わたしたちを結ぶもの
ぴかぴかに磨かれたコートに座り、彼はバッシュの紐を結ぶ。いつもは適当、が口癖のくせに丁寧に。
私はこの様子を見るのが好きだ。
「毎日よく飽きないよな」
彼は少し呆れたように笑みを浮かべる。
私たちは高校三年生。彼にとって今年が最後のインターハイ出場のチャンスだ。
私は大きなバックパックを背負っている。私が履くのはスケート靴だ。
毎日、足の甲の部分から紐をぎゅ、ぎゅ、と絞めるから指の皮が剥けたりする。
彼はそんなこと、知らない。でも、いいのだ。
「っし、今日もやるかぁ」
ちょっと間の抜けた声が体育館に広がる。
「私もがんばってくるわ」
「おう」
今日も紐を結ぶ。もう少しだけ、わたしたちを繋いでいて、と願いながら。