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親密な北欧のサービスデザイン

こんにちは。NTTデータのデザイナー集団「Tangity」でサービスデザイナーをしているAyakaです。

2024/9/30(月)〜10/1(火)、フィンランドのヘルシンキで2日間にわたるデザインツアーを企画・運営しました。このツアーは、ヘルシンキの最前線で活躍するデザイン現場に触れる機会を提供し、参加者の皆さまに北欧のサービスデザインに対する熱意や真摯さから、親密なインスピレーションを得られるような企画にすることをゴールとしていました。今回は、その経験を振り返り、得られたインサイトを参加者の方々からいただいたコメントと共に共有したいと思います。


Day.1

Demos Helsinkiは、社会的変革を促進するためのイノベーションを生み出すシンクタンクで、未来の社会構造に対する洞察を世界に提供しています。彼らのプレゼンテーションへのオーダーは、始まりに相応しく、北欧に根付く哲学ととデザインがどう関わりを持っているかの説明からスタートしていただきました。そして、なぜフィンランドで何故サービスデザインの発展がフィンランドで必要不可欠であったのか、という社会的背景にについても触れながら、我々が近い将来直面するであろう社会課題に対するデザインの共創・参加型デザインアプローチについても説明がありました。

短時間ワークショップでも真剣なディスカッション

余談ですが、デザインが人々にどんな影響を与えるかについて深く考えるきっかけを作るよう、この二日間で巡るスタジオやディスカッションの内容につながるよう、Demos Helsinkiのプレゼンテーション・ワークショップの至るところに、キーワードを散りばめて、参加者の学びに繋がるよう仕掛けを設計していました。

日本の違いを感じることができ、ツアーで得た知識をそのまま真似するだけではダメだと最初に気付かされた

参加者コメントより

次はフィンランドのさまざまな社会問題を解決するためにデザインを活用しているフィンランドのデザインコンサルタントの一つFuturericeを訪問。DXをリードする立場として、テクロジーを活用したデザインアプローチや、彼らが実際に、無償提供しているフレームワーク・その背景などについて学びました。私自身も、参加者として彼らのワークショップに参加し、自身の仕事や業界に影響を与えそうな未来の変化について考える時間を持ちました。
Futurericeの取り組みから最も印象に残ったのは、デザインを社会をより良くするための道具として尊敬している姿勢は私も学びになりました。

自身の仕事や業界に影響を与えそうな未来の変化とは?

無料でツールを公開することで、より良いものが生まれてくると信じているという考え方は、良い刺激になった

参加者コメントより

1日目の締めくくりはAalto Universityです。デザイン、工学、ビジネスが融合するイノベーションの拠点として世界的にも有名な大学。ここでは、学生たちが手がけたDesigns for a Cooler Planet 2024を見学し、今年リニューアル移転されたDesign Factoryを訪れました(私が在学していた時よりもとってもかっこよくなっていたのが悔しい)。

新しくなったDesign Factoryの階段


ここでは、4人のサービスデザインの専門家をお呼びしましたが、彼らには『フィンランドのサービスデザインの現状とジレンマ・そして未来に向けて』を語っていただくようにお願いをしていました。彼らがジレンマに向き合う方法にこそ、学びを見つけてもらえるのではないかと思ったからです。

長丁場にも関わらず、熱心にパネルトークを聞いていただきました!

サービスデザインの表層的な部分にとどまらず、それに対する批判的な意見や課題に言及していただけたのが良かった

参加者コメントより

パネルトークの後も熱心に質問をする皆さんに、パネリストも嬉しそうでした!

Day.2

2日目は朝からフィンランドの航空会社Finnairの本社を訪問しました。デザイナー総出でお出迎えしてくれ、彼らがどのようにデジタルプロダクト・フィジカルプロダクトをつうじ一貫した「顧客体験」がデザインされているのかを教えてもらいました。特に印象的だったのは、Finnairがどれだけ顧客一人ひとりの旅を細部にわたって設計しているかという点です。空港でのチェックインから機内でのサービス、さらには到着後のサポートに至るまで、デザインが単なる装飾ではなく、顧客満足度を最大化するための戦略的要素であることを実感しました。ムーミンやマリメッコとのコラボレーションも実に戦略的に私たちがフィンランド・フィンエアーを一貫したイメージで思い出すように計画されているのです。さらに驚いたことに、このデザイン組織は7年ほどで今に至るそう。

デザイナー総出でお出迎えしてくれました

コミュニティデイの運営やデザインチームがどのように連携をしているか、またコロナ後どのようにチームを再編してきたかなど、訪問したからこそ聞けた内容が多いと感じた

参加者コメントより

その後、フィンランドを代表するデザインコンサルタントの一つHellonにも足を運びました。ここでは、Hellonが取り入れる、デザインとテクノロジーを掛け合わせたアプローチや、彼らが思うフィンランドらしさを教えてほしいというオーダーに対し、彼らの「失敗」に対する考え方で応えてくれました。失敗した時にこそ、その失敗姿勢にエールを送る、優しい会社のあり方があるとは素敵ですね。

オープンスペースでプレゼンテーション

失敗しなければ学びは得られないため心理的安全性が重要と仰っており、失敗して壁にぶつかっている人に対しては楽観的に考えようとする接し方は、真似したいと思いました

参加者コメントより

そして、ツアーのラストはFalay Transition Designによる、演劇を通じてシステム思考を身体で体現するというこのワークショップを選びました。
複雑で厄介な問題を直感的に理解しやすくするため、身体をユニークなアプローチに興味があったからです。何より、演劇家がデザインしたメソッドを用いるというのはなかなかできない体験です。このアプローチは、途中参加者の顔や無口になっていく姿を見ていて「あれ、ちゃんと伝わっているかな」と少し不安に感じたのですが、それは私の勘違い。参加者は自分たちも生態系の一部であるということが実感できたようで、とても良かったと高評価をいただきました!

言葉を発せず、同じタイミングで手を叩く

すべてのことは包括的に捉えられ、特定の部分だけを変化させようと思うことのエゴを思い知らされた

参加者コメントより

いや、むしろすごい伝わってるじゃないか、、!この短時間で大きな気づきを得ていただいた参加者の皆さんの感度の高さに改めて感動した次第です。

異なるバックグラウンドを持つ参加者との交流

今回のツアーには、根っからのデザイナーだけでなく、人事で働いている方、エンジニア出身の方など、さまざまなバックグラウンドを持つ19名の参加者が集まりました。この多様性が、ツアーをさらに価値のあるものにしてくれました。異なる視点を持つ参加者に方々とディスカッションを交わすことで、新たなインサイトを得ることができました。特に、デザインが異なる業界でどのように活かされているのかを知ることができ、非常に刺激的でした。

大人数でのランチ

振り返りとこれから

私は改めて「デザインの力」を深く実感しました。フィンランドのデザインが持つ「過酷な自然環境」から生まれた独自の精神、「機能性」と「美しさ」、を兼ね備えたデザイン哲学は、単なる視覚的な魅力や使いやすさを超えて、社会を変革する力を持っていることを改めて感じさせてくれました。フィンランドでは、デザインは人々の生活に自然に溶け込み、より良い社会の実現に貢献するものとして位置づけられています。私たちも、デザインを通じて、環境や社会に配慮し、未来に向けて持続可能な価値を創造していくことができるのだと強く感じています。

また、ツアーを通じて、多くの参加者や協力してくださった皆さまと出会い、共に学び、共に議論できたことが何よりの収穫でした。これからも、デザインの可能性を追求し続け、社会に対して積極的にアプローチしていきたいと思います。

つらつらと他のデザイン会社を褒めちぎりましたが、このようなデザインツアー、ヘルシンキでちょっとやってみますね!という無謀な挑戦をさせて下さったTangityがあってのことでございます!

デザイナーさん大募集

現在Tangityではデザイナー職を積極的に採用しています!サービスデザイン、UXデザインのクライアント業務の経験がある方、ぜひ私たちと一緒に働きませんか?募集要項など詳細はこちら。お待ちしております。

インスタグラムやってます!

TangityのInstagramです。ぜひフォローしてください!

イベント開催のお知らせ

ツアーの翌日からヘルシンキで開催された、サービスデザインのグローバルカンファレンスの振り返りと共有会がService Design Network主催で開催されることになりました。そして私もこのツアーについて登壇させていただきます!

日時:2024年12月20日 18:00〜
場所:〒104-0061 東京都中央区銀座8丁目21番1号 住友不動産汐留浜離宮ビル パナソニック コネクト株式会社 16F

カンファレンスから得た知見などをダイジェストで見れるイベントです!是非ご検討ください。


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