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keep the same stride
私は前の席の谷くんが好きだ。
彼の背は高くて、黒板は見えづらいけれど、その背中を見るのが幸せな時間だった。
「わるい。今日の数学、寝てた。ノート貸してくんない?」
身体半分をこちらに向け、そう口にした彼のお願いを断る理由はなかった。
そうして彼はそれを繰り返すようになった。そして、そのうち私たちは付き合うことになった。体育祭のリレーで鮮やかなほどにぐんぐんと他の走者を抜いていく、あの谷くんと。
そのとき、私たちの歩幅は揃っていた。
いつからだろう、同じ道を同じ歩幅で歩いていた私たちが違うレールを歩むことになったのは。
実家に帰る電車の中、ぽつん、ぽつんと光る外の景色を見て、私はそんなことを思い出していた。