくれるほうが。
  後半よくないよ、とか、いってくれるのが本当にうちわの人だったりするから。で、そこは自分がよかったと思ってるところですから、なんだよーとか。そういうのが一番楽しかったりする。でも何人かいらっしゃいましたよ。突然電話かかってきて、読んだー。って泣かれちゃったりして。どどどど、どーしたのー?とか。いろいろあって。嬉しいですけどね。まあタレントさんはみなさんしっかりしていらっしゃるからね…。
 とにかく取材のレベルが急に変わっちゃって、以前の取材だと、不倫カップルが別れたがってるんですけど、どうしたらいいですから。とか、18歳のプータローが、24歳のプータローと結婚したがってるんだけど、どうしたらいいですか? ………はーたーらーけーよ!(笑)とか。そういうのが多かったのに、本を出してから、すごく、光栄なことではあるんですが、質問のレベルが上がってしまったので、テンションがさがってますけどね。今までだったら楽しくなにいってるんだよーとかいってたのに、あんまり軽率な発言ができないし、言葉いっこいっこかんがえるし、気が小さくなってますね。

●この時期に、自伝を書くというのをお仕事としてやってもいいかなと思ったのはなぜですか。
  いやあ、私は、自伝は芸能界やめるときじゃなかったら絶対かかないって拒絶反応があった。でもね、すごく不安で、、、。今も本が売れるとかそれはそれでうれしいけれども、でも、いつも、性格だと思うんですけど、なにかにつけ、最悪な事態も考えるんですよね。いつもすごく不安で、今若き日を振り返ると、若いと思わずに遊んでいたころが、不安じゃなかったように感じるけれど、それなりのそのときそのときの不安はもっていだいていたんだと思うんですけれど、常に生きてるかぎり、悩むこととか、くっついてきますから。いつもちょっとやなことあったりと、やめよっかなとか、いきたくないなとか、すぐなっちゃいますよ。

●それでもだしたのは。
 どちらだろう。自分の性格ってよくわからない。自分の性格が最近、どっかの教授とか、いろんな精神科医にまで、分析されたりすると、ほーう、そうなのかあ。とか。なんか自分のことってわかってるようでわかってなくて、人が見た私が全てでしょうから。自分でなんででしょうとか、なんでですか、ときかれても、それが的確な答えかどうかわからないですよね。たぶん、たぶんですよ。大きくこういうことやりたいとか、年をとったらこうしなくちゃというビジョンは、いつも考えたり妄想したりするのはすごくすきなのね。妄想癖があるくらいすきなんですけど、それを現実化していくのが苦手で嫌い。だからマネージャーさんとかにやってもらったほうがいい。私はこういうことしたくて、こうなんだけど、それって、そのしたいことと、この仕事としてと金っていうのは成立するのかっていう。どういった形でやればそれが成立し、いい形をになるかって。
  その妄想の中には本を書くというのもあったんですけど、 本かくのも、こういう本を書いて、こうしたら、こういう結果になってっていう段階はやっぱりスタッフのみなさんとかマネージャーさんもふくめ、編集の方に導いてもらったようなきがしますけど。やっぱし、やるかやらないか、というジャッジからはじまって。……AVとかもそうだったと思うんですよ。悩んだりお金がほしいとか、NYにいってああしてこうしたいとか。いろいろあるんですけど、どういうふうにしていってどうしたらいいのかっていうことをほとんどしていないですね。みんな人にしてもらってえる。ただ、どうせやるんだったら、、あとはかっこいいかかっこわるいかですよね。
 今の妄想は、クリスマスどうしようかな?とか。 夢見ることはいいけど、目標たてちゃうとねー。
  外国いったりなんたりしたら、こういうことしてみたい、これがビジネスになりたてば、お金もはいるし、これが必要になんじゃかないかとか思うけど、でもどうしていいかわかんないから、いいなあすべてしたらああでこうで、、とか悪いほうへ、、、。妄想ってそういうもんなんでしょうけど。

●過剰な自信と、過小評価してるのが本当に常に反するものとしてあって……それをどっちとも認められるのが飯島さんの強さなんでしょうか。
 そうですかねえ。でも本を書いてるときに、きめちゃっても、ああ、めんどくせえな、ここは書くのやめようとか、書くのどうなの?とか。最初のころは、自分で、テープ起こしとか、やってるんだけど、構成とかの段階になってくると、ここはいらないとか、ここはどうとか、っていう段階になると、やるってきめちゃったので、結構きついなーと いうのがやっぱりあって、精神的なものなんでしょうか、偏頭痛がするの。だからといって、いやだといってそこをカットするってことが、自分の恥ずかしいからかっこわるいいからカットするっていうんじゃなく、自分の中の価値観ではなく、常に客観的に見ていなくちゃいけないと思ってるんですけど。飯島愛ちゃんという人を。客観的に見ないとおかしくなっちゃうから。でも見えなくなっちゃうんだよね。やっぱりやってると。そういう葛藤はいっぱいありましたけど、でもやるってきめちゃったことは。カッコわるいとかいいたくないとか、これは秘密にしておきたいという自分だけの感覚でぐちぐちやるのは、もうみっともないので、常に葛藤をもちながらやってたつもりなんですけど。

●この本でさらけだすことよりも、日々の選択の中で一番カッコいい、必要なものに対して選んでることにおいて意味があるっていうことなんでしょうか。
 そうですね。自分の意志ですからね。やらなければいいことですから。あとから。私もよくしてしまいがちですが、責任転嫁をしてしまったり、人のせいにしてしまったり、自分のしてきたことに後悔をすると、未来が全部そうなっちゃうから。

●それもまた勇気づけられるアドバイスですね。
 照れてるんじゃなくてね、みんな、何に勇気づけられるのよ! って……。選択肢が多すぎるので、私小心者だから、先々、誰かになんかの影響を及ぼしてなんかおこったりどうするのよ?って思っちゃう。

●小心者だと自覚してる時点で小心者とはまた違うのでは?
  本当? 私は勘違いしてるやつほど幸せなことないと思うんだけど、だって勘違いいしてるやつ楽しそうだよ。だって気がついてないんだよー? なにかをする、しない、というのを決めるじゃないですか。するっていうことにたいして、自分の意志で自分できめたことなので、それにこう偽ってしまったり、うそをついたりすると、まわりの人間はバカじゃないですから、そのみすかされてしまうこっけいさを考えると、自ら認めて直視してるほうが、うけとめる側もカッコいいと思うと思うので。
 例えばパトロン生活してるホステスとかもいて、あれをかくして、みんなおかしいと思うでしょう? 高級な生活して仕事もしてなくて。で、お父様がお金持ちだから、とか。どうしてそこでお父さんがお金持ちの社長令嬢という偽りを……(笑)、みんなお約束なくらいそうなんですよ。それが見栄だったりするんだと思うんです。でもそれをみていて、それをしてしまいたい気持ちはわかりますけど、それを見てると、それはバレバレなわけじゃないですか。そうしたら私は、パパがいますよ、っていっちゃってたので。前からずっとそう。私は。

●そっちのほうがラク?
 でもほら、普通に純粋に恋愛しようとしたときに壁にぶつかりますよね。

●そうですよね。みんな、本当のこと言いたいけど言えないから……。
 一緒なのよ。みんな人の目を気にしていえないわけでしょ。自分を守ろうとして。それは私も一緒だから。

●依頼されて、仕事だから、、、とか。という割り切りでクリアにできた部分がありますか?
 依頼がなかったらやんない!(笑)

●100万部行くかも!
 いかないいかない! でも、昔常にTバックやらされたときに、なんなのこの人たちおかしいんじゃないの?はあ?って感じだったんですけど、でもおかしいでしょう? それ。それだけで結構メシくいましたからね。2年くらい。まあ企画に恵まれてるのかなあ。

●潔さがあって、違いましたよね。いいわけがましくない感じで。
 でもやっちゃえ、ってその時思っちゃったからね。やると思わなかったらやらないし。

●お父さんやお母さんにはいえなかった時期もあったんですよね。
 子供ってどうしても親元にいなくてはいけない時期があって、視野が狭いでしょ? 働いてるわけでもないし、保護されてるから、補導されるしね。「保護」とは思えなかったけど。早く18歳こえたくてしかたがなかった。ある程度学校いってお友達が増えたりすると、自立心が芽生えるじゃないですか。親離れするころに、すごい反発心があったけれども、口に出していえないぶん、親に対して、それは世間体だろうとか、それはエゴじゃねえかよとかいろいろ考えていましたね。

●ご両親と和解したあとと前には自分の中での変化はありましたか?
 私の中の変化だと、自分が当時の父や母と同じくらいの年になり、結婚してないので、母親としての大変さきびしさはわからないんですけど、自分が社会に出て仕事をして、収入をえて家族をたべさせなくてはいけないとか、生活していかなくちゃならないという、かせぐことのむずかしさとか、自由をいろいろ束縛されていったりとか、そういうことをいろいろ考えると、ある程度は理解できるようになりましたけどね。ありきたりですけど、同じ年になって同じ立場になるとわかるのよ。対抗する立場では無理よね。自分が母の立場で、25の若いころに、母と同じような状況におかれていたら、それをこなせていたらとか考えると、無理だろうなと思えて、尊敬できたり。親にとっては子供は一生子供ですからね。どんなバカ娘でも。さっきもいったけど、共にあるのよ。愛してるからにくかったり、愛情を受け止めてくれないから腹が立ったり、通りすがりのおっさんとかだったりしたらね。だから牙をむけるのもやっぱり大切な存在ですよね。

●今は、愛する人、大切な存在はいますか?
 いないのよ。いたら書けなかったわね。

●本の中に書いてある「彼」がいなくなったときは…
 そうね。いろんなことが不安だったの。恋愛もうまくいかなくて。お仕事も26,7とかで、女性がやっぱり結婚したくなったりするのって依存心によるものが多いじゃないですか。今もそうですけど、出した出さないっていうのじゃなくて、今もスケジュールみて、1ヶ月仕事なにもはいってなかったら。結婚してー。どっかやべえ。金持ちつかまえないと家賃払えないよー。すごく現実的なこと考えると弱くなるじゃないですか。お金じゃなくても夢でも、自分が充実してると、すごいスキな彼がいてもウザいことがある。帰れないんだよーはやく、働いてねえんだったらどっかはたらいてこいっていうのがあるし。本当に気分で動くからバランスが悪いので、そういう書く前のほうが、スキな人がいるのにあんまりうまくいかなかったり、そうすると仕事とかも。むずかしいですね。安定してたりすると不安になるし。
 かけあがってるときが一番人間って充実してると思うんだけど、その瞬間は充実感すら感じずに。その瞬間が一番ステキなのよね。求めてることを安定にしてる。何か求めてるもののために頑張ってるんだけど、それを得た瞬間にすべてがかけていく。そのくりかえしじゃないですか。恋愛とか仕事のこととかも含めて、女性性ということでしょうね。女として生きていること。女の体であってよかったなと、どうにでも利用している価値はある。男の人と対等に張り合って生きてもかわいくないんだから、ふところにはいって、うまくしたたかにやったほうが、ある意味、頑張って女性としてお仕事できるんじゃないかっていう発想だったのが、女性性が老化していくことによって、失われる不安っていうのがありましたね。

●可能性がせばまってくる?
 可能性はずっと無限大にあるんだけど、自分が得てきたものを、守ろうとする動きが狭くするんだと思う。

●飯島さんはその間で揺れているんですか?
 何かを得ると何かを失うという発想がある。だからこういうことになって、評価してくださったりするのは非常に嬉しいことなんですけど、プレッシャーがかかり。簡単にいえば、ちゃんとしてなくちゃいけないとか、ちゃんと発言しなくちゃいけないと思うと、すごい肩がこる。スキにしたいもん。明日警察に捕まるかもしれないじゃない。ほっといてくれ、と思うじゃない。

●「赤恥青恥」(バラエティ番組)の正解率の高さを見ていると、飯島さんの人の見抜く目のすごさに驚きます。
 リズムなんですよ。パチンコとかでもそうでしょ。

●こうやって、本が出て、やっぱり飯島愛はすごかった、っていわれるのって……(笑
  ウザイですね! ……って、ウソウソ(笑)。ごめんなさい。かわいげないかもしれないけど。本当にほめてくださるのは嬉しいです。でもそうするとなんかちゃんとしてなくちゃいけない気がして、すごいプレッシャーなの。スキにしたいのよ。でもみんなにバカバカっていわれるほうが楽なのよ。ダメなほうが楽なのよ。あんまり過剰に解釈されると、厳しいですよ。はっきりいって。なにいっちゃってるのよ? って感じですよ。だからお願いですから適当に放っておいてちょうだいね、って感じですよ。

以下がおそらく記事になったものです。(入稿原稿なので掲載時には少し変わっているかもしれません)。今の私だったらこのような言葉使いはしないなと思うところもありますが、今の私だったらこうはまとめられなかったかもしれないと思います。


リード
100万部突破という破竹の勢い。飯島愛さんの自伝「プラトニック・セックス」は、昨年最も話題を呼んだ本だ。多くの女性が共感の手紙も多くよせているというが、実は等の本人は結構困惑気味らしい…?

●見だし案1
「私は単に、スキなことだけやってきただけなんですよね」
●見だし案2
「反響があまりに大きくてどんどん小心者になってます」
●見だし案3
「ドライな時代だから、あえて弱い自分を書こうと思ったの」


「共感しました、ってお手紙を多く頂いてるんですけど、困惑してるっていうのが正直な気持ちです。ほめて頂くのは嬉しいし光栄なんだけど、『元気づけられました』って、何に元気づけられたんだかわかんないし。誰だって、毎日の生活の中でいろいろ足かせつけられて、時々何もかも捨ててめちゃくちゃになりたい! って思うときがあるでしょ? そんな時にこの本で元気づけられて、その人がどうかなっちゃっても、私、責任持てないし。だからどんどん小心者になってますよぉ(笑)」

 芸能界を辞める時じゃなきゃ絶対に書かない、と思っていた自伝を今回書いた理由は? と問うと「そういう仕事の依頼があったから」とあっさり。

「でも、やるって決めたからには、知られたくないことをオブラートにつつむようなやり方はしたくなかった。よくいたのよー。若いのに贅沢な生活してて、絶対パトロンがいるに決まってるのに、お父さんがお金持ち、って<お嬢さま>を装う子が(笑)。そんなの回りから見てたらバレバレでしょ?? だったらはっきりとパパがいるのー。っていったほうがカッコいいし、私はそう言ってた。隠したい気持ちは分かるけど、みんなが知ってるのにそこを無理に隠すほうがずっと滑稽だし」

 売春、シンナー、AV女優歴。衝撃の告白、と世の中は騒いだが、「そんなのみんな知ってたでしょ」と一笑。

「例えばAVのことでも、みんな知ってるけど、気を遣ってその話題に触れないでくれるんですよね。それってかえって疲れるし。そういった意味では楽になったかも(笑)。むしろ私が最後まで書くのを迷ったのはもっと別の部分。やるって決めていたんだけど、その部分を書いているときは精神的なものか、偏頭痛になっちゃったくらい」

 それは、刹那的に、ドライに生きてきたという当時の自分が裏で抱えていた、迷いや寂しさ、嫉妬、そして哀しいくらいにピュアな気持ちのこと。

「今も、ドライなのがカッコいいって時代でしょう? コギャルとかも平気で売春とかしゃべるし。でもドライに見えても絶対に辛い部分とかあると思うの。これまでの私は、そういうのってカッコ悪いしあまり出したくなかったんですよね。でも今は世の中がドライだから、そういうめめしい部分を思いきって出せる人のほうがステキだな、って思えるようになった。だから私も勇気を出して書いてみようかな、って」

 こんなに華やかで明るく見える人がこんな辛い思いや弱さを抱えて生きていたなんて。多くの女性が共感したのはまさにこの部分なのだろう。

「うーん、でも『辛い思い』とか『苦労』とか、それちょっと違うんだよねー。今回本を書いて分かったことがあるとしたら、私は単に自分が好きなことしてきただけなんだな、ってこと。別に苦労もしてないし辛いことでもなかったのよ。望んで好きなことをしたための犠牲があっただけで。何かを得る時には必ずそういう代償があるでしょ? それに本当に苦労したのは私の周囲にいた人たちだと思う(笑)」

 この潔さがカッコいいのだ。実際、本を出して以来、世間の飯島愛に対する評価は上がりっぱなし。だがそんな状況は彼女にとっては……。

「ウザイですね! ……って、ウソウソ(笑)。本当にほめてくださるのは嬉しいです。でもそうするとなんかちゃんとしてなくちゃいけない気がして、すごいプレッシャーなの。スキにしたいのよ。だからお願いですから適当に放っておいてちょうだいネ(笑)」



プロフィール
飯島愛 いいじま・あい 1972年東京生まれ。タレント。愛らしいルックスとサバサバした物言いが人気。自伝発表後はインタビュー依頼も急増。「質問のレベルが急に高くなって、こっちのテンション下がっちゃうのよー」と困り顔。


『プラトニック・セックス』
小学館 1200円

 厳しかった親との軋轢。家出、売春、シンナー、AV出演。波瀾万丈の10代を真っ直ぐな言葉で語った大ベストセラー。過去を真正面から引き受けてなお媚びずに生きる姿勢が、今の彼女の魅力を作り上げていることがよく分かる。

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