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10月展示会ご案内 『児玉そよぎ』銅版画展

みなさん、こんにちは。
現在、タネノスでは 児玉そよぎ個展『銅版画展』を開催しております。

作者が用いる技法『メゾチント』は銅版画の1種になります。
あらかじめ版面に道具を用いて、無数の傷を作り、それを削りインクを詰め込み紙へと転写します。
元々、写真の代用として用いられていた物なので、豊かな濃淡に富み細かくリアルな描写に適しています。
フランス語でマニエール・ノワール(黒の技法)と呼ばれることもあります。

今回はいつもの様な作品の説明・感想とは異なり、作品の前に立ち蕾が花開く様に思い出した情景を言葉にしてみました。

作者が創り出す淡く儚い世界をお楽しみください。


『カナリア』


暖かな水の底へゆっくりと沈んで行く。
目を開けると一筋の光がゆらゆらと微笑み、わたしは光に触れたくて手を伸ばす。
儚い光に包まれ目を閉じれば、静かさの中に聞こえない音を聞く。

『angie』


ガラスの様な透き通った寒さが頬を切る。
1人空を見上げれば、蒼が深く宇宙が近くに見える。
目の前を流れて行く薄い雲の隙間から、月の白さが夜空を滑り落ちて行く。


青い月


誰かに呼ばれた気がして、ふと夜中に目を覚ます。
窓から差し込む月の光に満たされた部屋は、壁も天井も家具も全てが月の光に青白く染まり滲む青い闇に包まれ、ゆっくりと水の底に沈んでいく。
差し出した指先も白く照らされ、淡く溶けて行った。

『青い羽』


土砂降りの雨の中、1人傘を差しひたすら川べりを歩く。
雨の幕に閉ざされた傘を激しく打つ音と己の呼吸の音だけが、明るい灰色がけぶる世界に白く響き溶けて滲む。
雨の中を白い鷺が翼を広げて悠々と飛んで行き、霧の向こうに消えて行った。
そっと目を閉じると瞼の裏に青い翼が踊る。

『sunny』



音を立て降っていた雨もいつの間に止み、厚い雲の合間から無数の光の筋が地上へと降り注ぐ。
見上げた灰色の空に光の矢が差し溶け、急激に明るい世界へと生まれ変わって行く。
畳んだ傘を強く払う。
パラパラと光の粒が飛び散り、足元で跳ねた。


『月の水辺』




ほら、光の弾ける音が聞こえるでしょう。


児玉そよぎ 銅版画展
10月1日(火)〜10月27日(日)迄


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