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悪意に満ちたナイフで汚れない弱者を傷付けないように。
カラオケほど人の性格が滲み出る場所はない。
カラオケの楽しみ方は人それぞれだが、僕はカラオケにおいて、他人を思いやる気持ちを誰よりも持ち合わせていると自負している。
「カラオケなんて所詮自己満足の場なんだし、各々が好きなように歌えばいいんだよ」
たまにこんな発言をする人がいる。確かに間違いではないと思う。
ただ、この理論を提唱するのはいつも決まって“歌ウマ”だ。
歌が苦手な人は、自分の音痴のせいで場をシラケさせてしまうんじゃないかと内心怯えているし、流行りの曲を一切聞かないせいで選曲がどうしてもアニソンやボカロに偏ってしまうことに申し訳なさを感じている。(知らんけど)
「自己満なんだから、自由にやれよ」なんて台詞は、カラオケを苦手とする人たちの気持ちを一切忖度していない、無責任極まりないものだ。
だから、そんなカラオケが苦手な人が場にいるときほど、周囲の聞き手が支えてあげるべきだと僕は思っている。
身体を揺らす、
合の手を入れる、
一緒に鼻歌を歌う、
ハイテンションで踊る、
邪魔にならない程度にハモる、
タンバリンやマラカスを振る、
エアドラム、エアギターをする、
間奏ではとりあえず「フゥ――⤴⤴!!!!」と言って盛り上げる。
「あ、この人たぶんカラオケそんなに好きじゃないな・・・」という人が場にいたら、僕は必ず上記の事柄の内いずれかをやり、その人が歌い終えた後嫌な気持ちにならないように出来る限りの配慮をする。
なので、僕はカラオケはどうあるべきかと問われたら、
「自分が歌うときは自己満で良いが、他人が歌っているときは一生懸命あの手この手で歌い手を気持ちよくさせるべきだ」と答えるだろう。
だがしかし、時に他人の曲になど一ミリも興味を示さず、
「俺のリサイタルだ!!!」
と言わんばかりの大柄な態度で場を支配しようとする者が現れる。
数ある『苦手な人間リスト』の中でも、群を抜いてこのカラオケで出しゃばるタイプの人間が許せない。
先日行ったカラオケで、僕はそいつと出会ってしまった。
彼の行動の一部始終はこうだ。
①握ったマイクは離さない
②他人の選曲にケチをつける
③他人の番はスマホいじる or イヤホン装着して次歌う曲のリハをしている
④自分の知ってる曲は遠慮なく乱入 & そして何故かサビを掻っ攫う
⑤歌ヘタ勢を考慮せずに初っ端から精密採点機能を入れる
⑥知らない曲に対して「シラネーw」と言う
⑦歌う順番を決めない、連投は当たり前
地獄である。
彼のような協調性のかけらもない人間は、なぜ生まれてしまうのか。
正直、これまでの人生でも「一緒にカラオケ行きたくないな・・・」と思う人に何人か出会ってきた。しかし、①~⑦のイラつきポイントを全て制覇した人間は彼が初めてだった。
悲しいことに、このタイプは一般的に歌が上手い連中に多く見られる。
「俺の歌はうまいから・・・!」
「みんな俺の歌を聞きたいだろう・・・!?」
当事者はそんな気持ちなのかもしれないが、落ち着いて周りの反応をよーく見て気付いてほしい。誰よりも場をシラケさせているのは自分だということに。
終