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4月展示会のご案内 新出こずえこ 『カンタ展』 後半

みなさん、こんにちは。
今回は3月より2ヶ月連続開催をしています、新出こずえこ『カンタ展』後半をお伝えして行きます。

※※※

カンタはその緻密な針の刺し目に注目しがちですが、今回わたしが気がついた事は『どんな布に刺しているのか』も面白い部分なのです。

元々カンタは、古くなってサリーやドウティーを仕立て直し、他の用途へと生まれ変わらせる為のものでした。
布一枚取っても、貴重だったのですね。

「古い布にはそれぞれのストーリーがあり、力があります」
そう新出さんは言います。


確かに、そうなのかもしれません。
布以外でも古い物には、不思議な魅力を感じます。自分が気に入って手に入れたつもりでも、実は物の方が自分を呼んだのではないかと、後で気がつく事もあります。

『天…舞う』 2022年


こちらの布は、ミャンマーのお坊さんが経典を包んでいた古い布だそうです。
色も褪せ染みも目立ち、風呂敷だった布は目が詰まった丈夫な物で、緻密に針を刺すカンタには扱いづらい性質。
けれども新出さんは、その布を見た瞬間「刺したい!」という衝動を受けたそうです。
そしてそれから3ヶ月間、布に導かれ布と会話をし、試行錯誤しながらの制作が続きました。
作家の力にさらに布の持つ力がプラスされ、素晴らしい世界が広がったのでしょう。

そのエピソードを聞いた時、人が布を見つけただけではなく、布が相手を選んだ。そんな不思議さを感じました。


『災…青の憂鬱』 2021年


インドの手織りの古い布に、同じくインドの野蚕の手紡ぎ糸を刺しています。
上記のミャンマーの古布に比べて、ふんわりと柔らかな印象を受けます。
布が変われば、広がる世界も変わる。
目の前の布に、どんな糸でどんな風に刺して行こうか。
布が導く世界を、ただひたすら針を刺し、追いかけ作り上げて行く。

布と対話し、布に導かれ、布に新たな命を吹き込ませるためにひたすら針を動かし続ける人々の姿は、きっと祈りを捧げる姿と似ているのかもしれません。

「黒のダブルガーゼのショール」


全てに『縫い』が施されたシャツ


カンタの最大の特徴として、模様以外の余白部分も全て縫いが施されている、という所です。
無限に続くかのような小さな縫跡が、布に細波のような動きを与えて、カンタならではの独特な曲線を孕んだ美しさを生み出します。



古くなった布をただ捨ててしまうのではなく、手間と時間を掛けて新たな物へと生まれ変わらせる。
「買い直した方が早いよ」
それも事実かもしれませんが、この100年後も人々の目を楽しませ感嘆させるカンタの存在を尊く感じるのは、きっとわたしだけではないはず。


『水…はじまりの物語』 2017年


『月…月の下で安心して泣く』 2022年
(アフリカの黒い厚手の布)


現在、芸術品としての側面が強いカンタですが、元々は実用品です。
そのカンタを使う人の事を思いながら刺す一針一針に加え、今まで誰かの体を包み、また誰かの大切な物を包んできた布を、古くてもう使えない邪魔な物とはせずに感謝と愛情が注いだからこそ、親しみのある美しさが表現されていると感じます。

忙しい毎日の中で何も疑問なく、時間も物も浪費している事を改めて気付かされました。
何度も何人もの手と時間が掛かっている、カンタを目の前に少しゆっくりと呼吸をしてみました。



新出こずえこ 『カンタ展』ーこれもひとつの祈りの形ー 後半
4月2日〜4月30日まで




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