デマ、SNS、病原菌(後編)

前編では、デマによる名誉失墜で誹謗中傷に晒され、生活が脅かされるリスクと私たちの一生はもはや不可分ではないか、と述べました。最後に感染症を挙げたのは、最近のコロナ再流行と鳥インフルエンザ、そして陰謀論の蔓延も今後死ぬまで付きまとうのではないか、というのが2つ目の絶望です。

このnoteは何かエビデンスや科学的証拠がある話ではなく、一般市民の感想に過ぎないので、気軽に読んでください。

陰謀論。曰く「この世は大金持ちと影の政府、あるいは爬虫類人間に支配されていて大衆はマスコミに洗脳されている。大企業や政府の発表することは全てウソであり都合の悪い真実は隠されている。ただ、なかには既に気づいている人間や力のある救世主的な存在がいて、彼らに協力することで我々は救済を得られる」みたいな内容が共通しているのはお分かりだろう。

近年、2011年の原発事故やコロナとワクチン、米国大統領選挙などで誰しもイヤというほど陰謀論に晒され、身の回りの人があっち側に行ってしまった人も少なくないだろう。さて、爬虫類人間にせよディープステートにせよ一旦陰謀論にハマった人は戻ってくるのだろうか?社会に存在する人びとの利益相反や、経済格差、技術の発展によりますます社会は複雑で理解し難く、誰もがエゴを振りかざし幸福とは程遠い世の中に思えるが、その答えに陰謀を”発見”してしまった人は、これからの世界で起きる事件や事態を冷静に捉えられるのだろうか。

つまり今後、鳥インフルにせよ未知の病原体Xにせよ、何かしらは感染症流行はあり得るだろうし、南海トラフや首都直下型地震も起こり得るだろう。中国が台湾を侵攻するかもしれないし、国内でテロが起きるかもしれない。
そういった将来のクライシスにおいて、絶対デマと陰謀論は発生するよね、という直感の話だ。

2024年1月の能登半島地震でも陰謀論的なデマは拡散された

もし能登半島地震ではなく、首都直下型地震だったら?当然デマ・陰謀論は流れることは容易に想像がつくだろう。今までは都会でのほほんと片手でスマホを操作していた大勢のリベラル知識人たちが、いざクライシスに晒されれば「拡散希望!足をひねりました!!!」「娘のツメが割れた!泣いているのに救急車が来ない!」とパニックになるだろうし、大勢の外国人観光客が来日している中、虐殺だって起きるかもしれない。(小池百合子都知事は市民の声に応じて関東大震災での朝鮮人虐殺追悼文を断るようになったのも、彼女の意志というよりそうした世間の無理解と批判が影響しているようだ)おそらく過去に発生した熊本の地震、広島の地滑り、能登半島地震、静岡の土砂崩れとは比較にならないほどの混乱とパニックに襲われるだろう。

地方の人々は(比較的に)生活と生業が日々の暮らしに密接に関わっていて、周囲の人間との関係も多少はあるだろうが、都内のタワマン住民なんて他人の集合体でしょう。そんな人々が避難所に集まって一体どうなるんだろうか。

杞憂でしょうか?起きても無い災害ですよね。

では、鳥インフルはどうだろうか?

鳥インフルは従来はヒト感染しない病気だったが、近年は鳥→ヒトの感染が発生しており、その死亡率は50%にもなるという。
鳥インフルエンザについて|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
やがてウイルス変異によりヒトヒト感染が起きるようになったら、コロナの比ではない程の壊滅的な被害になる事が予想されるが、流行と変異の話はあくまで仮定の話で。つまりパンデミックが起きる前、発生していない災害の話と言える。

ところがX(旧Twitter)で”鳥インフル”で検索すると、、、
「トランプ暗殺未遂で鳥インフル人類虐殺は早まるのか?」
「鳥インフルは人口削減の装置」
といった陰謀論が早くも大量に発生している。

別に鳥インフルでなくとも、SARSでもエボラでも他の感染症でも今後我々の一生のなかでなにがしかは流行するだろう。ただ、それを乗り越えるにあたり陰謀論とデマが大きく我々の生存率を下げることは間違いない。

「私はコロナに掛からなかった、マスクしてた友達は罹った。だからマスクなんて無意味」「ワクチンで死ぬ人がいた、明らかに政府の陰謀、今回の鳥インフルだってきっとそう」とばかりに思い込みは思い込みを強化してしまうだろう。小林よしのりの仰々しい『戦争論』に感化され目を潤ませた戦士たちが後のSealsになり、はたまた差別的ネトウヨ戦士を育てる土壌になったように。

我々の親や知り合いがネトウヨ化、あるいは差別主義的になってしまった。なんてよくある話ではないだろうか?悲しい事に

「乱暴者の中国人・韓国人が次々に入国して迷惑を掛けている」
「中東から来た不法滞在エセ難民が日本人を害している」

といった、一部の”事実"を元にして

「だから入国拒否すべきだ、行く必要もない」
「入管での虐待死を訴える外国人はウソ」

と、話を全体化させたり現実の複雑さへの理解を排除してしまう、彼らにとって差別とは自分を守る壁なのだ。壁を自分から壊せる人はそうそういない。むしろ強く高く強化していくだけなのだ。私の絶望がまさにここにある。

つまり、陰謀論とデマは今後も強化され戻ることは無い。それは真実や科学、より良い明日を作るための建設的な議論を押しのける程であり、それらは将来において発生しうるクライシスの際により大きな破壊と混乱を招く。これらは既に確定したリスクだというのが絶望なのだ。
個人に出来ることは何もない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?