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インタビューの本質 ー 語源から遡る ー


1. はじめに

インタビューとは、単なる質問と回答のやりとりではなく、相手の考えや価値観を引き出す対話の技法です。ジャーナリズム、研究、ビジネス、カウンセリングなど、多くの分野で活用されています。インタビューは情報収集だけでなく、相手の内面に踏み込むことで、本人も気づいていなかった思いや経験を引き出すことができます。そのためには、単なる「質問」と「回答」の関係ではなく、信頼関係の中で行われる双方向の対話が求められます。

本記事では、インタビューの語源や歴史を紐解き、基本的な技法や話を深めるためのポイント、さらに避けるべき落とし穴について解説します。また、インタビューに関する主要な参考文献や、異なる考え方についても触れながら、より深い理解を促します。

2. インタビューの語源と歴史

「インタビュー(interview)」の語源は、ラテン語の「inter(間)」と「videre(見る)」に由来し、「対面する」「相手を見る」といった意味を持ちます。もともとは、王侯貴族の対談や宗教指導者との会見を指していました。これが近代に入ると、ジャーナリズムの発展とともに、「取材」という意味合いを持つようになり、新聞や雑誌で政治家や著名人への取材が行われるようになりました。

20世紀にはラジオやテレビの普及によって、インタビューの形はより多様化し、公共の場での討論やニュース番組での取材など、新しいスタイルが確立されました。近年では、YouTubeやポッドキャストなどのデジタルメディアの発展により、個人でも手軽にインタビューを行うことが可能になり、ジャーナリズムの枠を超えてさまざまな分野で活用されています。

3. インタビューの基本構造

事前準備の重要性

インタビューの質は、事前準備によって大きく左右されます。対象者の経歴や発言をリサーチし、質問リストを作成することが不可欠です。質問は、単に事実を聞くだけでなく、相手の考え方や価値観を引き出せるようなものを含める必要があります。また、相手がリラックスして話しやすい環境を整えることも重要です。

質問の形式と効果的な使い分け

オープンクエスチョンは、自由な回答を促し、話を深めるのに適しています。一方で、クローズドクエスチョンは、具体的な事実確認や相手の意思を明確にするために有効です。これらをバランスよく組み合わせることで、より効果的なインタビューを実現できます。

信頼関係を築く方法(ラポールの形成)

インタビューでは、相手が安心して本音を語れるようにすることが不可欠です。そのためには、敬意を払う姿勢、適度なアイコンタクト、共感を示す相槌、相手の言葉を繰り返して確認するリフレクティブ・リスニングなどの技法が役立ちます。

4. インタビューで話を深める技法

沈黙を恐れない──間を活かす

話し手には考える時間が必要です。沈黙が訪れたときに焦って話を埋めるのではなく、適度な間を置くことで、相手の思考を促すことができます。

「なぜ?」を深掘りする方法

表面的な質問ではなく、背景や動機に迫る質問を投げかけることで、より本質的な話を引き出せます。例えば、「なぜそのように感じたのですか?」や「その経験があなたにとってどのような意味を持ちますか?」といった質問は、相手の価値観を明確にするのに役立ちます。

5. インタビューで避けるべき落とし穴

インタビューの際には、いくつかの注意点があります。誘導尋問にならないようにすること、相手の話を奪わずに傾聴すること、ステレオタイプや偏見を持たずに質問をすることなどです。

6. インタビュー術を学ぶための参考文献と対立する考え方

主要な参考文献

『インタビューの教科書』では、実践的な技法を詳しく解説しています。『聞く力』(阿川佐和子)は、経験豊富なインタビュアーによる聞き方の極意を学べます。また、カウンセリングの視点から「聞くこと」の本質を学びたい場合には、『カウンセリングの技法』(カール・ロジャーズ)が有用です。社会学的な視点では『オーラル・ヒストリー入門』(池田光穂)が参考になります。

対立する考え方

ジャーナリズムでは客観的な情報収集が重視される一方、カウンセリングでは主観的な共感が重要視されます。また、インタビューにおける誘導の是非についても議論があります。『インタビューの教科書』では、誘導を避けることが推奨されていますが、『カウンセリングの技法』では、適切な誘導によって話し手の内面を引き出すことが推奨されています。

7. おわりに

インタビューは単なる情報収集の手段ではなく、相手の価値観や人生観を引き出すための強力な技術です。相手の話に耳を傾け、信頼関係を築きながら、深い対話を生み出すことが求められます。本記事がインタビュー技術の向上に役立てば幸いです。


臨床心理士・公認心理師をしながら、ビデオグラファーとしてインタビューを軸としたドキュメンタリー映像を制作をしています。WEBサイトにて、これまでの作品集を掲載しています。是非、ご覧ください。

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