【地域】プレゼンよければ全て良し?〜学生商品コンテストの終わりを誰も知らない〜
長岡未来デザインコンテスト2023に事業者として参画しました。
長岡未来デザインコンテストは、長岡市と楽天グループ株式会社が連携した取り組みで、学生の自由な発想で長岡の課題解決を目指す、アイデア実践型プログラムです。
https://www.city.nagaoka.niigata.jp/shisei/cate02/houdou-shiryou/file2023/20230727-02.pdf
志の高い学生さん、行政、事業者の方々と関わることができ、学びと刺激をいただきました。このような貴重な機会を頂き有り難いですm(_ _)m
一方で、プレゼンのみにフィーチャーされ、「売れる」がおざなりになっている企画構成。
・長岡の魅力を全国に届けるのに、なぜ「売る」までを重視しないのか?
・人材育成の目的があるのならば、なぜ学生さんたちに「売れた」という成功体験を味わせないのか?
事業者として言わせてもらうと、商品開発やデザインは「作って」終わりでなく、「売れて」ナンボです。
そして、「売れる」ことがどんなに大変なことか。。
販売計画を考えずに、プレゼンのみを重視する企画構成に違和感を感じざるを得ませんでした。
全国にも「作って終わり」「プレゼンして終わり」の商品コンテストがたくさんあります。
そんな形式だけの商品開発や商品コンテストが、少しでも学生のため、地域のためになればと思い、今回感じたことや提案事項をお伝えします。
1.コンテストに関わったきっかけ
きっかけは、コンテストに参加している学生さんの一名が、当店の長岡産野菜茶に興味をもってくれたこと。
その学生さんは私が出店しているイベントに来てくれて、長岡産野菜茶の何種類かを試飲してくれました。
試飲した長岡産野菜茶が美味しいと感じたらしく、コンテストで長岡産野菜茶を使用して商品開発したいと、後日メールが届きました。
学生さんたちが長岡産野菜茶に興味を持ってくれたことに嬉しく思うとともに、可能な限り学生さんたちに協力したいと考えました。
2.やり取りで感じた懸念
商品のターゲットは健康志向で食にこだわりをもった50~60代の女性。ペルソナまで細かく設定されており、感心しました。
ただ、長岡産野菜茶を使ってどんな商品を作るかは二転三転し、入浴剤だったり、日本酒だったり、紆余曲折を経ました。
入浴剤や日本酒の商品化に対するアドバイスをお茶屋の私に求めないで!という感じです(;^_^A
最終的に、加藤製菓さんのおかきと、うちの長岡産野菜茶を使用したお茶漬けを開発することになりました。
学生さんたちとやり取りする中で感じたことは、お客さんのことより、長岡産やプロダクトデザインに重きを置いていて、実際に売れるのかが心配でした。
ペルソナを踏まえた商品ストーリーを設定していますが、あくまで仮説(理論)の話です。
ペルソナにあたる層と直接会ってヒヤリングや営業するなど、泥臭い部分も早い段階で必要なんじゃないかなと思い、その旨を学生さんたちに伝えました。
3.やっつけ感を感じた試食会
商品の方向性も決まり、実際に試食することに。
試食の際に、学生さんたちと色んなお話をすることができました。
「大学で学べないことを学びたかった」
「商品開発は想像以上に大変で苦労している」
自分が学生の頃はこんな経験も考えもしていなかったので感銘を受けつつ、いざ試食。
お米と加藤製菓さんのおかき、当店のだいず茶、大口れんこん茶の上に、お湯をかけます。
おかきの塩分、油分が大口れんこん茶の香ばしさとマッチし、薄味ながらも味わい深く美味しかったです。
また、お湯でふやけた、だいずやおかきの食感が面白く、普通のお茶漬けとは異なる味わいを引き出していました。
長岡産や健康志向、独自性などストーリーは素晴らしく、一般的なお茶漬けと一線を画していましたが、独自すぎてお客さんは味が想像できません。
「対面式でストーリーを伝えながら試食してもらえれば、何人かは買ってくれるはず。ただ、味がイメージできないのでオンライン販売は厳しいのでは」というのが、私の素直な感覚でした。
不安がっている私を尻目に、学生をサポートしている関係者の方々は商品撮影したり、試食の様子を撮ったりと、とりあえずオンラインショップでの商品ページの「器」を作ることに最優先でした。
試食会も一段落し、学生さんと私を除いた関係者のミーティングが開かれていました。
ミーティング後に関係者からお話を聞くと、商品開発のスケジュールがかなり遅れており、コンテストまでに完成するかギリギリのところだそうです。(試食したのは11/21、コンテストは12/10、販売開始はコンテスト後すぐ)
スケジュールがタイトなのはわかりますが、「器」を作るのが最優先で、「売れる」ための味や見栄えの改善は二の次だったため、やっつけ感を感じずにはいられませんでした。
学生さんたちや関係者の方々には、ターゲット層へのヒヤリングを兼ねた試食会やテスト販売、見栄えが良くなるための写真撮影をお願いして試食会を終えました。
4.コンテストのための商品開発
そして、いざコンテスト。
私は参加しませんでしたが、開催レポートを読む限り、熱量のあるコンテストだったようです。
結果は、なんと準グランプリを受賞!
魅力的な商品になるよう、学生さんたちは試行錯誤して商品改良を重ねていたようです。
ただ、私がお願いしていたヒヤリングを兼ねた試食会やテスト販売、営業はできていなかったようです。
とはいえ、楽天の方をはじめ、オンライン販売のエキスパートの方々がサポートしているわけで、私の心配も杞憂に終わればと、心の奥で願っていました。
そして、コンテスト後、楽天にて販売開始されました。
5.誰も知らないエピローグ
年が明け、市の担当者から商品開発への協力に対するお礼のメールがきました。
コンテスト後、実際に楽天でいくつ売れたのか気になったので、担当者に販売実績を聞きました。
「販売実績は3個!!」
3個ということは、ターゲットである50~60代女性はおろか、本プロジェクトの関係者及びその身内すらほとんど購入していない状況です。
残念ながら私の心配は杞憂には終わりませんでした。。
試食会の時に「我々関係者が買えば〜」なんて声が聞こえたもんだから変に安心してしまいました(>_<)
結果的に、学生さんたちは「売れたー!」という経験することはできませんでした。
このコンテストの目的は「果敢に挑戦する若者を応援する取り組み」です。
であれば、参加した学生たちが将来、また商品開発したくなるよう、「売れた」という成功体験をしてもらうべきです。
私がしている子商塾は、少なくとも「売れる」成功体験が前提です。
以下は特産品販売に取り組む広島の高校生のニュースですが、商品開発の大変さだけがクローズアップされ、この子たちがまた挑戦したいと思うのでしょうか。。
上記を踏まえ、
①プレゼンだけでなく、販売実績を含めたコンテストにする。
➁「売れた」という成功体験ができるよう、大人たちは全力でサポートする。
と、市の担当者に提案事項をお伝えしました。
返信はありませんが、このような企画が少しでも学生のため、地域のためになればと思い、書かせて頂きました。
最後に、こんな赤裸々な裏ストーリーですが、興味のある方はお茶漬けセットを購入いただけると嬉しいですm(_ _)m
めざせ販売実績10個!(笑)